ワインは飲むだけでなく、料理やデザートにも使われています。その時に気になるのがアルコールです。運転をしなければいけない、妊娠中だ、小さな子供がいるなど、様々な理由でアルコールを避けたい場合があります。そのような場合は、ワインを加熱することで、アルコールを飛ばして、風味を残すような方法を取るのが一般的です。この記事では、ワインのアルコールを飛ばす方法と、目安となる加熱の時間についてご紹介します。また、運転や授乳への影響についても解説しています。
ポイント
- ワインのアルコールを飛ばす方法
- アルコールを飛ばすのに必要な温度
- アルコールを飛ばす目安の時間
- アルコールの飛ばし方と、運転、妊娠、子供への影響
ワインのアルコールを飛ばす方法
ワインのアルコールを飛ばす方法と、目安の時間についてご紹介します。
鍋で加熱してアルコールを飛ばす「煮切り」
ワインのアルコールを飛ばす、一番簡単な方法は、鍋に入れて強火で煮込むことです。
これは、ワインだけでなく、日本酒やみりんも同じで、和食の世界では「煮切り(にきり)」と呼ばれています。
手法としては、弱火でじっくり派と、強火で一気に派に分かれています。弱火派は、強火にすると風味が変わってしまう、強火派は、より香りがよくなる、という意見のようです。どちらが良いかは好みの問題となりますので、実際に試してみてください。
また、単純に沸騰させるだけでなく、揮発したアルコールに火をつけて燃やす方法もあります。これにより、より確実にアルコールを飛ばすことができます。
火をつけてアルコールを飛ばす「フランベ」
鍋やフライパンに火をつけて燃やす方法は「フランベ(flambé)」と言うと聞いたことがあるかもしれません。
フランベはフランス料理の用語ですが、煮切りとは意味合いが異なります。フランベは、料理の最後に香り付けをするため、アルコール度数の高い酒に火を付けて、一気に燃やす手法です。アルコール度数が高くないと燃えないため、基本的には、ブランデーやウイスキーなどの蒸留酒が使われます。蒸留酒のアルコール度数は40%以上ありますが、ワインのアルコール度数は約12%です。
ではフランス料理に「煮切り」に相当する言葉はないのかということですが、煮詰めて量を減らすという意味で、「レデュイール(réduire)」という言葉が近いようです。煮詰めた物は「レデュクション(réduction)」と言います。
「電子レンジ」でアルコールを飛ばす方法
鍋やフライパンがない場合は、電子レンジを使うこともできます。
方法は、耐熱容器に入れて温めるだけです。アルコールを飛ばすことが目的なので、当然、ラップやフタはしないようにします。
電子レンジは、液体の温度が均一にならないので、突然爆発するように飛び散る「突沸」という現象が起こることがあります。なるべく背が低く、口が広い容器の方がよいでしょう。
ワインのアルコールを飛ばすのに必要な温度
アルコールの沸点は約78℃です。しかし78℃にならないと気化しないという訳ではなく、温度が高まるにつれて気化する割合が増えていき、最初は液体の表面からだけだったのが、内部からもどんどん気化するようになり、気圧と等しくなるのが78℃ということです。
だいたい50℃くらいから蒸発が始まり、78℃になると内部から沸騰します。
また、78℃になったら、アルコールがすぐになくなるというわけでもありません。水が100℃になって沸騰しても、すぐにはなくならないのと同じです。ある程度の時間、沸騰させ続ける必要があります。
ワインのアルコールを飛ばす目安の時間
ではどのくらいの時間加熱すればいいのかということなのですが、ワイン単体を鍋に入れて煮込んだ場合、15~20分ほどかけるとアルコールの大部分を飛ばすことができるとされています。
しかし実際の料理では、そこまで時間をかける必要はありません。目安としては、鍋で煮切る場合は、100mlで1分というところでしょう。電子レンジも同じくらいで、500W・600Wの場合、100mlで1分が目安となります。
以降は、香りや味覚で確認しながら、調整をしてください。
ワインのアルコールを完全に飛ばすことはできる?
運転や育児などで、アルコールを使った料理を作る・食べる際の注意点をご紹介します。
アルコールは完全にはなくならない
上記のように鍋や電子レンジでアルコールを飛ばしても、アルコールは完全にはなくなりません。
ワインのアルコール度数は約12%です。これを100mlで1分くらいの時間で沸騰させた場合、約5%まで減ると言われています。半分弱は残っているということですね。
加熱時間の短いフランベでは、70%近くも残っているとされています。
20分近く沸騰させれば、ほとんどなくなるとされていますが、それでもゼロになる訳ではありません。また、長時間煮詰めると、風味がかなり変わってしまいます。
ワインの煮込み料理を食べた後に運転しても大丈夫?
ワインのアルコールを完全に飛ばすことはできないとなると、気になるのは運転をしてもよいかということです。
いわゆる酒気帯び運転(飲酒運転)は、「呼気1L中に検出されたアルコールの量が0.15mg以上」のことを指します。0.15mg未満であれば、飲酒運転とはなりません。また0.25mg以上だと、一発免停となります。
これは、ワインでいうとグラス1杯150mlくらいの量です。体重等にもよりますが、ワインをグラス1杯飲んだら、数時間は運転をしてはいけないということになります。
ここで、例えば「牛肉の赤ワイン煮込み」という料理は、だいたいワイン300ml、グラス2杯分くらいで煮込むのが定番です。ワイン300mlは余裕で飲酒運転の基準をオーバーしてしまいますが、煮込み料理はじっくり30分以上時間をかけて煮込むので、アルコール分はほとんど飛んでいると思われます。
したがって、ワインの煮込み料理を食べた後に運転をしても、特に問題はないでしょう。もちろん確実ではないので、できるだけ避けたほうが無難ではあります。
ちなみにフランベは、大さじ1杯15mlくらいから、せいぜい数十mlくらいの量です。フランベをしてもアルコールの大半は残りますが、量的に酒気帯び運転の基準には達しません。しかしこちらも、できれば避けたほうが無難でしょう。
妊娠中・授乳中にホットワインを飲んでも大丈夫?
妊娠中の飲酒は、胎児にも影響を及ぼすことが知られています。また、授乳期も同様です。
ホットワインは、煮込み料理と違い、鍋や電子レンジで数分間加熱するだけであることが多いです。数分間の加熱だけでは、アルコール分は半分近く残っています。
したがって、妊娠中・授乳中のホットワインは避けるべきです。どうしても飲みたい場合は、ノンアルコールワインを用いるとよいでしょう。
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子供がいる家庭で料理にワインを使っても大丈夫?
シチューやアクアパッツァなど、家庭でもワインを使う料理はたくさんあります。小さな子どもがいる家庭でも、ワインを使って大丈夫でしょうか。
基本的には、火にかけて煮込む料理であれば大丈夫といえます。ワインが駄目なのであれば、料理酒やみりんも駄目ということになってしまいます。ワインのアルコール度数は約12%、料理酒は約13%、みりんは約14%です。
ただし、調味料として少量を使うのであればいいのですが、大量のワインを使う場合は、避けたほうがよいでしょう。
また、ゼリーやシャーベットなど、加熱をしない料理の場合は、少量であっても避けるべきです。
まとめ ワインのアルコールを飛ばす方法について
記事の内容をまとめます。
- ワインのアルコールを飛ばすには、鍋に入れて沸騰させるか、電子レンジで加熱させるとよい
- 揮発したアルコールに火をつけて燃やす方法もある
- 和食では「煮切り」、フランス料理では「フランベ」という技法がある
- 鍋・電子レンジともに、加熱時間は100mlで1分が目安
- 数分間加熱をしても、アルコールは完全にはなくならない
- 20分以上煮込むと、大半のアルコールは失われる
- ワインの煮込み料理は、30分以上煮込むので、運転をしても問題はない
- ホットワインは、アルコール分が残っているので、妊娠中や授乳中に飲んではいけない
- ワインを使う料理でも、ある程度の時間加熱をするのであれば、子供が食べても問題はない
- 心配な場合は、ノンアルコールワインを使ったほうが無難