ワインとブランデーには深い関連性があります。基本的にはブドウを発酵させたアルコール飲料がワインで、ワインを蒸留してアルコール度数を高めたものがブランデーです。また、長期間樽で熟成させることにより、その風味が大きく変わってきます。この記事では、ワインとブランデーの違いと、それぞれの楽しみ方について解説します。
ポイント
- ワインとブランデーの主要な製造過程とその違い
- ワインとブランデーの味の違いとそれぞれの特徴
- ブランデーと他の蒸留酒との違い
- ワインとブランデーのペアリングの基本ルールと例
ワインとブランデーの違いを理解する
ワインの作り方
ワインの作り方は、とてもシンプルで、基本的にはブドウを発酵させるだけです。赤ワイン・白ワイン・ロゼワイン・スパークリングワインによって製法は異なりますが、赤ワインの作り方が基本となっています。
赤ワインの作り方
ワインの製造は、ブドウの収穫から始まります。通常、年間で最も気温が高い時期、晩夏から初秋にかけて行わます。ブドウの種類や、栽培地域によっては、収穫時期が前後することもあります。
収穫した黒ブドウの果梗を取り除き、破砕して、果汁・果皮・種子が混ざった状態にします。
この状態でタンクに入れ、2週間ほどアルコール発酵させます。
アルコール発酵が進むと、「澱」と呼ばれる固形物が生成されるので、これを濾過して除去します。
濾過した液体を、オーク樽やステンレス樽に入れて熟成させます。熟成期間はワインの種類によって異なりますが、数ヶ月から数年ほどです。
最後に、瓶詰めをして完成です。
白ワインの作り方
基本的には、赤ワインは黒ブドウ、白ワインは白ブドウから作られます。一部、例外もあります。
赤ワインは果汁・果皮・種子を一緒にして発酵させますが、白ワインは果皮・種子を取り除き、果汁だけで発酵させます。だから白ワインには色がついていません。
その他、細かな製法の違いはありますが、基本的にはこれだけのことです。製法が単純なため「ワインの品質の8割は、ブドウによって決まる」と言われています。
ワインの種類と特徴
ワインの分類は、ブドウの品種や、産地、味などもありますが、製法で分けることが一般的です。
スティルワインは、非発泡性のワインのことで、いわゆる一般的なワインのことです。「赤ワイン」「白ワイン」「ロゼワイン」はスティルワインに分類されます。
スパークリングワインは、発泡性のワインのことです。代表的なスパークリングワインには「シャンパン(フランス)」「クレマン(フランス)」「フランチャコルタ(イタリア)」「カヴァ(スペイン)」「ゼクト(ドイツ)」などがあります。スパークリングワイン全般のことをシャンパンと呼ばれることもありますが、正しくは、シャンパンはフランスのシャンパーニュ地方で造られ、厳格な品質基準をクリアしたものだけを指します。
フォーティファイドワインは、酒精強化ワインとも呼ばれ、蒸留酒が加えられたものです。代表的なフォーティファイドワインとして「シェリー(スペイン)」「ポート(ポルトガル)」「マディラ(ポルトガル)」「マルサラ(イタリア)」「VDN(フランス)」「VDL(フランス)」などがあります。
フレーヴァードワインは、フルーツ・ハーブ・スパイスなどを加えたワインです。代表的なフレーヴァードワインとして「サングリア(柑橘系・ベリー系の果実)」「ヴェルモット(ハーブ)」「レツィーナ(マツの樹脂)」があります。
ブランデーの作り方
ブランデーは、簡単に言えば白ワインを蒸留したものです。ですから、途中までは白ワインの製法と同じです。
ブランデーの原料として、「ユニブラン」という品種の白ブドウが使われることが多いです。ユニブランは、酸味が強く、糖度が低いため、白ワインとして飲むには向いていないのですが、ブランデー作りには適しています。
ユニブランから造られた白ワインは、アルコール度数7%程度です。これを蒸留させることにより、アルコール度数70%程度まで高めます。蒸留とは、液体を加熱して気体にし、その気体を冷却して液体に戻す作業のことです。アルコールの沸点は約78℃、水の沸点は100℃なので、その差を利用して、アルコールを抽出していきます。この時点で、液体は無色透明です。
蒸留した液体を、オーク樽に戻し、熟成させます。熟成期間は、最低でも3年、長いものでは数十年に及びます。この作業により、無色から琥珀色に変化し、アルコール度数は40%程度となり、香りや口当たりはまろやかになります。
熟成されたブランデーは、そのまま使われるのではなく、様々な年数の樽からブレンドされます。この調合作業により、ブランデーのランクが決まります。
最後に、瓶詰めされて完成です。
ブランデーの種類と特徴
ブランデーはフランス産が有名で、特に「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」は、世界三大ブランデーと称されています。
コニャックは、フランスのコニャック地方で造られるブランデーで、主に白ブドウ「ユニブラン」が使われています。二段階の蒸留がされ、オーク樽で2年以上熟成されています。まろやかな口当たりが特徴で、「ヘネシー」「レミーマルタン」などの銘柄が定番ブランデーとして知られています。
アルマニャックは、フランスのアルマニャック地方で造られるブランデーで、コニャック同様「ユニブラン」が主に使われています。コニャックとは蒸留方式が異なり、連続式蒸留機で1回のみ行われます。鋭く、野性的な味わいが特徴です。
カルヴァドスは、フランスのノルマンディー地方で造られるブランデーです。ブドウではなく、リンゴを原料としています。芳醇な香りと、甘さが特徴です。
マールは、白ワインを作る時の「絞りカス」を蒸留して作るブランデーです。樽での熟成をしないために、透明で、香りの強いお酒です。同じ製法で、イタリア産のものはグラッパと呼ばれます。
ウイスキーとブランデーの違い
ウイスキーとブランデーは共に蒸留酒ですが、原料や製法が異なります。
ウイスキーは、大麦、ライ麦、小麦、トウモロコシなどの穀物を原料にしています。これらの穀物のデンプンを「糖化」した後に、発酵させてアルコール化し、蒸留します。その後、オーク樽などで長期間熟成させます。
ブランデーは、ブドウ、リンゴ、サクランボなどのフルーツを原料にしています。フルーツには糖分が多く含まれているため、「糖化」の工程が必要なく、そのまま発酵させることができます。その後蒸留させますが、樽での熟成をするかどうかは、製法によります。
ウイスキーはスモーキーな香りとコク、ブランデーはフルーティーな香りと甘さが特徴です。
コニャックとブランデーの違い
ブランデーとは、果実酒を蒸留して造られた蒸留酒全般のことです。ブドウが一番定番ですが、リンゴや桃などをつかたブランデーもあります。
コニャックとは、フランスのコニャック地方で造られたブランデーのことです。コニャックがブランデーの中では一番有名なため、しばしばブランデーとコニャックが混同されています。
コニャックは、産地だけでなく、製法にも細かな取り決めがあり、また熟成年数(コント)によって等級(ランク)が決められています。「V.S.(Very Special)」はコント2以上、「V.S.O.P.(Very Special Old Pale)」はコント4以上、「ナポレオン」はコント6以上、「X.O.(Extra Old)」はコント10以上です。
オードヴィとブランデーの違い
「ブランデー(brandy)」は英語で、果実酒から作った蒸留酒のことです。
「オードヴィ(eau de vie)」はフランス語で、蒸留酒のことです。蒸留酒なので、果実から作ったブランデーも、穀物から作ったウィスキーも、オードヴィに含まれます。ブランデーはワインの蒸留酒ということで「eau de vie de vin」となります。
フランス産のブランデーには、ラベルに英語で「brandy」ではなく、フランス語で「eau de vie」としか書かれていないことが多いので、注意しましょう。
焼酎とブランデーの違い
英語の「ブランデー(brandy)」の語源は、オランダ語の「brandewijn」で、「焼いたワイン」を意味するとされています。ブランデーは、簡単に言えばワインを熱して、蒸留したものです。
一方、日本の「焼酎」もまさに「焼いた酒」です。ブランデーの原料はフルーツですが、焼酎は芋、米、麦、黒糖などの穀物です。つまり焼酎はブランデーより、ウイスキーに近いでしょう。
ビールとウイスキーの違い
ビールとウイスキーの関係は、ワインとブランデーの関係に似ています。
もの凄く単純化して言えば、ブドウを発酵させるとワインとなり、ワインを蒸留するとブランデーとなります。同様に、麦芽を発酵させるとビールとなり、ビールを蒸留するとウイスキーとなります。
もちろん、ホップが加えられたり、樽で熟成させたりと、細かな工程は異なります。
ワインとブランデーの違いを楽しむ
白ワインとブランデーの味の違い
白ワインとブランデーは、両方とも白ブドウを原料としていますが、その味は異なります。
まず、味の前にアルコール度数が大きく違います。一般的に、ワインのアルコール度数が12~15%なのに対し、ブランデーは40~50%あります。お酒に慣れていない方は、ブランデーの高いアルコール度数で面くらい、味や香りを楽しむ余裕がありません。最初は、水割りやロックなどで、少しずつ飲むのがよいでしょう。
白ワインの味は、まず「シャルドネ」「リースリング」などのブドウの品種によって異なります。また、その糖分がどれだけアルコールに変わるかにより、甘口、辛口などと変わります。
ブランデーは、基本的には熟成期間が長い・等級が高いほど、上品でまろやかな味になるとされています。
また、ワインの香りは主にブドウ由来のものですが、ブランデーは樽で長期間熟成させるために、樽の香りも強くつきます。
ワインの飲み方
ワインは、基本的にはストレートでそのまま飲むものです。
美味しく飲むには、提供温度が重要とされています。一般的には、赤ワインは室温程度、白ワインは少し冷やして7~14℃程度がよいとされています。
また、香りを楽しむために、グラスも重要です。甘い白ワインは口が広いもの、渋い赤ワインは口がすぼまったものが良いとされています。
ワインにあった料理やおつまみを合わせることも、ワインの楽しみ方の一つです。これは「ペアリング」や「マリアージュ」と言われます。
最後に、ワインは空気に触れることで味や香りが変化します。デキャンタをしたり、ワイングラスを回したりするのはそのためです。その時間変化も楽しみましょう。
ブランデーの飲み方
ブランデーの魅力を最大限に楽しむならば、ストレートで飲むのがよいでしょう。15~20℃程度の室温で提供するのが基本です。50ミリリットル程度を、30分ほど時間をかけてゆっくり飲みます。合間にチェイサー(水・炭酸水)を飲むとよいでしょう。
ブランデーはアルコール度数が高いので、お酒に強くない方におすすめなのが水割りです。ブランデーと水を1対1で割る「トワイスアップ」が基本ですが、自分にあった割合にするのがよいでしょう。水は冷たいものではなく、常温のものを使用します。
ロックにすると、アルコールの揮発が抑えられるので、飲みやすくなるとされています。また、時間とともに変化していく楽しさもあります。
ワインとブランデーのペアリング
ペアリングとは、ワインと料理の相性の良い組み合わせのことです。最高のペアリングが見つかれば、それは「マリアージュ(結婚)」と呼ばれます。
ワインのペアリングとして、「肉料理には赤ワイン」「魚料理には白ワイン」というルールはよく知られています。その他のルールとして、「色の濃淡を合わせる」「産地を合わせる」「対照的なものを合わせる」などがあります。それらは基本ルールとして、自分にあった組み合わせを探すのがワインの楽しみ方の一つです。
ブランデーは、深い風味と、高いアルコール度数から、チョコレートなどの甘いデザートや、ブルーチーズなどと組み合わせることが一般的です。これらのペアリングは、それぞれの風味を引き立てる、相乗効果があると言われています。
ワインとブランデーを混ぜるとどうなる?
ワインとブランデーは原料が同じなので、混ぜたらいい感じになるのでは、と思うかもしれません。
実はそれを製造段階で行っているのが、シェリーやポートワイン等の酒精強化ワインです。一般的には、白ワインにブランデーを加えて作られます。
ワインとブランデーを両方使ったカクテルレシピは、あまりないようです。その場で混ぜるならば、すでに混ざっているシェリーやポートワインの方がよく使われています。
しかし、あまり美味しくないワインに、ブランデーを数滴加えることで、一気に美味しくなることがありますので、処分に困っているワインがあればお試しください。
まとめ ワインとブランデーの違いについて
記事の内容をまとめます。
- ワインはブドウから作られるアルコール飲料である
- ブランデーはワインを蒸留して作られる
- ブランデーはワインに比べてアルコール度数が高い
- ワインはフルーティな風味が特徴である
- ブランデーは樽で熟成されることにより、深みと複雑さが増す
- ワインはブランデーと比較して軽い口当たりである
- ブランデーはワインと比較して風味が強い