ワインのボトルを開ける際、コルクが中に入ってしまったことはありませんか?この記事では、ワインのコルクが中に入った際の対処法、そのまま飲むことの安全性について解説します。また、コルクの素材や歴史、ワインとコルクの関係など、ワインを楽しむ上での役に立つ情報も提供しています。
ポイント
- コルクの素材や産地、ワインの関係と歴史
- コルクがワインの中に入る原因と対処法
- コルクの劣化とワインの品質
- コルクが中に入ったワインをそのまま飲むことの安全性
ワインの中にコルクが入った!そのまま飲んでも大丈夫?
コルクとは何か、コルクの歴史、コルクが原因で異臭がするブショネ、コルクが折れたり中に入ってしまったりした場合の対応について解説します。
コルクとは?
コルクとは、「コルクガシ(コルクオーク、Quercus suber)」という樹木の、外側の樹皮から作られる天然素材です。
コルクは繊維質ではなく、中に空気が閉じ込められた無数の細胞から成っており、とても軽くて弾力性がありいます。また断熱性、吸音性、遮音性、耐水性、耐油性にも過ぎれており、様々な用途に幅広く利用されています。
コルクガシは生命力が強く、原木を伐採する必要はなく、剥がした樹皮はおよそ9年で再生します。コルクガシの寿命は200年とされているので、15~20回は採取できる計算となります。
コルクの主な産地はポルトガルで、世界の生産量の約半分を占めています。その他、南ヨーロッパや北アフリカで生産されています。
コルクの歴史は古く、2000年以上前の古代ギリシアの時代から使われていたとされています。
ワインのコルクの歴史
コルクには多くの使い道がありますが、その中で一番代表的なものはワインの栓でしょう。
ワインはもともと、カメで保管されており、後にオーク樽となりました。木の樽は空気を通すので、中のワインはすぐに酸化するし、気化してなくなってしまいます。ですから、ワインを長期熟成するという考えはありませんでした。
これが変わったのは16世紀に、ガラス瓶が使用されるようになってからです。ガラス自体は昔からありましたが、流通が発達した関係で、運びやすいガラス瓶が、ワインの保存容器として使われるようになったようです。
ガラス瓶は空気を通しませんが、蓋をどうするかが問題となります。そこでコルク栓が使われるようになりました。コルクは適度な柔軟性があり、水分を吸うと膨張して抜けなくなるので、蓋をするのに最適な素材となりました。
現在、ワインのコルク栓には、樹皮を円筒状にくり抜いただけの「天然コルク」、くり抜いた後の樹皮を細かく砕いて固めた「圧搾コルク」、天然樹皮以外の素材の「合成コルク」などがあります。
コルクが原因のブショネとは
コルクはワインの栓として、16~17世紀頃から使われていますが、ワインにとって完璧な素材なのかは、専門家の間でも意見が別れています。
コルクが原因でワインが劣化することがあり、これを「ブショネ(bouchonne)」といいます。ちなみにフランス語でコルク栓のこと「ブション(bouchon)」と言います。「ブショネ」は「コルク栓臭」という意味です。
ブショネは、コルクについた細菌と、消毒に用いられる塩素が反応し、TCA(トリクロロアニソール)という物質が発生することにより起こります。ブショネは極めて不快な香りがして、「カビの匂い」「湿ったダンボールの匂い」とよく言われます。
ソムリエがワインを開けた後に、コルク栓の香りを嗅いでいるのは、ブショネが起きていないかの確認をしているのです。
天然のコルクを使用している限りブショネを防ぐことはできず、2~5%程度の確率で発生すると言われています。100本のワインの中に数本あるということなので、まぁまぁ当たる確率はありますよね。
ですから最近は、プラスチック製の代替コルクや、アルミニウム製のスクリューキャップ等も使われてきています。これらが天然コルクと比べて、ワインの熟成と品質に影響するかどうかは、議論と研究が続いているところです。
未開封なのにコルクが浮いてる?
コルク栓を使ったワインは、その上からキャップシールがされていることが多いです。素材は、昔は蝋(ろう)が使われていましたが、現在はアルミやプラスチックのものもあります。
そのキャップシールが未開封なのに、コルクが浮き上がって、シールが盛り上がったり、割れたりしていることがあります。
これは、ワインの保存状態が良くなく、劣化している可能性が高いと言えます。温度変化により瓶内部の圧力が高まって、コルクが押し出されたのです。液漏れしていることも良くあります。
購入前に判断できるのであれば、買わない方が良いでしょう。購入後にコルクが浮いていることが分かった場合は、購入店に相談してみましょう。
開封してしまったのであれば、飲んでみて判断するしかありません。
コルクがボロボロになった!
天然コルクの寿命は30年と言われています。ですから30年以上前のワインは、コルクが劣化している可能性が高いです。
また、それほど時間が経っていなくても、乾燥や圧力などによってコルクがボロボロになっていることがあります。
こうなると、専門家であっても、無傷でコルクを抜くことは難しくなります。例え抜けたとしても、細かな破片がワインに落ちてしまい、そのまま飲むには抵抗がありますよね。
専用器具を使って慎重に抜くこともありますが、ガラスを切ってしまうことの方が多いです。
コルクが折れた!
また、コルクが途中で折れ、瓶の中に残ってしまうこともよくあります。
ここで2つの選択肢があります。コルクを抜くか、押し込むかです。
コルクを抜く際は、ソムリエナイフのスクリューを斜めに刺したり、専用器具を使ったりしますが、そもそもコルクが劣化しているため、上手くいかないことが多いです。
抜けない場合は、むしろ押し込んでしまいましょう。これは、ワインのプロも推奨している方法です。
コルクが中に入ったワインを飲んでも大丈夫?
そんなコルクが中に入ったワインを飲んでも平気でしょうか。
コルクが劣化しているということは、ワインも劣化している可能性が高いです。特に、ブショネであったり、コルクが浮いたりしているような場合は気になりますよね。
結論としては、ワインの風味の問題であり、健康上の問題はないとされています。例えコルク自体が口の中に入ったとしても、天然コルクは木の樹皮なので、少量であれば問題はありません。
ただ、口にするのはあまり気分の良いものではないので、破片は事前に取り除いた方がよいでしょう。
また劣化したワインは、料理などに使う方法があります。
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コーヒーフィルター
基本的に、瓶の中に入ったコルクを取り出すことは難しいです。
そこで、中途半端に残ったコルクは中に押し込んでしまい、コーヒーフィルターなどを使って濾過することが推奨されています。
ちなみに、年代物のワインには、コルク以前の問題として「澱」が沈殿しています。澱には渋みやえぐみがあります。コーヒーフィルターによって澱も取り除かれるので、ワインの味がよりクリアになるとされています。
茶こし
コーヒーフィルターがない場合は、茶こしを使う方法もあります。
ただし、茶こしはコーヒーフィルターより目が荒いので、細かな破片や澱は、取り除くことができない場合もあります。
デキャンタ
コーヒーフィルターや茶こしで濾過した後は、可能であればデキャンタに移し替えるようにしましょう。
デキャンタは、ワインの澱を取り除くことを目的としているので、コルクの破片に対しても有効です。
またデキャンタに移して提供すれば、見た目もよく、コルクを抜くのに失敗したとは思われないでしょう。
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コルクリフター・コルクキャッチャー
しかしどうしても、瓶の中に入ったコルクを取り出したい場合もあるでしょう。
実は「コルクリフター」「コルクキャッチャー」と呼ばれる、専用器具があります。UFOキャッチャーのように掴んで、瓶の外に引き抜くというものです。1,000円程度からあるので、日常的にワインを飲む方は、持っていてもいいのではないでしょうか。
ただし、ボトルのサイズや形状によっては合わないことがあったり、破片は取り除けないという問題はありますので、使い方は限定的となります。
ビニール紐
そんな専用器具は買いたくないという場合に、梱包用のビニール紐を使って引っ掛けるという方法があります。コルクリフターのアーム部分を、ビニール紐で代用するのです。
まず、ビニール紐を適当な長さで半分に折り、輪っかになった方を細かく割きます。割いた方から瓶の中に入れ、浮いているコルクに絡ませます。後は紐をゆっくり引き上げれば、瓶の外まで取り出すことができます。
ただし、ワインの中にビニール紐を沈めるのに抵抗がある方もいると思います。何かしらの理由があり、本当に取り除かなければいけない場合の、緊急手段と言えるでしょう。
ビニール袋
ビニール紐ではなく、ビニール袋を使ってコルクを抜く方法があると、聞いたことがあるかもしれません。
これは、ワインの中にコルクが入ってしまったので取り出したいという話ではなく、「空き瓶」の中に入っているコルクをどうやって外に出すかという、パズルのようなものです。
ビニール袋を瓶の中で膨らませて、その圧力でコルクを持ち上げるという方法です。
空き瓶の話なので、今回のテーマとは無関係です。空き瓶をゴミとして捨てるのに、分別する必要がある場合に、使えるかもしれません。
まとめ 結局コルクが中に入ったワインはそのまま飲んでも大丈夫?
記事の内容をまとめます。
- コルクは「コルクガシ」の外側の樹皮から作られる天然素材で、軽く、弾力性がある
- コルクには様々な用途があるが、ワインの栓が代表的
- ワインのコルク栓としては「天然コルク」「圧搾コルク」「合成コルク」などがある
- コルクが原因でワインが劣化することがあり、これを「ブショネ」という
- ブショネを避けるため、プラスチック製の代替コルクやアルミニウム製のスクリューキャップも使われている
- コルクは、経年劣化や、乾燥、圧力などによりボロボロになることがある
- コルクが劣化している場合は、ワインも劣化している可能性が高い
- コルクが中に入ったワインを飲んでも健康上の問題はないとされるが、見た目や風味の問題はある
- 中に入ったコルクはコーヒーフィルターや茶こしなどを使って濾過することが推奨される
- コルクリフターという、コルクを取り出す専用器具もある