日本にはワインに関する資格が複数あり、ワインエキスパートは比較的メジャーなものです。しかし実際のところ、ワインエキスパートはどの程度の難易度で、周囲からはどのような評価がされているのでしょうか。この記事では、ソムリエとワインエキスパートの違い、他のワインの資格、ワインエキスパートの難易度、合格率、学習方法、必要な勉強時間、費用について、詳しく解説しています。
ポイント
- ソムリエとワインエキスパートの違い
- ワインエキスパート以外の資格
- ワインエキスパートの難易度と合格率
- ワインエキスパートの勉強方法と費用
ワインエキスパートと、その他のワイン資格について
日本ソムリエ協会が認定するソムリエとワインエキスパートの違い、その他の団体が認定するワイン関連の資格について解説します。
ワインエキスパートとは?
「ワインエキスパート」とは、一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する、ワインの専門家であることを証明する資格です。
いわゆる国家資格ではなく、民間資格にあたります。
1996年から開催されており、毎年1,000~1,500人ほどが合格しています。累計で25,000人ほどの資格保有者がいます。
ワインエキスパートとソムリエの違いとは?
日本ソムリエ協会の「ソムリエ」と「ワインエキスパート」の違いについてご説明します。
ソムリエとは?
ワインの専門家と言えば「ソムリエ(sommelier)」という言葉を聞いたことがあると思います。
ソムリエに決まった定義はないので、自称しても構わないのですが、一般的には何かしらのソムリエ資格を保持している人のことを指します。
フランスやイタリアでは、ソムリエは国家資格となっています。
日本では、複数の民間資格がありますが、日本ソムリエ協会が認定する「ソムリエ」が特に有名です。
日本ソムリエ協会の資格
日本ソムリエ協会では、以下の5つの資格の認定試験を行っています。
- ソムリエ
- ソムリエ・エクセレンス
- ワインエキスパート
- ワインエキスパート・エクセレンス
- SAKE DIPLOMA
「ソムリエ」と「ワインエキスパート」の違いは、「ソムリエ」は受験資格としてソムリエ業務に就いていることが求められるのに対し、「ワインエキスパート」は満20歳以上であれば誰でも受験できるという点です。試験内容は、ほぼ同じです。
ソムリエ業務とは、以下のいずれかの職務のことです。
- 酒類・飲料を提供する飲食サービス
- 酒類・飲料の管理・仕入れ、輸出入、流通・卸、販売、製造
- 酒類・飲料に携わる教育機関講師
- 酒類・飲料に関するコンサルタント
「ソムリエ・エクセレンス」「ワインエキスパート・エクセレンス」は、それぞれの資格の上位版です。「ソムリエ・エクセレンス」の合格率は約11%、「ワインエキスパート・エクセレンス」の合格率は約25%と、かなりの難関試験です。2019年以前は「シニア」という名称でした。
「SAKE DIPLOMA」は、日本酒・焼酎に関する資格です。
過去に「ワインアドバイザー」「シニアワインアドバイザー」という資格がありましたが、2016年以降は停止されています。
資格名 | 受験資格 |
---|---|
ソムリエ | ・ソムリエが本職(全収入の60%以上) ・ソムリエ業務を月90時間以上、通算3年以上(J.S.A会員は2年以上)経験 ・現在もソムリエ業務に従事 |
ソムリエ・エクセレンス | ・上記のソムリエ認定後、3年目以降 ・ソムリエ業務を月90時間以上、通算10年以上経験 ・現在もソムリエ業務に従事 |
ワインエキスパート | ・満20歳以上 |
ワインエキスパート・エクセレンス | ・上記のワインエキスパート認定後、5年目以降 ・満30歳以上 |
SAKE DIPLOMA | ・満20歳以上 |
試験内容の違い
「ソムリエ」と「ワインエキスパート」の試験内容は、第三次試験および書類審査の有無が異なります。
試験内容 | ソムリエ | ワインエキスパート |
---|---|---|
第一次試験 ・CBT | ◯ | ◯ |
第二次試験 ・テイスティング | ◯ | ◯ |
第三次試験 ・論述 ・サービス実技 | ◯ | ― |
書類審査 | ◯ | ― |
第一次試験
第一次試験のCBTは、パソコンを使って、ワインの知識に関する問題に答える試験です。
CBTとは「Computer Based Testing」のことで、コンピュータを使った試験全般のことを指しますが、株式会社CBTソリューションズ(CBTS)が提供する試験サービスのことを指す場合も多いです。
「ソムリエ」および「ワインエキスパート」では、全国に360以上あるCBTSの試験会場に行き、そこでコンピュータを操作して試験を受けることになります。
第二次試験
第二次試験のテイスティングは、当然実技となります。
ワインを飲んで、生産国、ブドウの品種、収穫年などを選択式のシートで回答していきます。
注意が必要なのは、ワイン以外のアルコール飲料も出題されるということです。
- ソムリエ:ワイン3種、ワイン以外2種
- ワインエキスパート:ワイン4種、ワイン以外1種
ワインは、赤・白の両方から出題されます。
ワイン以外のアルコール飲料は、酒精強化ワイン、ウイスキー、リキュール、泡盛など、何でも出てきます。
ワインだけでなく、アルコール文化全般に興味がないと難しい試験と言えるでしょう。
第三次試験
「ワインエキスパート」は第二次試験までですが、「ソムリエ」は第三次試験として「論述」と「サービス実技」があります。
論述は、「◯◯について説明してください」「△△な方にワインを提案してください」などの問題に対して、200字程度で回答するものです。
サービス実技は、試験官をお客様と見立てて、ワインの開栓、デカンタージュ、ホストテイスティング、後片付けなどの一連の動作を披露するものです。
書類審査
基本的な審査は、第三次試験で終わりですが、中には書類審査で落ちる方もいるようです。
書類審査で落ちる理由としては、以下のようなものがあります。
- 書類に不備があった
- 受験資格を満たしていなかった
- 申請内容に虚偽があった
「ソムリエ」は実務経験があることが求められ、証拠書類の提出も必要となるので、条件を満たしているか、よく確認しておく必要があります。
ワインエキスパートのバッジとは?
「ソムリエ」「ワインエキスパート」に合格すると、ブドウの形をした金色のバッジをもらえます。(正確には貸与)
このバッジはまさにワインの専門家であることの証明となるものなので、これを目指している方も多いです。
実際に、バッジを付けていると、お客様からの反応が、目に見えて変わります。
ワインエキスパートは意味ない?
資格を取得するならば「ソムリエ」である必要があり、「ワインエキスパート」は意味がないと思われるかもしれません。
実際には、まったくそんなことはありません。
ソムリエとワインエキスパートは、実務経験と三次試験の有無の違いはありますが、内容はほぼ同じです。業界からの評価も高いです。転職でも有利に働くでしょう。
意味がないとするならば、試験対策にのみ注力しており、実務にまったく即していなかった場合です。
「あいつワインエキスパート持っているのに、ワインのこと全然知らないじゃん」
となると、ワインエキスパートは意味がないという評判も広まってしまうかもしれません。
実際のところ試験対策は必要となりますが、合格だけを目指すよりも、ワイン文化を愛する気持ちが大切となるでしょう。
日本ソムリエ協会以外のワインの資格はある?
ワインの資格としては、一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が主催する「ソムリエ」「ワインエキスパート」が有名ですが、それ以外の資格や検定もあります。
いくつかご紹介します。
J.S.A. ワイン検定
「J.S.A. ワイン検定」は、同じく一般社団法人日本ソムリエ協会が主催する、ワイン愛好家のための検定です。
講習を受講した後、検定試験を受けます。
ワインについての知識のみで、テイスティングやサービス実技はありません。
「ブロンズクラス」は、満20歳以上であれば誰でも受験できます。
「シルバークラス」は、ブロンズクラス認定者が受験できます。
ANSA ワインコーディネーター・ソムリエ・ワインナビゲーター
J.S.A.に次いで有名なのが、「全日本ソムリエ連盟(All Nippon Sommelier Association、ANSA)」の認定資格です。
次の2つの資格があります。
- ワインコーディネーター / ソムリエ
- ワインナビゲーター
「ワインコーディネーター」と「ソムリエ」は、試験内容は同じで、受験者がどちらの名前がよいのかを選ぶことができます。認定証に記載される名称が違うだけです。
通信コースや2日間集中コースなどが用意されており、基本的にはカリキュラムに沿って進めば、合格できるようになっています。
「ワインナビゲーター」は、より入門レベルになっており、セミナーを受講すれば合格できるようになっています。
ANSA ワイン検定
同じくANSAが主催する「ワイン検定」は、ワインの知識力を問う検定試験です。
5級から1級まであり、所定の正答率で合格できます。
知識のみで、テイスティングや実技試験はありません。
WSET認定試験
「WEST(Wine & Spirit Education Trust)」はロンドンに拠点を置く世界最大のワイン教育機関で、ワイン、スピリッツ、日本酒、ビールなどの認定試験を行っています。
ワインはLevel1からLever4まであり、Level1~3までは日本語で受験できます。Level3の難易度は、J.S.A.の「ソムリエ」と同程度とされています。
Level4は英語のみで、2023年時点の資格取得者は、全世界で10,000名程度、日本人で100名程度です。
International A.S.I. Sommelier Diploma認定試験
「International A.S.I. Sommelier Diploma認定試験」は、「国際ソムリエ協会(Association de la Sommellerie Internationale、A.S.I.)」が主催するソムリエ認定試験です。
日本では、J.S.A.が加盟しているので、J.S.A.を通して受験することができます。
特徴として、母国語以外で受験することが求められており、日本では英語またはフランス語から選ぶ必要があります。
難易度は、J.S.A.の「ソムリエ・エクセレンス」より難しいとされています。
Certified Specialist of Wine
「CSW(Certified Specialist of Wine)」は、アメリカの「ワイン教育者協会(Society of Wine Educators、SWE)」が認定する、ワインの知識力を問う資格です。
知識のみで、テイスティングや実技はありません。
難易度は、J.S.A.の「ソムリエ」「ワインエキスパート」と同程度とされています。
日本ワイン検定
「日本ワイン検定 日本ワインマスター・日本ワインアドバイザー呼称資格認定試験」は、一般社団法人日本ワイナリーアワード協議会が主催する、日本ワインについての検定試験です。
2019年までは「日本ワイン検定」という名称で、一般社団法人日本ワイン協会が主催していましたが、活動停止に伴い、日本ワイナリーアワード協議会が引き継いだ形となります。
3級から1級まであり、3級は筆記試験のみです。
2級と1級はテイスティング試験があり、2級に合格すると「日本ワインアドバイザー」、1級に合格すると「日本ワインマスター」の呼称が使えるようになります。
JSFCA ワインコンシェルジュ
「ワインコンシェルジュ」は、「日本安全食料料理協会(Japan Safe Food Cooking Association、JSFCA)」が認定する資格です。
試験は在宅で、郵送にて回答します。
WSAイタリアワインソムリエ
「WSAイタリアワインソムリエ」は、「イタリアソムリエ財団(Fondazione Italiana Sommelier、FIS)」の海外向け教育機関である「世界ソムリエ協会(Worldwide Sommelier Association)」が認定する、イタリアワインについての資格です。
日本では、「一般社団法人日本イタリアワインソムリエ(IVS Japan)」が主催しています。
基本的には、講義を受講すれば合格できるようになっています。
上位のマスタークラスもありますが、トレーニングのみで、呼称資格や認定証はありません。
ドイツワインケナー
「ドイツワインケナー(Der Deutsche Weinkenner)」は、一般社団法人日本ドイツワイン協会連合会が主催する、ドイツワインについての認定試験です。
以下の3つの段階があります。
- ドイツワインケナー
- 上級ドイツワインケナー
- ドイツワインケナーエキスパート
ワインエキスパートの資格試験対策
ワインエキスパートに合格するための必要な勉強時間、勉強方法、費用について解説します。
ワインエキスパートの難易度と合格率は?
「ソムリエ」および「ワインエキスパート」の合格率は、下記の表のようになっています。
年 | ソムリエ | ワインエキスパート |
---|---|---|
2017 | 23.5 | 33.1 |
2018 | 26.5 | 32.8 |
2019 | 29.8 | 44.2 |
2020 | 37.9 | 43.3 |
2021 | 42.1 | 40.7 |
2022 | 30.1 | 32.9 |
2023 | 17.7 | 41.9 |
平均するとソムリエの合格率は約30%、ワインエキスパートの合格率は約38%となっています。
試験内容がほぼ同じであるのにソムリエの方が難易度が高いのは、第三次試験や書類審査で落ちている方がいるためと思われます。
また、データが公表されている訳ではありませんが、一発合格の割合は10%程度とも言われており、かなり難易度が高い試験と言えます。
ワインエキスパートはどのくらい勉強時間が必要?
「ソムリエ」および「ワインエキスパート」の試験に合格するには、だいたい200時間の勉強が必要と言われています。
1日1時間の勉強であれば半年、1日30分の勉強であれば1年程度の試験計画を立てるとよいでしょう。
ただしこれは、ある程度ワインに詳しい人の場合であり、まったくのワイン素人の場合は2倍の時間を見積もっておくとよいでしょう。
問題はテイスティングです。テイスティングは詰め込みでなんとかなるという話ではないですし、感性を磨くということでもありません。実際にワインを飲み比べて、出題傾向を踏まえた試験対策が必要となります。
一次試験のCBTと、二次試験のテイスティングの間は2ヶ月程度なので、一次試験に合格してから二次試験の対策を始めるという方もいます。しかし、ワインに慣れていなければ、半年程度は準備期間を見たほうがよいでしょう。
また、一次試験に合格すると、翌5年間のうち3回まで一次試験が免除されるので、とりあえず一次試験に合格することを目標にするということも可能です。
ワインエキスパートの学習方法は?
ワインエキスパートの勉強をするならば、主に「独学」「対面のワインスクール」「オンラインワインスクール」の3つの方法があります。
参考書等で独学する
「ソムリエ」「ワインエキスパート」の一次試験に申し込むと、J.S.A.より「日本ソムリエ協会教本」が送られています。
基本的にはこの教本に沿って学習することになりますが、試験対策としては不十分なので、参考書を買うことになるでしょう。
参考書を2~3冊購入したとして、数千円から1万円程度となります。
ワインスクールに通学する
ワインスクールに通い、対面で講義を受ける方法です。
様々なコースがありますが、試験対策としては、だいたい30~50時間で15万円が相場となっています。
オンラインスクールを利用する
オンラインスクールは、動画やアプリなどで学ぶことができるサービスです。
対面に比べて、時間を自由に使えるところが最大のメリットです。
費用は、事業者によって8万~15万円ほどと幅があります。
テイスティングの費用を考えよう
独学ならば数千円で済むところが、スクールに通うならば15万円も必要なのであれば、独学の方が圧倒的にお得と思われるかもしれません。
でもちょっと待ってください。本当に大変なのは、二次試験のテイスティングです。
テイスティングは実際にワインを飲み比べる必要があります。少なくとも50本近いワインは飲むことになるでしょう。1本2,000円としても、10万円となります。
ワインスクールの費用には、テイスティング用のワイン料金も含まれているので、それを考えると、独学とあまり変わらない値段となってきます。
また、ワインスクールであれば、出題傾向に基づき、最低限必要となるワインを用意してくれます。これを自分で選んでいたら、全然見当違いのワインばかり飲んでいたということになりかねません。さらに、ブラインドテイスティングの練習をする必要があるのに、ラベルを見て買っていたのでは意味がありません。
ワインスクールにはテイスティングの集中コースもありますが、費用対効果を考えると、最初からワインスクールに通っていた方が、何かと良かったということが多いです。
オンラインスクールがおすすめ
ワインスクールに通うならば、オンライン形式が便利です。
仕事をしながら、休みの日にスクールに通うのはとても大変なことです。
オンラインスクールであれば、スマホを使って、自分の好きな時間、好きな場所で講義を受けることができます。自由度が圧倒的に違います。
様々なオンラインスクールがありますが、おすすめは「ヴィノテラス ワインスクール」です。
ヴィノテラスは、倍速での動画視聴や、アプリでの試験対策ができるようになっており、満足度99%、合格率は88%を誇ります。
合格率88%というのは、やる気があればほぼ合格できるということです。一次試験と二次試験の対策がセットになって、83,000円からとなっています。自分で参考書を用意したり、テイスティング対策をしたりすることを考えると、時間とお金の節約にりますし、安心感が段違いです。
まとめ ワインエキスパートはどんな資格?
記事の内容をまとめます。
- ワインエキスパートとは、日本ソムリエ協会が認定する、ワインの専門家であることを証明する資格
- 日本ソムリエ協会の「ソムリエ」と「ワインエキスパート」は、試験内容はほぼ同じだが、ソムリエは実際にワイン関連の仕事に携わっている必要がある
- ワインエキスパートは、一次でCBT、二次でテイスティング試験がある
- ワインエキスパートの合格率は約38%で、それなりに難易度が高い
- ワインエキスパートに必要な勉強時間は約200時間
- テイスティングの試験対策には半年程度かけた方がよい
- ワインエキスパートの学習方法として、独学、対面でのワインスクール、オンラインワインスクールがある
- 独学は数千円、対面でのワインスクールは15万円、オンラインワインスクールは8万~15万円が一般的
- ワインスクールの費用にはテイスティング用ワイン代が含まれているので、独学と大きな差はない
- 利便性を考えると、オンライン形式のワインスクールがおすすめ