台風が来たので飛行機が欠航になるかと思ったら、意外と普通に運航していて、驚いたということはないでしょうか。なぜ飛行機は台風の中を飛べるのか、また逆に、欠航するのはどんな時か。この記事では、飛行機と台風の関係について、詳しく解説しています。
ポイント
- 飛行機は台風の上を飛ぶか
- 台風と飛行機事故の関係
- 飛行機が欠航する理由
- 台風により飛行機が欠航する確率
飛行機は台風の上を飛べるか
飛行機は台風の上を飛べるのか、過去の事故の事例、台風の上を飛ぶ様子、揺れの程度についてご説明します。
飛行機は台風の上を飛べるの?
現在、商用で使われている旅客機は、台風の上を飛ぶことができます。
しかし、その高度で飛ぶ能力があるというだけで、実際に運航するかどうかは別問題です。
飛行機と台風の高度
通常、旅客機は高度9,000~12,000メートル(30,000~40,000フィート)を飛びます。
一方、台風の強風領域は、地上から8,000メートル程度です。台風の規模によっては最大15,000メートルにもなることはありますが、飛行機でも、規模や場所によってはその上を飛ぶことができるということです。
台風が原因で飛行機事故になったことはある?
意外かもしれませんが、台風が直接的な原因で飛行機事故につながった事例は、ほとんどありません。なぜならば、事故になる前に欠航するからです。遅延や欠航は頻繁にありますので、利用者としては不便を感じますが、そうやって安全が確保されているわけです。
いくつか台風や強風に関連した事故の事例をご紹介します。
1954年 青木航空 ビーチクラフトC18
1954年9月25日、青木航空のチャーター便が、羽田空港から丘珠空港(札幌飛行場)を目指していました。しかし台風15号の影響により、急速に天候が悪化したため、羽田空港に引き返そうとしたところ、福島県楢原町(現・下郷町)の辺りで墜落しました。
台風15号は、日本史上最悪の海難事故である、洞爺丸沈没事故の原因ともなったので、後に洞爺丸台風(とうやまるたいふう)と言われるようになりました。
1985年 デルタ航空191便
1985年8月2日、デルタ航空191便が、テキサス州ダラス・フォートワース国際空港に着陸する際、急激な下降気流(ダウンバースト)に遭遇し、墜落しました。
この事故は台風とは関係がありませんが、ダウンバーストを検知できるドップラー気象レーダーが、世界中の飛行場に設置されるきっかけとなりました。以後、同様の事故は激減しました。
この研究は、日系アメリカ人の気象学者、「Mr.トルネード」こと藤田哲也氏の貢献が大きいとされています。
1993年 日本エアシステム451便
1993年4月18日、日本エアシステム451便が、岩手県の花巻空港への着陸に失敗し、炎上しました。幸いにして、乗客・乗務員に死者はありませんでした。
台風ではありませんが、強風注意報がでていました。また、副操縦士の経験不足が原因の一つとみられています。
1993年 中華航空605便
1993年11月4日、中華航空605便が、香港の啓徳空港に着陸する際、オーバーランをして海に落ちました。幸いにして、乗客・乗務員に死者はありませんでした。
台風23号の横風に煽られたことと、その後の対応ミスが原因とみられています。
2000年 シンガポール空港006便
2000年10月31日、シンガポール空港006便が、台北の中正国際空港(現・台湾桃園国際空港)から離陸する際、工事用のコンクリートブロック等に衝突し、炎上しました。
当時、台風20号が接近していたものの、パイロットが誤って工事中の滑走路に進入してしまったことが直接的な原因とされています。
2009年 フェデックス80便
2009年3月23日、貨物機であるフェデックス80便が、成田空港への着陸に失敗し、炎上しました。
台風ではありませんが、強風警報を出すかどうかという時でした。また、機種の特性、パイロットの疲労などの、複合的な要因とされています。
2014年 トランスアジア航空222便
2014年7月23日、トランスアジア航空222便が、台湾の馬公空港(現・澎湖空港)への着陸に失敗し、墜落しました。
台風10号による視界不良と、パイロット・管制塔両方のミスが重なったことが原因とされています。
台風の上を飛行機が飛んだ例はある?
飛行機が台風の上を飛ぶことは、よくあります。
こちらの動画は、2018年9月4日に日本に上陸した台風21号と、フライトレーダーの様子を組み合わせたものです。ほとんどの飛行機は台風を避けていますが、一部は台風の上を飛んでいることが分かります。
また、台風の上を飛ぶ場合も、台風の渦に沿って、なるべく影響の少ないルートを通っているようです。
飛行機が台風の上を飛ぶ時は揺れる?
台風中のフライトは、思いっきり揺れます。
どのくらい揺れるかと言えば、恐怖を感じるくらいには揺れます。場合によっては、悲鳴があがることもあります。
機長やCAは、「機体は揺れますが大丈夫です」とアナウンスするでしょうが、やっぱり怖いですよね。
台風の上を飛ぶ時よりも、離着陸の時の方が影響が大きいです。「本当に飛ぶの?」「着陸できるの?」と心配になることでしょう。
実際には、上記に書いたように、台風による事故はほとんど起きていませんので、ご安心ください。
それでも、小さなお子様がいる場合は、吐いたり、パニックになったりすることがありますので、避けたほうがいいかもしれません。
台風中の機内について、YouTubeに多くの動画が投稿されていますので、いくつかご紹介します。
【ゆれ過ぎ!】台風19号 激しく揺れる飛行機内の臨場感あふれる映像
【恐怖】台風フライト!飛行機が暴風の中を飛ぶとどれくらい揺れる?【東京羽田→沖縄那覇空港】
飛行機は台風の上を飛べるのに、欠航する理由
台風で飛行機が欠航する理由、台風と空港の関係、台風で欠航する確率についてご説明します。
台風の上を飛べるのに、なぜ欠航するの?
飛行機が欠航するかどうかは、総合的に判断されます。台風だからといって、自動的に欠航となる訳ではありません。
また、飛行機は台風の上を飛ぶことができますが、以下のような理由で欠航となることがあります。
空港の近くに台風がある
飛行ルート上に台風がある場合は、それを迂回して飛んだり、上空を飛んだりすることができます。
問題は、離発着の空港近くで暴風が吹き荒れている場合です。
- 視界が不良
- 滑走路や施設に損傷がある
- 横風が強い
等の影響で欠航が決まることがあります。
これらは、台風の進路予想と、離着陸の時間から判断されます。
台風を避けることが難しい
台風は積乱雲が集まって発生しますが、台風と呼ばれる範囲の外にも、積乱雲や乱気流は発生しています。
ルート的にそれを避けることが可能だとしても、あまりにも遠回りなる場合は、欠航となることがあります。
極端な話、台風の進行ルートとは逆方向に、地球を一周すれば目的地にたどり着くことはできますが、そうする人はいないでしょう。
運行予定の連鎖反応
一つのフライトが遅延や欠航をすると、その後の予定が次々に欠航となることがあります。
そのため、自分が利用する空港に台風が来ていなかったとしても、間接的に影響を受ける可能性があります。
乗客と乗務員の安全のため
航空会社は、乗客と乗務員の安全を最優先に考えます。
技術的には可能かもしれないが、リスクがあると判断された場合は、欠航や遅延となる可能性があります。
快適なフライトのため
安全に飛べることと、快適に飛べることは違います。
状況にもよりますが、機体に問題がないとしても、かなりの揺れが生じることがあります。機体が揺れると、乗客はかなりの不安や恐怖を感じますし、トラウマとなり、もう飛行機には乗らないと思ってしまうかもしれません。
技術的に可能でも、快適なサービスという観点から、運航を見送る場合もあります。
飛行機はどれくらい強い台風で欠航するの?
飛行機が欠航するかどうかは、台風の強さではなく、空港周辺の状況によるところが大きいです。
具体的には、以下のような点が考慮されます。
- 空港周辺の天候
- 滑走路の状態
- 燃料・荷物の搭載は安全に可能か
- 搭乗・降機は安全に可能か
- 駐機中の機体は安全か
- 風向き・風速
風速について、明確なラインが決められている訳ではありませんが、風速10m/sを超えると要注意となります。風速10m/sというのは、気象庁によると、「やや強い風」で、「風に向かって歩きにくくなる」「傘がさせない」程度とされています。
風向きは、向かい風は問題とならず、追い風や横風が一定以上の場合に、離着陸が禁止となります。
空港によって、滑走路の角度が違うので、風向きの角度も変わります。そのため、ある空港ではOKで、別の空港ではNGとなる場合があります。また空港によっては、角度の違う滑走路が用意されているので、特定の滑走路だけはOKとなる場合もあります。
沖縄の飛行機が台風で欠航する確率はどれくらい?
台風シーズンに沖縄に行く場合、飛行機が台風で欠航しないかどうかが気になるところです。
まず日本全体で、飛行機がどの程度欠航したかは、国土交通省が公開しています。
こちらによると、7月~9月の全国平均は1~2%となっています。ただしこれは、航空事業者別の集計であり、空港別ではありません。
那覇空港に限定した場合は、7月~9月の欠航率は4%程度とされています。意外と少ないと感じるのではないでしょうか。
しかし4%というのは、30日の約1日、24時間の約1時間に相当します。そう考えると、やはり欠航に該当してしまう可能性は、そこそこあると言えそうです。
まとめ 飛行機は台風の上を飛べるのか
記事の内容をまとめます。
- 商用の旅客機は、台風の上を飛ぶことができる
- 飛行機の高度は9,000~12,000メートル
- 台風の強風領域は、地上から8,000メートル
- 台風が原因で飛行機が事故を起こした例は、ほとんどない
- 台風が接近している中でのフライトは、かなり揺れる
- 飛行機が欠航するかどうかは総合的な決められ、特に空港周辺の状況による
- 風速10m/sを超えると、欠航する可能性がでてくる
- 欠航するかどうかは風向きにもよるので、滑走路の角度により違いが出てくる
- 台風シーズンに、天候が原因で欠航する確率は全国平均で1~2%。那覇空港では4%