日本酒と言うと、背中を丸めて、ちょっとずつちびちび飲んでいるイメージがあるかもしれません。この記事では、なぜ日本酒はちびちび飲むと言われるのか、その理由と歴史的経緯について解説します。また日本酒の基本的な飲み方や、提供温度、容器の違いについても解説します。
ポイント
- 日本酒の飲み方の種類
- 日本酒の容器の種類
- 日本酒はちびちび飲めと言われる理由
- 日本酒が料理と一緒に提供される理由
ちびちび以外にもいろいろある、日本酒の飲み方の基本
日本酒の飲み方の種類、温度の違い、容器の違いについて解説します。
飲むスタイルの種類
日本酒の様々な飲み方についてご紹介します。
ストレート(そのまま)
日本酒は、何も足したり、割ったりせずに、そのまま飲むのが基本となります。日本酒本来の味と香りを一番楽しめると言えるでしょう。
ただし提供温度はいろいろです。
オンザロック
グラスに氷を入れて飲む方法です。特に夏などにさっぱりとした味わいを楽しむことができます。
水割り
アルコールが強いと感じたら、水で割ると飲みやすくなります。風味を損なうこともなく、ゆっくりと楽しむことができます。
お湯割り
お湯割りにすると、アルコール度数が下がるだけでなく、やわらかな香りを楽しむことができる飲み方です。
特に冬にはおすすめです。
ソーダ割り
特に日本酒が苦手という方は、炭酸割りにすると飲みやすくなるかも知れません。
炭酸の割合を調整することで、初心者でも気軽に楽しめるようになります。
カクテル
ソーダ割以外にも、「トニックウォーター」「コーラ」「お茶」「フルーツジュース」「乳酸飲料」などで割る飲み方も人気です。
その他にも、ジンとベルモットを使った「マティーニ」や、ラムとミントを使った「モヒート」を、日本酒に置き換えたカクテルが知られています。
トッピング
カクテルの一種と言えるかも知れませんが、「梅干し」などを加えるのも定番の飲み方です。
梅干し以外では、「レモン」「ライム」「トマト」「塩」「唐辛子」「はちみつ」などの組み合わせがあります。
飲む温度の種類
日本酒は、他のアルコール飲料と比較して、幅広い温度で飲まれています。
大きく分けて「冷酒」「冷や(ひや)」「お燗(おかん)」に分けられます。
「冷や」は常温でそのまま注ぐだけですが、「冷酒」や「お燗」は冷やしたり温めたりして提供されます。
「冷や」と「冷酒」については、人によって定義の仕方が違うことがありますので、飲食店等で常温で飲みたい場合は、「冷や」ではなく「常温」と注文した方が無難です。
大別 | 温度(℃) | 呼び方 |
---|---|---|
冷酒 | 5 | 雪冷え(ゆきひえ) |
10 | 花冷え(はなひえ) | |
15 | 涼冷え(すずひえ) | |
冷や | 15~25 | 常温 |
燗 | 30 | 日向燗(ひなたかん) |
35 | 人肌燗 | |
40 | ぬる燗 | |
45 | 上燗 | |
50 | 熱燗 | |
55 | 飛び切り燗 |
飲む器の種類
日本酒を飲むための器(グラス)や、提供するための容器は、一般的に「酒器(しゅき)」と言われます。
飲むための器
日本酒を飲むための伝統的な器としては、以下のような形状があります。
量は一般的な目安です。
名前 | 容量(ml) |
---|---|
お猪口(おちょこ) | 30~45 |
盃(さかずき) | 30~80 |
ぐい呑み | 40~200 |
枡(ます) | 180 |
その他、タンブラー、ロックグラス、ワイングラス等が使われることもあります。
注ぐための器
「ぐい呑み」や「枡」はそのまま提供されますが、「お猪口」や「盃」は下記のような容器と一緒に提供されることがあります。
名前 | 容量(ml) | 説明 |
---|---|---|
徳利(とっくり) | 180~360 | 首がくびれた細長い容器。 |
片口 | 100~400 | 縁に注ぎ口がついている容器。 |
ちろり | 180~500 | 金属製の細長い容器。 お湯の中に入れてお酒をお温める。 |
銚子(ちょうし) | 300~500 | 持ち手と注ぎ口がついた、急須のような容器。 徳利のことを銚子と呼ぶことがあるが誤用。 |
以下の組み合わせが基本となりますが、店舗の提供スタイルによります。
- 徳利 + お猪口
- 銚子 + 盃
素材
それぞれの容器の素材としては、以下のようなものが使われます。
温める時の熱伝導率や、保温性、持ちやすさ、耐久性、見た目の美しさなどで選ばれます。
- 陶器
- 磁器
- 漆器
- 錫(すず)
- ガラス
- 木
なぜ日本酒の飲み方はちびちびなのか
日本酒はなぜちびちび飲むと言われるのか、ちびちび飲んだ方がいい理由、日本酒と料理の関係について解説します。
日本酒はちびちび飲むと言われる理由
日本酒と言うと、ちびちび飲むというイメージがあるかもしれません。
これはおそらく、日本酒はちびちび飲むのが正解ということではなく、徳利とお猪口で飲むスタイルがちびちび飲んでいるように見える、ということだと思われます。
ビールであれば、ジョッキでごくごく飲むのが正解でしょう。
ワインは一気に飲むものではありませんが、正式には自分で注ぐことはなく、グラスが空けばソムリエが注いでくれますので、ちびちび飲むというイメージはないかもしれません。
ウイスキーやブランデーは、少量ずつのみますが、ボトルからグラスに直接注ぐのが一般的です。
それに対し日本酒は、徳利からごく少量をお猪口に注ぎ、それを飲み干したらまたちょっとだけ注いで……ということを繰り返します。その間に料理も食べるでしょう。その姿がちびちび飲んでいるというイメージにつながっているのではないかと思います。
ちなみに、お猪口が普及したのは江戸時代中期で、この頃にお酒を飲む器が小型化していきました。理由ははっきりとは分かりませんが、神事だった飲酒が一般に普及したこと、アルコール度数が強まったこと、立ち飲み居酒屋が普及したこと、等によって、ちょっとだけ飲むスタイルが普及したことが原因のようです。
日本酒はちびちび飲むのがおすすめな理由
日本酒をちびちび飲むのは、そういうルールがあるということではなく、ただのイメージであるという話をしました。しかしそれでも、ちびちび飲むのがおすすめではあります。その理由をご説明します。
風味を楽しめるから
日本酒は味と香りが豊かな飲料です。
それを最大限楽しむには、一気に飲み干すのではなく、少しずつゆっくり飲むのが適しています。
温めて飲むから
さらに日本酒は、アルコール飲料としては珍しく、温めて飲むことがよくあります。
温めることによって香りがさらに広がりますので、やはりゆっくり飲みたいところです。
一気に酔わないから
お酒を一気に飲むと、血中のアルコール濃度が急激に上昇し、泥酔状態になりやすいです。
ちびちびと少しずつ飲むことで、酔いにくくなりますので、アルコール初心者にもおすすめです。
料理も楽しむから
日本酒は料理と一緒に楽しむのが基本です。むしろ料理の方がメインということもあるでしょう。
酔ってしまうと料理の味も分からなくなってしまうので、やはりゆっくり飲むことが重要です。
日本酒はなぜ料理と一緒に飲むのか
日本酒は、バーのようにアルコールメインというより、居酒屋のように料理メインで提供されることが多いです。これには歴史的な理由があります。
日本酒が普及したのは江戸時代と言われています。そして江戸の街は、極端に男性の割合が高いという特徴がありました。
天正18年(1590年)、徳川家康が江戸城に入場すると、ここに新しい街を作ることを宣言します。そうすると仕事を求めて、多くの人が江戸に集まりました。ここで集まってくるのは、ほとんど男性でしょう。
また、参勤交代で全国から大名が集められましたが、これも男性中心です。
さらに、明暦3年(1657年)に大火事が起きると、再建のために多くの大工が集められました。これも男性が中心です。
このようにして、江戸は極端に男性が多い街となったのです。
そして男性は、今も昔も料理が苦手です。その結果、多くの飲食店が繁盛しました。その飲食店がお酒も提供していたので、日本酒は料理と一緒に飲むのが定番となったのです。
居酒屋のルーツとしては、以下の3つがあると考えられています。
- 居酒(いざけ):酒屋の店内で飲むスタイル。いわゆる「角打ち」。次第に料理も提供するようになった。
- 煮売茶屋(にうりちゃや):労働者のための惣菜・定食屋。テイクアウトもあった。次第にお酒も提供するようになった。
- 屋台(やたい):労働者や独身男性のためのファストフード。お酒も提供するようになった。
これらが組み合わさり、現在の居酒屋のような形態が発展していきました。
そして安政2年(1855年)に江戸で大地震が起きると、多くの人が地方に散らばりました。その際に、江戸の文化も一緒に広まったとされています。
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ちびちび飲むのが正解?日本酒の飲み方まとめ
記事の内容をまとめます。
- 日本酒の飲み方には「ストレート」「オンザロック」「水割り」「お湯割り」「ソーダ割り」「カクテル」「トッピング」など様々なスタイルがある
- 日本酒は飲む温度によって「冷酒」「冷や」「燗」に大別される
- 日本酒を飲む伝統的な器として「お猪口」「盃」「ぐい呑み」「枡」がある
- 日本酒を注ぐ器として「徳利」「片口」「ちろり」「銚子」がある
- 日本酒の容器の素材として「陶器」「磁器」「漆器」「錫」「ガラス」「木」がある
- 日本酒はちびちび飲むと言われる理由は、徳利とお猪口で少量ずつ飲む姿が想像されるため
- 日本酒を飲む正しいルールはないが、ゆっくりとちびちび飲むのが、やはりおすすめ
- 日本酒が料理と一緒に提供されるのは、江戸時代に独身男性と労働者のための飲食店が発展したため
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