一般的にワインは「赤ワイン」「白ワイン」「ロゼワイン」に分類されますが、最近は「オレンジワイン」も人気となっています。でもオレンジワインとは何でしょうか。自然派ワインとも混同され、分かりにくくなっているようです。この記事では、オレンジワインの特徴と定義について詳しく解説しています。また、オレンジワインはまずいと言われることの多い理由と、それにも関わらず世界的に人気となった理由についても解説しています。
ポイント
- オレンジワインの特徴
- ワインの作り方の分類
- オレンジワインと自然派ワインの関係
- オレンジワインはまずいのか
- オレンジワインが選ばれる理由
- おすすめのオレンジワイン
最近話題のオレンジワインとは? まずいと聞いたけど…
オレンジワインの概要と、製造方法、他のワインとの違い、生産地、そして自然派ワインとの関係について、詳しく解説します。
オレンジワインとは
「オレンジワイン(Orange Wine)」とは、白ブドウを用いて作られるワインの一種で、オレンジ色がついていることが特徴です。果物のオレンジは一切使用しておらず、関係がありません。味もオレンジ感はありません。色がオレンジというだけです。
オレンジワインの製法は、数千年前にジョージアで始まったとされ、世界最古のワイン製造法の一つと考えられています。つまり、あえてオレンジワインを作っていたということではなく、昔のワインはオレンジワインだったということです。
近年、自然派ワインの人気が高まる中、伝統的なワイン製法が再評価され、オレンジワインにも注目が集まっています。
オレンジワインはどんな味?
オレンジワインの味を説明することは難しいですが、確実に言えるのは、一般的な白ワインや赤ワインの味とは異なるということです。
白ブドウらしいフレッシュな果実味に、複雑な酸味が加わります。
赤ワインのようなタンニン感や渋さあります。
そしてそれらが、酸っぱく酸化していると感じられることもあります。
その独特の味わいは、多くの人に「まずい」と言われても、致し方ない面があります。
オレンジワインの作り方
通常白ワインは、収穫した白ブドウの皮や種を取り除き、果汁のみを発酵させます。
オレンジワインは、白ブドウの皮や種を取り除かず、一緒に発酵させるという点が異なります。このため、特徴的なオレンジ色がつくことになります。
またオレンジワインは、自然派ワインの文脈で語られることが多いので、下記でご紹介するような、自然派ワインの製法が組み合わさることが多いです。
オレンジワインとロゼワインとの違い
オレンジワインとロゼワインは、色合いが似ているので混同されやすいですが、製法や味が大きく異なります。その違いをご説明します。
作り方の違い
代表的なワインの製法を、単純化して分類すると、以下のようになります。
- オレンジワイン:白ブドウを、皮と一緒に発酵させる
- 白ワイン:白ブドウの皮を取り除き、果汁のみを発酵させる
- 赤ワイン:黒ブドウを、皮と一緒に発酵させる
- ロゼワイン:黒ブドウを皮と一緒に発酵させるが、途中で皮を取り除く(複数の製法がある)
- ブラン・ド・ノワール:黒ブドウの皮を取り除き、果汁のみを発酵させる(主にスパークリングワイン)
この分類で言うと、「白ブドウを皮と一緒に発酵させるが、途中で皮を取り除く」という、白ブドウを使ってロゼワインの製法で作られたものがありませんが、テクニックとしては存在するものの、名前はついていないようです。
ブドウの違い
オレンジワインは白ブドウのみを使用します。
ロゼワインは、伝統的には黒ブドウのみを使用します。白ブドウと黒ブドウをブレンドする製法もあります。
味わいの違い
オレンジワインは、タンニンが感じられ、酸化した果実味のある、複雑な味わいが特徴です。
ロゼワインは、タンニン感は少なく、軽やかでフレッシュな果実味があり、酸味も穏やかです。
色の違い
オレンジワインの色は、オレンジから琥珀色の範囲です。
ロゼワインはの色は、淡いピンクから濃いピンクが一般的ですが、一部オレンジ系のものもあります。
ですから、オレンジ系のロゼワインは、オレンジワインと区別がつきにくい場合もあります。
オレンジワインの逆は何?
オレンジワインの逆はロゼワインと捉えられることもありますが、製法から考えると、白ブドウと黒ブドウが異なるという点から、オレンジワインの逆は赤ワインとなるでしょう。
オレンジワインは、「赤ワインの製法で作った白ワイン」と説明されることがよくあります。
自然派ワインとは
オレンジワインは「自然派ワイン(ナチュラルワイン、ヴァン・ナチュール)」と言われています。しかし自然派ワインに明確な定義はなく、使う人によって意味が異なるので、注意が必要です。
「オーガニックワイン(有機ワイン、ビオワイン)」のコンセプトも混じっており、大まかには、次のような方向性の違いがあります。
- できるだけだけ人の手をかけずに、自然に任せた方がいい、宗教派(?)
- 大量生産・機械化は悪なので、昔ながらの作り方をした方がいい、反資本主義派
- できるだけ環境に配慮した方がいい、サスティナブル派
- 実はその方が売れるからという、マーケティング派
- ワイン本来の味を提供したい、純粋派
- 太古の製法を再現したい、ロマン派
- できるだけ化学物質を摂取したくない、美容と健康派
結果、どのようにワインを作るのかは生産者によって異なりますが、以下のいずれかの特徴が含まれます。
- 化学肥料を使用しない
- 土壌管理をしない
- 水やりをしない
- 機械ではなく手摘みで収穫する
- 皮ごと発酵させる
- 培養酵母ではなく野生酵母で発酵させる
- 温度管理をしない
- 酸化防止剤を添加しない
- 澱を取り除かない
- アルコール度数を調整しない
この中で、オレンジワインの定義に直接関係があるのは「皮ごと発酵させる」という点のみです。
しかし、「皮ごと発酵させた白ワインを飲みたい!」という理由でオレンジワインを飲む人は少ないでしょう。
理由は様々ですが、「自然派ワインを飲みたい!」という中で、結果的にオレンジワインが選ばれている、ということだと思います。
オレンジワインの産地は?
オレンジワインは、現在世界中で生産されています。その中でも、代表的な産地をご紹介します。
ジョージア
オレンジワインの製法は、ジョージアで8,000年以上前に始まったとされています。
ただしジョージアではオレンジワインではなく、「クヴェヴリ」という地中に壺を埋めて作られる、伝統的なワインのことを指すことが多いです。
ちなみにジョージアのクヴェヴリは、ほとんど自分の家で消費するためだけのものでしたが、商業的に出回るようになったのは、2000年以降のオレンジワインの人気に引っ張られてのことです。
イタリア
世界的にほとんど忘れられていたオレンジワインを復活させたのは、イタリアのワイナリーとされています。
また、オレンジワインと自然派ワインが混同されるのは、このイタリアのワイナリーが自然派ワインを推奨していたためのようです。
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア地方や、トスカーナ地方が、オレンジワインの産地として知られています。
スロベニア
イタリアと国境を面するスロベニアでもオレンジワインが生産されています。
自然派ワインの動きとともに、国際的な注目度が高まっています。
フランス
ロワール渓谷やアルザス地方で、オレンジワインが生産されています。
実験的なアプローチによる、新しいワイン造りの試みがされています。
国産のオレンジワインはある?
日本でも、山梨や北海道など、各地でオレンジワインが作られています。
特に「甲州F.O.S.」は、日本最初のオレンジワインとして知られています。「F.O.S.」とは「Fermented on Skins」のことで、甲州種を皮ごと発酵させたワインという意味です。
ヨーロッパの伝統とは異なる、ユニークなワインが多いとされています。
オレンジワインの呼び方
「オレンジワイン(Orange Wine)」という言葉は、もちろん英語ですが、基本的に世界中どこでも「オレンジワイン」と呼ばれています。
オレンジワインの生産が始まったのは、数千年前のジョージアとされていますが、なぜ英語が使われているのかと疑問に思われるかもしれません。それは、オレンジワインのコンセプトが広まったのが、21世紀に入ってからであり、つい最近の話だからです。
ジョージアには「クヴェヴリワイン(Kvevri Wine)」という言葉があります。これは「壺ワイン」という意味で、大きな壺を地中に埋めて発酵させる、伝統的な手法で作られたワインのことです。結果的に色がオレンジになるので、オレンジワインの一種と見なされることがあります。
イタリアでは「Vino Arancione」と呼ばれることもありますが、これは英語のオレンジワインを直訳しただけです。
フランスの「Vin Orange」も、英語からの直訳です。フランスではそれよりも「Vin Nature(自然派ワイン)」「Biologique(有機)」「Biodynamie(生体力学)」「Lutte Raisonnée(減農薬)」などのコンセプトの方が広まっています。
まずいオレンジワインが世界的に人気の理由
オレンジワインがまずいとされる理由と、それでも選ばれる理由について解説します。また、ペアリングの例と、プレゼント・入門用におすすめのオレンジワインをご紹介します。
オレンジワインがまずい理由
オレンジワインはまずいと言われることも多いのですが、それはある意味当然です。おいしいワインの作り方に、あえて逆行しているのが、オレンジワインだからです。
ワインの歴史は9,000年以上に及ぶとされていますが、世界各地でワインが飲まれていたのは、安全な飲み水を確保できないので代わりにワインを飲んでいたという、極めて現実的な理由によるものです。
現在のようなおいしいワインの製造方法が確立したのは、ほんの数十年前とされています。つまり、祖父母の時代のワインの味は、今のワインとは異なっていたのです。
そこでイタリアのワイナリーが、「なんか爺ちゃんが作ってたワインの味と違うんだよな~」と、昔ながらのワインの作り方を研究した結果、ジョージアでインスピレーションを得て、誕生したのがオレンジワインです。
このイタリアのワイナリーが目指したのは、「ブドウと土地が持つ本来の味を100%引き出したワイン」です。そこに自然派ワインのコンセプトが混じり、「自然派ワイン≒オレンジワイン」という図式ができました。
自然派ワイン(オレンジワイン)がおいしくないのは、有機栽培した野菜がおいしくないのと同じことです。味ではなく、有機栽培であることが重要だからです。劣化しやすい点も同じです。
しかし自然であることが、必ずしもまずいという訳ではありません。
オレンジワインの方がおいしいと感じる人もいますし、料理の幅が広がったと感じる人もいます。また、ブドウの品種、土地、収穫年(ヴィンテージ)、製法による違いが大きくなるので、ワイン選びがより楽しくなるという面もあります。
オレンジワインがまずい理由は、おいしさを追求していないという点と、味の幅が広がったのでまずいと言われるゾーンも広くなったというて点が挙げられるでしょう。
あえてオレンジワインを飲む理由
オレンジワインはまずいと言われる一方、世界的に人気となっています。その理由をご紹介します。
酸化防止剤が少ない
オレンジワインの特徴の一つは、通常の白ワインと比べて、酸化防止剤(亜硫酸塩)が少ないという点です。
通常の白ワインはタンニンが少ないので、赤ワインに比べて酸化防止剤が多く必要となります。オレンジワインは赤ワインと同様にタンニンを多く含むので、酸化防止剤が少なくて済みます。
酸化防止剤が健康に与える影響については議論が分かれるところですが、「なるべく添加物が少ないワインを飲みたい!」という理由で、オレンジワインを選ぶという人は多くいます。
環境保護
オレンジワインは、自然環境に配慮した生産方法が取られていることが多いです。
サスティナブルな世界を目指すために、オレンジワイン(自然派ワイン)を選択する方もいます。
ロマン
ワインの魅力の大半は、味ではなく、ロマンだと言う方も多いでしょう。
昔ながらの製法で作られたワイン、特にジョージアのクヴェヴリなどは、ロマン溢れるワインと言えるでしょう。
また、日本固有のブドウ種を使って作られたオレンジワインに、ロマンを感じる人もいるでしょう。
新しい可能性
オレンジワインという言葉は、21世紀に入ってからできたものですが、製法自体は昔からありました。
オレンジワインは原点回帰のようなところがあるのですが、生産者によっては、より新しい生産方法への挑戦としてオレンジワインを作っているところもあります。
飲む側も、伝統的なワインではなく、新しいワインとしてオレンジワインを選択する人もいます。
料理の可能性
オレンジワインは、従来のワインに比べて、合う料理の幅が広いとされています。
例えば、中華料理や韓国料理など、ワインのペアリングが一般的でなかった料理にも合うため、新しい提供スタイルが可能となっています。
オレンジワインに合う料理は?
オレンジワインの人気が高まっている理由の一つは、従来にはない、新しい料理のペアリングができるからです。今までにはない味のワインなのですから、ペアリングも新しくなるのも当然です。
赤と白の両方の特徴を持つ、またはどちらでもないとされるオレンジワインと合う料理を、いくつかご紹介します。
スパイシーな料理
オレンジワインは、スパイスの効いた料理ととてもよく合います。
インド料理、タイ料理、メキシコ料理など、複雑で辛味のある料理に合うでしょう。
また、ナッツやドライフルーツを多用した、中東料理や北アフリカ料理にも合うとされています。
肉料理
肉料理の中でも、鴨肉やラム肉など少し癖のある料理や、脂身の多い料理によく合います。
シーフード
シーフードは、グリルやスモークされた料理に、フルーティさがアクセントとなって、よく合うとされています。
チーズ
チーズは、ブルーチーズなどの風味の強いチーズが、お互いの風味を高めてよく合います。
プレゼントにおすすめのオレンジワインは?
オレンジワインは、プレゼントにも最適です。
ただし、現在では物珍しさの方が勝るので、相手にある程度ワインの知識があることが前提となります。
ワイン初心者にはオレンジワインの特別感が伝わりませんし、単純にまずいワインとしか感じられないかもしれません。
プレゼントをするならば、やはりロマン重視で、ジョージアのクヴェヴリが良いのではないでしょうか。個性的なボトルも多いです。
入門におすすめのオレンジワインは?
オレンジワインは癖が強いので、初心者が自分に合ったものを選ぶのはなかなか難しいです。
可能であれば、ソムリエの意見を聞いてみるのがいいでしょう。
オンラインショップであれば、セット販売されているものがおすすめです。
まとめ オレンジワインがまずい理由と人気の理由
記事の内容をまとめます。
- オレンジワインとは、白ブドウの皮や種を取り除かずに、一緒に発酵させたワインのこと
- オレンジワインは、白ワインと赤ワインの特徴が合わさった複雑な味を持つが、まずいという声も多い
- オレンジワインの生産は、8000年前のジョージアで始まったとされる
- 20世紀末にイタリアのワイナリーがオレンジワインを復活させ、21世紀に入ってから世界的に人気となった
- オレンジワインは、ジョージアを始め、イタリア、スロバニア、フランス、日本など世界中で作られている
- オレンジワインは自然派ワインと同一視されることが多い
- 自然派ワインは、味ではなく自然であることを追求したものなので、まずいという声も多い
- オレンジワインが人気の理由は、酸化防止剤が少ないこと、サスティナブルな生産方法が取られていること、ロマンがあること、料理の幅が広がることなどがある
- オレンジワインは、味に癖があり、スパイシーな料理によく合うとされる