ワインを楽しむならば、周辺のアイテムにも気を配りたいものです。ワイングラスは当然として、コースターについてはいかがでしょうか。レストランやバーでの体験を思い出してみると、ワイングラスにコースターは、ついていたり、いなかったりするかと思います。どちらが正しいのでしょうか。この記事では、コースターの目的と歴史について、詳しく解説します。
ポイント
- ワイングラスとコースターの関係について
- 目的に合わせてコースターを使おう
- コースターって実は「滑らせる」もの?
- コースターの素材と特徴
ワイングラスとコースターの関係性
ワイングラスにコースターはマナー違反?
ワイングラスにコースターを使用するかどうかについて、特にルールやマナーは存在しません。
元々ワインは、自宅ではなく、レストランで飲むのが一般的でした。マナーということであれば、それは客側のマナーではなく、店側のマナーです。ワインを楽しんでもらうために、店はどうするべきか、という話です。
それぞれのお店によって事情は異なりますので、お店の判断で、コースターを使ったり、使わなかったりしています。それは、テーブルの素材や、テーブルクロスの有無、ワイングラスのデザイン、ワインの種類、提供温度、店舗の雰囲気、などによって総合的に決まります。
個人が自宅でワインを楽しむ場合も、コースターの目的を考え、必要に応じて使うようにするといでしょう。
ワイングラスにコースターが必要な理由
ワイングラスにコースターがいる理由として、以下のようなものがあります。
ワイングラスの転倒を防ぐ
テーブルの素材や、ワイングラスの重量バランスによっては、グラスが倒れやすくなってしまいます。滑りにくい素材のコースターを使用することで、安定感を高め、思わぬ事故を防ぐことができるようになります。
テーブルに傷や汚れがつくのを防ぐ
木製やガラス製のテーブルの場合、テーブルに傷や水滴のシミがついてしまうことがあります。コースターを使用することで、テーブルの表面を保護することができます。
また、テーブルにグラスを置いた時の音を和らげる効果もあります。
ワインではありませんが、熱い飲み物を置くときにも役立ちます。テーブルに熱いものを置くと、変色や変形したりすることがあります。コースターは熱が伝わるのを防ぎ、テーブルを保護します。
ワイングラスの水滴を吸収する
冷たい白ワインやロゼワインを提供する場合、グラスが結露し、水滴が落ちる場合があります。コースターを使用することで、テーブルが濡れてしまうことを防ぎます。
また水滴を吸収することで、ワインの温度を適切に保つ助けともなります。
装飾や広告
コースターを使用することで、店内のデザインに統一性をもたらしたり、店舗の宣伝として利用することができます。
一部の店舗では、コースターをプレゼントしたり、販売したりしています。
ワイングラスにコースターが不要な理由
ワイングラスにコースターがいらない理由として、以下のようなものがあります。
ワインが主役
ワインの魅力を最大限引き立てるために、余計なものはできるだけ省くという考えがあります。
コースターがあることで、見た目上邪魔になりますし、素材によっては香りに影響を与えるかもしれません。ワイン以外の余計なアイテムは置かないようにします。
ワイングラスのデザイン
ワイングラスは、ワインを楽しむために設計者が熟考し、独特の形となっています。水滴・温度・安定性などは、コースターがなくても、問題がないようにデザインされています。
また、ワイングラス自体の美しさのため、余計なものは置かない方がいいという考えもあります。グラスの透明性や輝きの美しさが完成されているので、コースターは邪魔になるという意見です。
テーブルクロスを使用している
高級レストランでは、テーブルクロスが使われていることが一般的です。テーブルを傷や水滴から防ぐ、安定性を高め転倒を防ぐ、などの目的はテーブルクロスによって果たされているので、追加でコースターは必要ありません。
ワインボトルのコースターもある
ワイングラスではなく、ワインのボトル用のコースターもあります。
白ワインやスパークリングワインを冷えた状態で出すと、ボトルに大量の水滴がつきます。また、水滴以外にも、ワインをグラスに注いだ後に、液が垂れてしまうことがあります。これらの水滴や液垂れを受け止めるための器として、ワインボトルコースターが存在します。
歴史的には、ワインはもともと「澱」を除去するために、別の容器に移し替えて食卓に提供されることが一般的でした。ボトルごと食卓に出されるようになったのは、細菌学が発達し、澱の心配をする必要がなくなった、19世紀以降と言われています。またこの時期に、製氷機も普及し始めたため、ワインを冷やして提供できるようになり、結露の問題も出てきました。
ボトル用のコースターは、そのために広まったと考えられています。
ワイングラスのコースターの由来
コースターの語源と歴史
「コースター」は、英語の「coaster」から来ています。これは「ローラーコースター(roller coaster)」や「ジェットコースター(和製英語)」と同じです。
グラス用のコースターは「滑らせない」ためのものなのに、ローラーコースターは「滑らせる」ものです。なにか変だと思いませんか?
実は、グラス用のコースターも、元々は「滑らせる」ものだったという説があります。
「coaster」は「coast」から来ています。「coast」の語源は、「側面」や「斜面」という意味で、後に「沿岸」を意味するようになりました。さらに派生して「海岸線を進む船」となり、「境界に沿って進むもの」も指すようになりました。
グラス用のコースターの起源は、ドイツにあるという説があります。ビールを飲むジョッキ(マグ)は、元々木製で、底面が平らではなく、テーブルに置いた時に安定しませんでした。そこで、トレイの上にのせて安定させるようにしました。
そして、そのトレイにのせたジョッキを、テーブルを滑らせて提供したので、「コースター(coaster)」と呼ばれるようになりました。西部劇でよくある、「俺のおごりだ、飲みな!」というやつですね。
ですから、元々は滑らせるためだったコースターが、滑らないようにと目的が変わり、素材も変化してきたということです。ただしこれは、一つの説でしかないので、ご注意ください。
コースターの種類とその特徴
コースターは、その素材やデザイン、使用目的により、さまざまな種類が存在します。ここでは、主なコースターの種類とその特徴についてご紹介します。
紙製コースター
紙製の特徴は、吸水性がそれなりにあることと、使い捨てできることです。洗ったり、乾燥させたりという手間がないので、気軽に使うことができます。
木製コースター
木製のコースターは、その自然な風合いが特徴です。吸水性や耐久性は、防水加工されているかどうかによって異なります。基本的にはデザイン重視となるでしょう。
コルク製コースター
コルク製のコースターは、吸水性に優れていて、安価です。ワインとの相性も良いです。耐久性には乏しいため、半使い捨てになるでしょう。
ガラス製コースター
ガラス製のコースターは、その透明感と洗練された美しさが特徴です。また、耐久性があり、簡単に洗うことができます。しかし、ガラスは割れやすい素材なので、取り扱いには注意が必要です。ワインには向いていないと思われます。
金属製コースター
金属製のコースターは、その堅牢さとモダンなデザインが特徴です。ステンレススチールや真鍮、銅など、様々な種類の金属が使用されます。金属製コースターは、耐久性があり、長期間使用することができます。また、金属は熱伝導性が高いため、熱い飲み物を置く際にも適しています。
シリコン製コースター
シリコン製のコースターは、その柔軟性と色彩豊かなデザインが特徴です。シリコンは耐熱性と耐水性があり、簡単に洗うことができます。また、滑りにくい素材なので、グラスが安定して置けます。シリコン製コースターは、その機能性とデザイン性から、現代の生活スタイルに適しています。
日本のコースター:茶托
コースターは、主に西洋で使用されるグラスやカップを置くための敷物です。
日本でコースターに該当するものに茶托(ちゃたく)があります。茶托は、お茶を飲むための湯呑や茶碗を置くためのものです。コースターよりも、紅茶やコーヒーカップの「ソーサー」に近いでしょう。
茶托の素材は陶磁器や木製のものが多いです。
茶托は、茶道の文化と深く結びついています。茶碗にはティーカップのように持ち手がないため、提供する時に、口の部分を手で触れないように、茶托にのせて運ぶ、と言われています。
しかし元々は、磁器の熱伝導率が高く、茶碗が熱くて手で持つことができなかった、という現実的な理由のようです。
冷たいものを置くためのコースターと、熱いものを置くための茶托という、発祥の違いがあります。
まとめ ワイングラスとコースターの関係について
記事の内容をまとめます。
- ワイングラスにコースターを使用するかは、店舗や個人の判断により、決まったルールやマナーはない
- ワイングラスのコースターはテーブルの保護やグラスの安定性向上に寄与する
- ワイングラスのデザインはコースターなしでも問題ないように考慮されている
- 高級レストランではテーブルクロスがコースターの役割を果たすことが多い
- ワインボトル用のコースターも存在し、結露や液垂れを防ぐ
- コースターはもともと、滑らせるためのものだった
- コースターには様々な素材があり、目的に応じて選ぶ