一般的に、ワインと牛乳の飲み合わせの相性は良くありません。しかし、ワインを牛乳で割ったカクテルも存在します。また、ワインに牛乳を加えると、チーズのように凝固することがある一方、チーズをワインに浸して風味づけしたり、チーズをワインで煮込むチーズフォンデュのような料理も存在します。この記事では、ワインと牛乳を両方使った飲み物と料理について、両方をご紹介します。
ポイント
- ワインと牛乳のカクテル
- ワインの割り方と、牛乳の関係
- 牛乳の分離とワインの関係
- ワインと牛乳を使った料理
ワインと牛乳を使った飲み物
ワインと牛乳の飲み合わせ
アルコールを飲む前に牛乳を飲めば酔いにくくなる、という話を聞いたことがあると思います。
俗に「牛乳が胃に膜を張りアルコールの吸収を遅らせる」と言われていますが、特に膜が張られるということはなく、空腹よりは何か食べた方がいいよね、という程度のことのようです。そのために脂質やタンパク質があるものとして、チーズや牛乳の名が、よく挙げられています。
しかし乳製品は体質的に合わない人もいるので、逆効果にもなりません。牛乳ということに拘らず、おつまみでも何か食べておいた方がいいということですね。
また、ワインと牛乳を一緒に飲んだら酔わなくて最強、なんていうことはありません。さらに、風味という点から言っても、ワインと牛乳の飲み合わせは、あまりお勧めできるものではありません。
ワインと牛乳を使ったカクテル
一般的に、ワインを牛乳で割ることは少ないです。場合によっては、とんでもなく不味い飲み物となります。これは、赤ワイン・白ワイン同様です。
しかしバランスによっては、美味しいカクテルとなることもあります。ここでは、ワインと牛乳を用いた、いくつかのレシピをご紹介します。
ピーチ・レディ
「ピーチ・レディ(Peach Lady)」は、日本で考案されたカクテルです。帝国ホテルのバーテンダー佐藤謙一氏の創作で、1988年の、第1回メルシャンカクテルコンペティションの最優秀賞に選ばれました。
日本では白ワインを用いますが、海外で同名のカクテルの場合、レシピが異なっている場合があります。
- ピーチリキュール:30ml
- 白ワイン:90ml
- 牛乳:30ml
- ストロベリーシロップ:30ml
レチェ・デ・パンテラ派生
「レチェ・デ・パンテラ(Leche de pantera)」は、「ヒョウのミルク」という意味で、スペインで人気のカクテルです。北アフリカで勤務中のスペインの兵士たちによって考案され、その後スペインに持ち帰られ、人気になったとされています。
通常はジンやラムが使われますが、白ワインを用いたレシピをご紹介します。
- 白ワイン:100ml
- 牛乳:100ml
- 砂糖:15g
- シナモンスティック:1本
- 氷:適量
赤ワインのホットミルク
ホットミルクとしましたが、冷たくして飲んでもいいと思います。赤ワインを牛乳で割っただけだと、多分美味しくないので、シロップやハチミツなど、何かしらの甘味づけが必要となります。好みによって、シナモンやレモンを加えてください。
- 赤ワイン:50ml
- 牛乳:150ml
- シロップ:10ml
赤ワインを温めるだけでも大丈夫?ホットワインの魅力と効果
2023/12/31 アルコール
赤ワインは常温で飲むのが定番ですが、実は温めるだけで、その風味が大きく変わります。ホットワインと呼ばれるこの飲み物は、寒い冬の時期やクリスマスには定番です。スパイスやフルーツを組み合わせることによって ...
牛乳以外での、ワインの割り方
上記のように、牛乳を用いたワインのカクテルはありますが、一般的にはあまり推奨されていません。
牛乳以外の割り方として、他には以下のようなものがあります。
- 水
- 炭酸水
- トニックウォーター
- ジンジャエール
- コーラ
- オレンジジュース
- グレープフルーツジュース
- クランベリージュース
- パイナップルジュース
- アイスティー
ワインに氷は入れない?その理由とは
2023/12/31 アルコール
ワインに氷を入れて飲むことはマナー違反でしょうか。確かにソムリエがワイングラスに氷を入れている光景はあまり見ませんが、ワインを使ったカクテルでは、氷が入っていることが当たり前です。結局のところ、好みの ...
ワインと牛乳を使った料理
牛乳にワインを入れると分離する?
牛乳にワインを加えると、分離して凝固することがあります。これは、牛乳にレモンを加えると凝固し、チーズができるのと同じです。
牛乳に酸性の液体を加えると、カゼインが凝固します。カゼインは牛乳の中の主要なタンパク質で、酸が加えられると、固形のカードと、液体のホエイに分離します。これは酸沈殿と呼ばれる現象です。
しかし、牛乳にワインを加えると必ず凝固するというわけでもなく、温度や、混ぜるタイミング、ワインの酸度にもよります。
牛乳は、温度が高くなると凝固されやすくなります。また、高温下では牛乳の中の微生物が増殖し、自然と酸化し、凝固することがあります。一旦凝固したら、冷却することで、その塊が安定化します。
つまり、カクテルのように冷たければいいのですが、クラムチャウダーのように牛乳を熱する料理にワインを加えると、凝固してカッテージチーズのようになることがあります。
ワインに含まれる酸
ワインには、主に以下の酸が含まれています。これらの酸が牛乳と反応することで、牛乳内のカゼインが凝固します。
酒石酸(Tartaric Acid)
ワインに一番多く含まれる酸でありながら、他の果物には見られない酸です。ワインの酸味を決める主要な成分です。
酒石酸は、ワインを長期熟成すると結晶化し、ボトルの底に沈殿することがあります。
リンゴ酸(Malic Acid)
リンゴ酸は多くの果物に含まれている酸で、ワインにも高いレベルで含まれています。
特に、未成熟のブドウに多く含まれており、フレッシュな酸味をもたらします。
乳酸(Lactic Acid)
乳酸は、ワインの発酵の過程で生成されることがある酸です。乳酸菌が、リンゴ酸を、乳酸と炭酸ガスに分解します。この発酵のことを「マロラクティック発酵」と言います。
乳酸は、ワインのまろやかさと複雑さを作り出します。
クエン酸(Citric Acid)
クエン酸は、柑橘系の果物に多く含まれている酸です。
ワインに自然に入っていることは少ないですが、ワイン製造の過程で、酸度を調整するために追加されることがあります。
牛乳とワインで作るチーズ
牛乳にワインを加えると凝固するならば、それでチーズが作れると思うかもしれません。
ホームメイドは別として、実際にある製品のチーズとしては、凝固の過程としてワインが使われることはありません。ただし、風味を付けるためにワインが使われることはあります。
ウブリアコ
「ウブリアコ(Ubriaco)」は、イタリア北東部のヴェネト地方で作られる伝統的なチーズです。ウブリアコはイタリア語で、「酔っ払った」という意味です。これは、チーズをワインに漬け込むことから来ています。
まず牛乳を加熱し、レンネットと酸を加えて凝固させます。
チーズが形成されたら、塩水に漬け込みます。
塩漬けされた後は、赤ワインに漬け込みます。赤ワインには数週間浸され、これによりワインの風味がチーズに染み込みます。
その後、さらに数ヶ月から数年かけて熟成させます。
濃厚な風味のウブリアコは、ワインのペアリングとして、最高のチーズとなります。
エポワス
「エポワス(Epoisses)」は、フランスのブルゴーニュ地方で作られる「ウォッシュチーズ(Washed-rind cheese)」です。エポワスは独特の風味と香りで知られており、「世界で最も臭いチーズ」とも言われています。
まず牛乳を加熱し、レンネットと酸を加えて凝固させます。
チーズが形成されたら、塩水に漬け込みます。
ここまではウブリアコと一緒ですが、ワインに漬け込むのではなく、ワインで洗い流します。ワインではなくブランデーが使われることもあります。これを何度も繰り返すことで、エポワス特有の色と香りが生まれてきます。
その後、さらに数カ月間熟成させます。
エポワスの香りは強烈なので、好むかどうかは人によります。一般的に、ブルゴーニュ地方の赤ワインと相性がよいとされています。
ワインと牛乳を使ったチーズフォンデュ
ワインと牛乳を両方使う料理に、チーズフォンデュがあります。
「チーズフォンデュ(Cheese fondue)」は、チーズを白ワインで煮込んだスイス料理です。フランス語では「フォンデュ・オ・フロマージュ(Fondue au fromage)」と言います。
チーズフォンデュの作り方は簡単で、フォンデュ用の専用鍋にワインを入れて温め、チーズを入れて溶かすだけです。この時に、分離を防ぐためにコーンスターチ(小麦粉、片栗粉)をまぶします。にんにく、コショウ、ナツメグなどのスパイスを入れることもあります。これを、パンや野菜などにつけて食べます。
チーズは、硬質のエメンタールチーズや、グリュイエールチーズが使うのが基本ですが、日本では手に入りにくいものです。その場合、手に入りやすいミックスチーズや、ピザ用チーズでも構いません。
また、白ワインではなく、赤ワインやロゼワインが使われることもあります。
ワインと一緒に、牛乳を加えることもあります。牛乳を入れると、フォンデュが固まりすぎず、滑らかな口当たりとなります。
また、小さな子供がいたり、アルコールが苦手な方がいる場合は、ワインを完全に牛乳に置き換えることも可能です。
ワインのアルコールを飛ばす方法と時間の目安
ワインは飲むだけでなく、料理やデザートにも使われています。その時に気になるのがアルコールです。運転をしなければいけない、妊娠中だ、小さな子供がいるなど、様々な理由でアルコールを避けたい場合があります。 ...
牛乳とワインを使ったクリームパスタ
その他、ワインと牛乳を両方使う料理の例として、クリームパスタがあります。
クリームソースとは、元々はフランス料理の「ベシャメルソース(Sauce béchamel)」のことで、ホワイトソースとも言われます。小麦粉、バター、塩・コショウ、生クリーム、牛乳などを煮詰めて作られます。生クリームを使う・使わないなど、フランス料理、イタリア料理、日本料理の間で、若干用語が混同しています。
クリームソースのパスタを作る際に、白ワインを少し加えると、コクと香りが良くなります。
市販のルーでも大丈夫!牛乳とワインを使ったカレー
ワインと牛乳が余っていて、手軽に消費したいということであれば、カレーがおすすめです。
方法は簡単で、カレーソースの中にワインと牛乳を入れて、煮込むだけです。赤ワイン・白ワイン、どちらでも大丈夫です。量も適当で、雑に作っても、そんなに変なことにはなりません。カレーの偉大なところです。
いつもの市販のカレールーでも、ちょっと違った味が楽しめることでしょう。
まとめ ワインの牛乳割りについて
記事の内容をまとめます。
- 赤ワインの牛乳割り、白ワインの牛乳割りともに、あまり一般的ではない
- ピーチ・レディなど、ワインと牛乳を使ったカクテルも存在する
- ワインを牛乳で割るならば、甘味づけをし、レモンやシナモンで味を整えるとよい
- ワインの牛乳割りは、ホット・アイス、両方とも存在する
- 牛乳にワインを加えると、牛乳のカゼインとワインの酸が反応し、チーズのように凝固することがある
- 牛乳をワインで凝固してチーズを作ることはないが、ウブリアコやエポワスのように、ワインで風味づけしたチーズは存在する
- ワインに含まれる主な酸は、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸の4つ
- ワインと牛乳を同時に消費したいなら、チーズフォンデュ、クリームパスタ、カレーなどの料理がある