モバイルバッテリーは、機内への持ち込みは可能ですが、預け入れ荷物としては禁止されています。もし預けてしまった場合は、すぐに係員に相談してください。ここでは、預けてしまった場合の対処方法、見つかったらどうなるのか、そもそもなぜ禁止されているのかについて、分かりやすく簡単にご説明します。
モバイルバッテリーを飛行機に預けてしまった!どうしたらいい?
![手荷物検査](https://gacha-nikki.com/wp-content/uploads/2023/05/airport_security.png)
航空会社に連絡する
すぐに航空会社のカウンターに行き、モバイルバッテリーを荷物として預けてしまったことを申告してください。「引き換え番号」を聞かれるはずですので、答えられるように準備しておきましょう。
後は、航空会社の方が何とかしてくれますので、指示を待ちましょう。荷物がどこまで運ばれたかによって対応が変わってきます。
機内に持ち込みできるの?
国内線のJALとANAはほぼ同じ条件です。本体内蔵電池は、160Wh以下であれば機内持ち込みも、預けることも可能。モバイルバッテリーは、100Wh以下であれば個数制限なし、100Whから160Whは2個まで可、それ以上は機内持ち込みも不可ということになります。
種類 | ワット時定格量(Wh) | 機内持ち込み | お預け |
---|---|---|---|
本体に内蔵されている電池 | 160Wh以下 | ○ | ○ |
本体に内蔵されている電池 | 160Whを超えるもの | ✕ | ✕ |
予備電池・モバイルバッテリー等 | 100Wh以下 | ○ 何個でも可 | ✕ |
予備電池・モバイルバッテリー等 | 100Whを超え、160Wh以下 | ○ 2個まで可 | ✕ |
予備電池・モバイルバッテリー等 | 160Whを超えるもの | ✕ | ✕ |
制限のあるお手荷物(JAL)
機内持ち込み・お預かりに条件があるもの(ANA)
ワット時定格量(Wh)って何?
「ワット時定格量(Wh)」は、1時間に消費するエネルギーの量を表す単位です。「1Wh」は1時間に1ワットのエネルギーを消費することを意味します。100Whのモバイルバッテリーは、1ワットのエネルギーを100時間、または100ワットのエネルギーを1時間供給できるという意味です。
問題は、日本で販売されるモバイルバッテリーの多くは「Wh」ではなく「mAh」で記載されていることが多いということです。計算式としては、以下のようになります。
ワット時定格量(Wh)=定格定量(Ah)×定格電圧(V)
1,000mAh=1Ah
現在販売されているモバイルバッテリーは「10,000mAh」程度であることが多いです。定格電圧は「3.7V」です。よって次のような計算となります。
(10,000mAh÷1,000)×3.7V=37Wh
37Whは100Wh以下なので、機内に持ち込めるということになります。160Whを超えるようなリチウムイオン電池は、キャンプ用や災害用の大型のもなので、いわゆるモバイルバッテリーであれば、ほぼ大丈夫です。
計算合っているのに没収されることがある!
逆に言えば
100Wh=27,027mAh
160Wh=43,243mAh
なので、それ以下の容量であれば機内に持ち込めるということなります。
そのはずなのですが……
「ワット時定格量」の表記がないとそれだけで断られたり、計算上OKのはずなのに駄目と言われることがあります。しかも担当者によって対応が違ったり……
文句を言っても覆ることはないので、運が悪かったと諦めるしかありません。トラブルを避けるためにも、可能であれば「ワット時定格量」が明記されているモバイルバッテリーを選ぶと良いでしょう。
国際線は?
国際線の場合も、細かなルールは各航空会社によりますが、国内線と同じで100Whと160Whで条件設定されていることが多いです。
注意が必要なのは「モバイルバッテリー(mobile battery )」は和製英語だということです。ネイティブには通じない可能性があります。英語では「パワーバンク(power bank)」「ポータブルチャージャー(portable charger)」と呼ぶのが一般的です。
モバイルバッテリーを飛行機に預けてしまった!どうなるの?
![モバイルバッテリー](https://gacha-nikki.com/wp-content/uploads/2023/05/power_bank.png)
X線で発見される
飛行機の預け入れ荷物は、X線などのスクリーニング検査にかけられます。もし誤ってモバイルバッテリーを預けてしまった場合は、基本的にここで発見されます。
まれに、チェックをすり抜けてしまうことがあります。検査方法の違いにより、ある空港では指摘されなかったが、別の空港では指摘されたということもあります。
呼び出される
モバイルバッテリーが見つかった場合は、館内放送で呼び出しがかかります。
「○○様。お荷物について確認したことがございます。至急✕✕までお越しください」
という感じです。
とても気まずいですし、遅延の原因となり、多くの人に迷惑をかけてしまいます。
時間的に間に合わない場合は、搭乗できないこともありますのでご注意ください。
荷物を勝手に開けられる
特に国際線の場合は、呼び出されることもなく、勝手に荷物を開けられることがあります。スーツケースに鍵をかけていても破壊されます。そもそもアメリカは、荷物に鍵をかけることを禁止しています。多くの人命を守るためですので、やむを得ません。
仮にモバイルバッテリーが入っていなかったとしても、その疑いがあるというだけで、確認のために開けられます。これも諦めるしかありません。
処分される
預かり荷物の中からモバイルバッテリーが見つかった場合は、断りなく没収・破棄されます。戻ってこないと考えたほうがよいでしょう。モバイルバッテリーは旅先では必需品ですので、なかなか困ったことになります。
見逃される
もちろん、必ず発見される訳ではなく、あらゆる検査をすり抜けてしまうこともあります。
それは、運が良かったというべきか、悪かったというべきか……
事故が起きる
一番最悪なパターンが、モバイルバッテリーを見過ごしてしまったために、出火してしまうということです。もちろん必ず出火する訳ではありませんが、可能性はゼロではありません。実際に出火した事故は起こっています。それを防ぐために、預け入れ荷物としては禁止されています。
モバイルバッテリーを飛行機に預けてしまった!何でダメなの?
![機内持ち込み](https://gacha-nikki.com/wp-content/uploads/2023/05/airplane_luggage.png)
リチウムイオン電池が発火するから
正確に言うと、飛行機への持ち込みが制限されているのは、モバイルバッテリーではなく、リチウムイオン電池です。リチウムイオン電池は劣化や衝撃による破損、加熱などにより発火する可能性があるので、安全のために荷物として預けることが禁止されているのです。
それならば、手荷物としての持ち込みも駄目なのではないかと思うかもしれません。航空会社としては禁止したいのでしょうが、リチウムイオン電池は日用品の中で多く使われているため、全面禁止するのは現実的でありません。手荷物であれば、問題が発生した際、すぐに乗務員が対処できるということで許可がされていると思われます。
リチウムイオン電池が発火する原因
リチウムイオン電池が発火するほとんどの原因は「ショート」です。
リチウムイオン電池の内部は、正極と負極を分ける絶縁体で仕切られています。この絶縁体が、衝撃・圧力・劣化・過充電・過放電・製造上の欠陥などの理由で破損すると、正極と負極が直接触れ、電流が流れ、ショートします。
ショートすると、リチウムイオン電池内部で熱が発生します。この熱がさらに反応を加速させ、反応により熱が生まれ……というサイクルが生まれます。これを熱暴走と言います。
熱暴走によりリチウムイオン電池の温度がどんどん高くなっていくと、ケース内部の圧力が高まり、膨らみます。そして圧力が限界を超えるとケースが破裂します。ケースが破裂すると、内部の化学物質が外部の酸素と触れ、発火します。
これがリチウムイオン電池が発火する仕組みです。ケースに強い圧力が加わると発火の原因となりますので、鞄に雑に詰めるのではなく、適切な保護を求められることもあります。
実際に飛行機内でリチウムイオン電池が発火したことあるの?
リチウムイオン電池が発火するというのは大げさに言っているのではなく、実際に飛行機内で何度も発生しています。
いくつかご紹介します。
2010年 | UPS航空 | ドバイからドイツ | 貨物にあった大量のリチウムイオン電池が発火し、火災により墜落。リチウムイオン電池を規制する流れとなった。 |
2013年 | JAL、ANA、他 | 駐機中 | 貨物ではないが、ボーイング787に搭載されていたリチウムイオン電池が発火。調査のために世界中で同型機が運行停止となった。 |
2016年 | Samsungのスマートフォン「Galaxy Note 7」が発売直後から発火する事故が多発し、航空機への持ち込みが全面禁止となった。 | ||
2017年 | 春秋航空 | ハルビンから名古屋 | 乗客が手荷物として機内に持ち込んだモバイルバッテリーが発火。乗務員がすぐに消化したが、安全のために緊急着陸した。 |
このように実際に大きな事故につながっていますので、モバイルバッテリーは安全に使うようにしましょう。
まとめ モバイルバッテリーを飛行機に預けてしまった場合の対処方法
モバイルバッテリーは、飛行機の荷物として預けることはできません。誤って預けてしまった場合は、すぐに航空会社のスタッフに相談し、指示に従ってください。
手荷物として機内に持ち込む場合は、ワット時定格量(Wh)が、
- 100Wh以下 個数制限なし
- 100Wh~160Wh 2個まで
- 160Wh以上 持ち込み不可
となっていることが多いです。詳細は各航空会社に確認してください。
モバイルバッテリーが発火する原因は、内部の絶縁体が破損して、ショートするためです。強い衝撃や圧力が加わらないように、安全な使用を心がけましょう。