パネライはデカ厚時計ブームを牽引したブランドである一方、合わせるのが難しい時計とも言われています。この記事では、パネライの概要と魅力、モデルごとの違いについて解説し、そこから似合う人のタイプ、似合うファッションスタイルについてご紹介しています。
ポイント
- パネライの概要と特徴
- パネライの代表的モデル
- パネライが似合う人
- パネライが似合うファッションスタイル
似合う人を選ぶパネライってどんなブランド?
パネライの概要と、デザインの特徴、代表モデルと関連項目についてご紹介します。
パネライとは
「パネライ(Panerai)」は、イタリアの高級時計ブランドです。正確には「オフィチーネ・パネライ(Officine Panerai)」と言います。「オフィチーネ」とは「工房」という意味です。「パネライ」は創業者の名前です。日本語にすると「パネライ工房」と言ったところでしょうか。
パネライは、1860年に「ジョヴァンニ・パネライ(Giovanni Panerai)」によって、イタリアのフィレンツェで創業されました。当初は時計のみを扱っていましたが、後に精密機器や光学機器を手掛けるようになりました。
パネライは、イタリア海軍の潜水員用の時計を製造していたことで知られており、高い防水性能と暗闇での視認性が特徴です。
現在はスイスのリシュモングループに属しています。
パネライはどこの国? イタリアとスイスどっちなの?
パネライはイタリアで創業していますので、イタリアの時計ブランドとして認識されていますが、実際のところ、製造と経営はスイスに根ざしています。
パネライは1997年にスイスのリシュモングループに買収されて以降は、スイスで時計を製造しています。このため、精度と品質が保証された、スイス時計の一部としても見なされています。
デザインはイタリアで、品質はスイスというのが一般的な見方です。
パネライの特徴は?何がすごいの?
パネライの魅力は、実用的な理由からできあがったデザインに、イタリアらしい美しさが感じられるところです。
イタリア海軍お墨付き
パネライは、第二次世界大戦当時、イタリア海軍向けのダイバーズウォッチを制作していました。これらは軍事用品であったため、一般的に販売することは禁止されており、その存在もほとんど知られていませんでした。
一般市場向けに販売されるようになったのは、1993年以降です。これには、東西冷戦が終了したために軍需需要が減ったということと、イタリアの軍事機密指定が解除されたことが理由のようです。
軍用品としての絶対的な信頼性と、無骨なデザイン、そしてその中にも漂うイタリアらしい気品が、瞬く間に人気となりました。
デカ厚デザインの火付け役
1990年代後半、時計業界ではデカ厚ケースがブームとなりました。そのきっかけとなったのがパネライと言われています。
デカ厚時計とは、ケースの直径が大きく、かつ分厚い時計のことです。見た目のインパクトでは直径の方が重要で、40mmを超えるとデカいと呼ばれるようになってきます。
特に、リシュモン配下になった後に販売された44mmのケースは、時計業界全体に大きな影響を与えました。44mmとなると、手首全体を覆うくらいとなり、とても目立ちます。普通の時計は25~35mmくらいなので、それより1cm以上大きいことになります。この強烈なデザインが、現在までも続くデカ厚時計の先駆けとなりました。
パネライのデカ厚ケースは、ファッションとして作成していた訳ではなく、軍用時計としての実用的な理由があったわけですが、現在ではそれがブランドを象徴するデザインとなっています。
ごついリューズプロテクター
パネライは、でかいケースも目を引きますが、さらに存在感を示すのがリューズプロテクターです。
イタリア海軍に最初に納めたモデルにはついていませんでしたが、海軍とともに改良を重ね、レバーロック式の大きなリューズプロテクターが完成しました。
これにより、リューズを衝撃から保護するとともに、防水性を向上させています。
水中でも見える発光塗料
パネライのもう一つの特徴が発光塗料(夜光塗料、蓄光塗料)です。
パネライは、イタリアの特殊潜水部隊用の時計を作成していたので、暗い海中でも見える文字盤が必要でした。
最初は、ラジウムを原料とした発光塗料を開発し、1916年に「ラジオミール」の名で特許登録しました。しかし後に、放射性物質であるラジウムの健康リスクが認識されます。
次に開発されたのが、1949年に特許登録された「ルミノール」です。ルミノールは放射性があるトリチウムを含みますが、より安全性が高いと考えられました。
現在では、放射性物質を含まない「スーパールミノバ」が使用されています。
丸みを帯びたフォント
パネライは、丸みを帯びた数字のフォントも特徴です。これは視認性が良いということもありますが、それ以上に実用的な理由から来ているデザインです。
最初は、一枚のプレートに数字を彫り、そこに発光塗料を塗り込んでいました。しかしこの方法では、時間とともに塗料が劣化し、剥がれ落ちてしまいます。軍用時計としては、ミッションの失敗につながる、致命的な問題となります。また、数字がぼやけて見えてしまったり、光が発散しすぎて敵に見つかりやすいという問題もありました。
その後、より耐久性と視認性を上げた三層からなるサンドイッチ構造が開発されました。一番下の層には、塗料を塗ったプレートを置きます。その上に、透明なガラスプレートを置きます。一番上には、数字部分をくり抜いたプレートを置きます。これにより、塗料が剥がれることなく、保護されるようになりました。また、数字がよりクリアに見え、必要以上に光らなくもなりました。
つまり、丸みを帯びたフォントは、プレートをくり抜いたためにそうなっているのです。また「6」と「9」の円部分が繋がっていないことも特徴です。つなげると、その間が抜け落ちてしまうためです。
現在では、技術改良によりガラスプレートを除いた二層構造のモデルが主流となっています。また、一層構造のモデルであっても、そのフォントデザインは引き継がれています。
パネライの代表的モデル
パネライのモデルには、大きく分けて「ラジオミール」と「ルミノール」の二種類があります。
簡単に言うと、ラジオミールにはリューズプロテクターがなく、ルミノールには大きなロック式リューズプロテクターがついています。またルミノールには、派生モデルが多くあります。
ラジオミール
「ラジオミール(RADIOMIR)」は、最初に開発された発光塗料の名であり、1930年代にイタリア海軍に納めていた初期のモデルがルーツとなっています。
リューズプロテクターはついておらず、よりシンプルなデザインとなっています。
ルミノール
「ルミノール(LUMINOR)」は、ラジオミールの次に開発された発光塗料の名であり、1950年代にイタリア海軍に納めていたモデルがルーツとなっています。
レバーロック式の大きなリューズプロテクターが特徴で、パネライを代表するデザインとなっています。特に秒針を備えた「ルミノール マリーナ」の人気が高いです。
ルミノール ドゥエ
「ドゥエ(due)」とは、イタリア語で「2」のことで、「ルミノール2」を意味します。
パネライと言えばデカ厚が特徴ですが、薄型ケースの、現代的でスタイリッシュなモデルとなっています。
サブマーシブル
「サブマーシブル(SUBMERSIBLE)」は、1956年にエジプト海軍向けに開発したモデルが基になっており、回転式のベゼルが特徴のダイバーズウォッチです。
元々はルミノールの一部でしたが、独立したコレクションとなりました。
8デイズの意味とは?
パネライの一部のモデルには「8デイズ」という名前がついています。「8デイズ」とは8日間、つまり192時間パワーリザーブがあることを意味します。イタリア語で「8 GIORNI」の表記が入っています。
一般的な機械式時計のパワーリザーブは2~3日なので、それよりもはるかに長い時間を持っていることになります。
これは、3つのバレルを持つことと、素材の工夫によって実現されています。
eSteelとは何?
「eSteel」とは、リサイクルベースの素材を使用した新合金のことです。また、全体としてリサイクル素材を使用した時計のモデル名でもあります。
パネライは軍用時計として始まりましたが、現在では環境保護活動にも注力しています。ダイバーズウォッチを制作していたという繋がりから、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)とパートナーシップを結び、海洋保護活動に向けた動きを強化しています。
パネライと関係の深いアノーニモとは?
「アノーニモは(Annonimo)」は、1997年にイタリアのフィレンツェで設立された時計ブランドです。
パネライは1860年にイタリアのフィレンツェで創業しましたが、1997年にリシュモングループに買収され、生産拠点がイタリアからスイスに移されました。
この時に一部の技術者がフィレンツェに残り、独立する形で立ち上げたのがアノーニモです。アノーニモとはイタリア語で「匿名」という意味で、ブランド名ではない品質に対するこだわりが感じられます。
ちなみにアノーニモも2013年に買収され、スイスに拠点が移されています。しかしそのフィレンツェらしい職人魂は健在であり、高い評価を得ています。
パネライが似合う人とは
パネライが似合う人の特徴と、似合うファッションスタイル、選ぶ際の注意点についてご紹介します。
パネライが似合う人の特徴
パネライは、特に日本人にとっては、着ける人を選ぶ時計と言われています。似合う人の特徴をご紹介します。
自信に満ち溢れた人
パネライは、シンプルなデザインながら存在感のある時計です。
それを身につけるのであれば、自分のスタイルを確立しており、目立つことを恐れず、堂々とした立ち振舞いの人が、より似合うでしょう。
体格の良い人
パネライはデカ厚が特徴なので、手首が細い人がつけると、アンバランスに見えてしまいます。
全体的にがっしりした体格の人のほうが、より似合うでしょう。
ルミノール ドゥエは、直径38mmと少し小型なので、手首が細い人はそちらも検討してみるとよいでしょう。
冒険心のある人
パネライは元々イタリア海軍の潜水士用に設計された時計なので、冒険的で、アクティブな活動を好む人に向いています。
まとめると、ちょっとワイルドで海の似合う、体格の良い男性に向いています。
パネライに合うファッションスタイル
パネライは、デニムにTシャツなど、シンプルなファッションスタイルに向いています。上着を羽織る場合も、薄手のジャケットなどがよいでしょう。
派手なファッションには、時計と個性がぶつかって、向いていないかもしれません。
また、スーツなどクラシックなスタイルに合わせるのは、上級者向けとなり難易度が高いかもしれません。
パネライはオワコン?
パネライを身につける時の注意点や、批判的な意見をご紹介します。
違いが分からない
パネライは、ほとんど同じデザインで、面白みがないという意見があります。
一目でパネライと分かる一方、モデルごとの違いが少ないため、個性を出しにくいです。
スーツに合わない
パネライの大きなケースはスーツに合わせにくいという意見が多くあります。
そもそもスーツにはブリティッシュ・イタリアン・アメリカンの3つの主流なスタイルがあります。当然パネライが似合うのはイタリアンスタイルとなります。
しかし日本のスーツ文化はこの3つが混在しており、体型の違いもあるので、なかなか統一感を出すのが難しくなっています。
時計以前の問題として、スーツスタイルを考える方が先となるでしょう。
デカすぎてダサい
パネライはデカすぎてダサいという意見があります。
それが刺激的ということで、90年代後半から2000年代にかけて大流行した訳ですが、今更パネライは流行遅れという訳です。
しかしそもそも、流行を気にする人はパネライに向いていないでしょう。元々が無骨なミリタリーウォッチです。流行に左右されず、自分をしっかりと持った人向けの時計と言えます。
パネライの特徴と、似合う人のまとめ
記事の内容をまとめます。
- パネライは、1860年にイタリアのフィレンツェで創業した時計ブランド
- パネライは、イタリア海軍向けのダイバーズウォッチを製造していた
- パネライは、1993年以降一般向けの販売を始め、人気となった
- パネライは、1997年にリシュモングループの配下となり、スイスに移転した
- パネライの特徴は、デカ厚ケース、大きなリューズプロテクター、発光塗料、二重の文字盤
- パネライの代表モデルは、ラジオミールとルミノールで、特にルミノール マリーナの人気が高い
- パネライは、体格が良く、アクティブなタイプに向いている
- パネライは、シンプルなファッションスタイルに向いている