ワインを楽しむ時に、一緒にチェイサーを出されたこともあると思います。一般にチェイサーは水のことですが、アルコールと一緒に飲む別の飲料全般のことがチェイサーなので、水とは限りません。しかし、なぜワインにチェイサーが必要なのでしょうか。その意味と効果は何でしょうか。この記事では、チェイサーの歴史、目的、おすすめのチェイサーなど、ワインとチェイサーの関係について詳しく解説します。
ポイント
- チェイサーとは何か
- チェイサーの効果と目的
- チェイサーの歴史
- ワインに合う、おすすめのチェイサー
ワインのチェイサーとは
チェイサーとは
チェイサーとは、ワインなどのアルコール飲料と一緒に出される「水」等の飲料のことです。
じゃあ「水」でいいんじゃないの、ということなのですが、チェイサーは「水」に限りません。「炭酸水」であったり「お茶」であったり「トマトジュース」であったりします。何なら「別のアルコール飲料」のこともあります。
メインのアルコール飲料の合間に飲む、別の飲料全般のことをチェイサーと言います。
なぜチェイサーを飲むのか
チェイサーを飲む理由は、主に三つあります。
アルコールの強さを和らげる
チェイサーの一番の目的は、アルコールの強さを和らげることです。特にアルコール度数の強い蒸留酒の場合は重要となります。
例えば、ウイスキーのアルコール度数は40度近くあります。これをそのまま飲むのがつらい場合は、水割りにするという手もありますが、そうすると折角のウイスキーの風味が薄れてしまいます。そこでウイスキーはストレートで飲みつつ、後からチェイサーを飲むことで、ウイスキー本来の風味を楽しみながら、アルコールを和らげることができます。
口の中のリセット
またチェイサーは、口の中に残っている、前のお酒の味や香り、アルコール感をリセットするという役割もあります。
特に、ワインなどの風味豊かなお酒は、続けて飲んでいると、感覚が薄れてくることがあります。チェイサーで口の中をリセットすることで、よりワインの風味を楽しむことができます。
水分補給
アルコール飲料のほとんどは水分ですが、利尿作用があるので、飲んだ以上に尿として排出してしまいます。
特にビールは、カリウムとの相乗効果で利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むと1.1リットルの水分を失うと言われています。
アルコールを飲めば飲むほど脱水症状になっていくので、チェイサーによって水分補給が必要となります。
なぜチェイサーと言うのか
「チェイサー」は英語の「Chaser」から来ており、「追いかける」を意味しています。つまり、アルコールを飲んだ後に、追いかけて飲むものが、チェイサーです。
チェイサーという言葉は、19世紀後半にアメリカで使われ始めたとされており、その後、他の国にも広まっていきました。
イギリスでは「back」ということの方が多いようです。ビールを「バック」にウイスキーを飲む、という感じです。
ちなみに、フランス語ではチェイサーに相当する言葉がないようです。食前に飲むシャンパンなどの「アペリティフ(apéritif)」、食後に飲むブランデーなどの「ディジェスティフ(digestif)」という概念はありますが、アルコールと交互に飲む別の飲料という概念・習慣はなかったようです。
そもそもワインが水代わりでは?
上記のように、ワインにはチェイサーという文化はありませんでしたが、それは当然と言えます。
中世ヨーロッパでは、「水」をそのまま飲むことができなかったので、代わりに保存の効く「ワイン」「エール(ビール)」「シードル(リンゴ酒)」などのアルコールを飲んでいました。ですから、ワインと一緒に水を飲むということは、あり得なかったのです。
チェイサーが登場したのは、飲料水が確保できるようになった後となります。フランスのパリで上水道が整備されたのは19世紀後半とされています。アメリカでチェイサーという言葉が登場したのもその頃なので、世界で水が安心して飲めるようになったのは、ごく最近ということになります。
だからといって、ワインにチェイサーは不要ということにはなりません。日本人の約45%は、遺伝的にアルコール(正確にはアセトアルデヒド)を分解する酵素の力が弱いことが知られています。つまり約半数は「お酒に弱い」のです。ですから、チェイサーは積極的に飲むべきでしょう。また酒の強さに関わらず、チェイサーにはワインの風味を引き立てる効果もあります。
チェイサーの日本語は?
チェイサーは、日本でもチェイサーと言うのが一般的です。まず間違いなく「水」を指しており、炭酸水や別のアルコール飲料が出てくることは稀でしょう。心配であれば、わざわざチェイサーと言わずに、「水」と注文した方が無難です。
日本酒の世界では、チェイサーとほぼ同じ概念として、「和らぎ水(やわらぎみず)」というものが存在します。「水」とある通り、ただの「水」です。チェイサーと同じように、日本酒の横に置いておき、ときどき飲むものです。ただの水ではなく、日本酒を作る時に使う「仕込み水」を「和らぎ水」として提供しているところもあります。
おすすめのワインのチェイサー
ワインに合う水はある?
ワインと一緒に飲むならば、なるべく無味無臭で、ワインの風味を邪魔しない水がおすすめです。
一般的には、硬度が低く、ミネラル含有量の少ない軟水がいいでしょう。硬度が高い硬水は、ミネラル感が強く、ワインの風味を邪魔する可能性があります。
硬度とは、水1,000mlあたりに含まれるカルシウムとマグネシウムの量のことです。様々な分類方法がありますが、大まかには100mg/L以下を軟水、100~300mg/lを中硬水、300mg/L以上を硬水と呼んでいます。
ちなみに、ヨーロッパは硬水が多く、日本は軟水が多いです。日本のミネラルウォーターであれば、だいたい軟水となっていますが、一部例外もありますので、確認をするようにしましょう。
水と炭酸どちらがおすすめ?
水ではなく、炭酸水をチェイサーに選ぶ人もいるでしょう。どちらがいいかは、個人の好みでしかないので、好きな方を選びましょう。
一般的に水は、ワインの邪魔をしないので、ワインの風味そのものを楽しみたい人におすすめです。炭酸水は、口の中をさっぱりとさせるので、ワインの後味をクリアにさせる効果があります。
その他海外では、チェイサーとして「レモン水」「トマトジュース」「アルコール度数の低いビール」などが使われたりもしますが、それはテキーラやウイスキーを楽しむためのもので、ワインと一緒に飲むのは風味を邪魔してしまうので、おすすめはしません。
ワインにおけるチェイサーのまとめ
記事の内容をまとめます。
- チェイサーとは、アルコール飲料と一緒に出される水等の飲料のこと
- チェイサーは水に限らず、炭酸水、お茶、ジュース、別のアルコール飲料なども含む
- チェイサーの目的は、アルコールの強さを和らげること、口の中をリセットすること、水分補給をすることの3つ
- チェイサーの語源は英語のChaserで、「追うもの」という意味
- チェイサーは、19世紀後半にアメリカで生まれた概念で、世界中に広まった
- 日本でもチェイサーという言葉を使う
- 日本酒の世界には、チェイサーと同じ概念で「和らぎ水」というものがある
- もともとヨーロッパでは、水の代わりにワインを飲んでいたということもあり、チェイサーというものはなかった
- ワインと一緒にチェイサーを飲んではいけないということはなく、むしろ積極的に飲むべき
- ワインと一緒にチェイサーを飲むならば、硬度の低い軟水がおすすめ
- チェイサーという言葉には、レモン水やトマトジュースなども含まれるが、ワインのチェイサーとしては非推奨