日本三大七味とは、東京の浅草寺前にある「やげん堀」、長野の善光寺前にある「八幡屋礒五郎」、京都の清水寺前にある「七味家本舗」が販売する七味唐辛子のことです。
「七味唐辛子(しちみとうがらし)」とは、日本の調味料の一種で、唐辛子を中心に七種類の香辛料が調合されたものです。一般に「七味(しちみ)」と省略されて言われることが多いですが、関東圏では「七色唐辛子(なないろとうがらし)」、「七色(なないろ)」と言われることもあります。
ここでは日本を代表する老舗の三大七味唐辛子について、概要と特徴を簡単にご説明します。
日本三大七味 やげん堀
やげん堀とは
「やげん堀(やげんぼり)」は、東京の浅草、浅草寺の門前で七味唐辛子を販売するお店です。法人名は「合資会社中島商店」です。その七味唐辛子は、日本三大七味の一つにあげられていますが、そもそも七味唐辛子を考案したのが「やげん堀」です。
創業は1625年(寛永2年)で、400年近い歴史があります。現在は十代目です。
徳川家光に七味唐辛子を献上したところ、たいそう気に入られ、徳川家の「徳」の字を賜り、「山徳」の紋が掲げられるようになりました。
やげん堀の由来
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まず「薬研(やげん)」とは、漢方薬などの薬種をひいて粉にする器具のことです。中央に窪みのある舟型の容器と、車輪状のすり器からなっています。
ここから、V字型に掘った「堀」のことを「薬研堀(やげんぼり)」と言うようになりました。これに対してU字型にの「堀」のことを「箱堀(はこぼり)」と言います。
また、かつて東京都の東日本橋に存在した運河、およびその周辺地域も「薬研堀」と呼ばれるようになりました。薬研堀は後に埋め立てられますが、医者や薬問屋が多く集まったため、医者町とも呼ばれるようになりました。そして「やげん堀」創業の地でもあります。
1943年(昭和18年)に、東日本橋から浅草に移りましたが、「やげん堀」の名は残りました。
やげん堀の七味唐辛子
七味唐辛子は、1625年に中島徳右衛門が開発し、販売を初めた「漢方薬」です。上記の通り「薬研堀」には医者や薬屋が多く集まっていたので、そこからアイデアを得たと考えられます。薬効がある上に美味しいということで、江戸で大変評判となり、徳川家光公にも献上されるようになりました。また持ち運びが容易であることから、江戸の土産としても人気で、全国に広がっていきました。日本の七味唐辛子の元祖です。
なお、七味(しちみ)ではなく、七色(なないろ)と呼ばれていました。
特徴
2種類の唐辛子が使われていて、ピリッとした辛さがあります。味のバランスがよく、どんな料理にも合いますが、その辛さからうどんに入れると味が締まります。
使われている七味の種類は、以下のとおりです。
- 唐辛子
- 焼唐辛子
- けしの実
- 麻の実
- 粉山椒
- 黒胡麻
- 陳皮
調合
やげん堀のもう一つの特徴は、客の目の前で調合してくれるということです。これは江戸時代から続く伝統で、現在も店頭でおこなわれています。
最初に「大辛」「中辛」「小辛」「辛抜き」を選び、そこから好みの香辛料を追加したり、抜いたりすることができます。
オンラインショップでは調合できないので、店頭ならではのサービスです。
やげん堀の店舗
新仲見世本店
住所 | 東京都台東区浅草1-28-3 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
メトロ店
住所 | 東京都台東区浅草1-32-13 |
営業時間 | 11:00~17:00 |
公式オンラインショップ
Amazon公式ショップ
やげん堀の屋台はない?
やげん堀の店舗は浅草の2店舗、公式オンラインショップ、Amazon公式ショップのみです。百貨店の催事に出店していることはあります。
屋台での出店はなく、売り口上も行っていないので、「やげん堀」を名乗っていたら偽物の可能性があります。スーパー等で見かけた場合は「中島商店」であることを確認しましょう。
日本三大七味 八幡屋礒五郎
八幡屋礒五郎とは
「八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)」は、長野県長野市にある、七味唐辛子の製造・販売をする会社です。その七味唐辛子は、日本三大七味の一つに挙げられています。本店は善光寺の門前にあり、取扱店は全国に多数あります。
創業は1736年(元文1年)とされ、300年近い歴史があります。現在は九代目です。
八幡屋礒五郎の由来
「八幡屋礒五郎」は、1736年に、室賀勘右衛門が善光寺の境内で七味唐辛子を販売したのが始まりとされています。善光寺には人が多く集まるため、商売をするには最適の場所でした。
源氏→清和源氏→室賀氏という流れがあり、源頼朝が八幡宮を崇拝していたことから「八幡」の名が来ています。また「礒五郎」は、商売上の名として名乗っていたようです。そこから「八幡屋礒五郎」が誕生しました。
八幡屋礒五郎の七味唐辛子
創業当初は、江戸から持ち帰った七味唐辛子を、善光寺境内で販売していたようです。その後、信州地方で採取できる原料を使用することで、江戸とは違う風味を持つ七味唐辛子が作られるようになりました。
特徴
生姜が含まれており、香りが良いことが特徴です。善光寺近くにあるということから、やはり「そば」によく合う七味です。長野でそば屋に入れば、まず間違いなく八幡屋礒五郎の七味が置かれています。
一般的に七味唐辛子はガラス瓶に入っていることが多いですが、ブリキ缶を使用していることも特徴です。このブリキ缶は、1924年(大正13年)に、当時の6代目が考案しました。
含まれる素材は以下のとおりです。
- 唐辛子(蕃椒、ばんしょう)
- 生姜(白薑、びゃくきょう)
- 紫蘇
- 山椒
- 陳皮
- 胡麻
- 麻種
調合
店頭で自由にブレンドできる他、飲食店向けに特注ブレンドの開発も行っています。
八幡屋礒五郎の店舗
長野県内に3店舗の他、カフェも運営しています。また、全国に取扱店が多数あります。
八幡屋礒五郎 本店
住所 | 長野県長野市大門町83 |
営業時間 | 9:00~18:30 |
MIDORI長野店
住所 | 長野県長野市南千歳1-22-6 駅ビルMIDORI長野店 2階 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
軽井沢店
住所 | 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1178 しなの鉄道軽井沢駅 3階 |
営業時間 | 9:45~17:00 |
横町カフェ
住所 | 長野県長野市横町86-1 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
公式オンラインショップ
Amazon
八幡屋礒五郎の商品
伝統的な七味唐辛子だけでなく、積極的に新しい商品を開発・販売しています。コラボにも積極的で、過去には「ワンピース」や「鬼滅の刃」ともコラボしています。また調味料だけでなく、「チョコレート」「マカロン」「ジェラート」といったお菓子や、化粧品も取り扱っています。
代表的な商品は以下のとおりです。
- 七味唐からし
- ゆず七味
- 深煎七味
- 焙煎一味
- BIRD EYE(バードアイ)
- 七味ガラム・マサラ
- 拉麺七味
- 山椒七味
- 粉山椒
- 七味ごま
- 梅七味ごま
- 金箔七味
日本三大七味 七味家本舗
七味家本舗とは
「七味家本舗(しちみやほんぽ)」は、京都府京都市の、清水寺参道にある、七味唐辛子を販売するお店です。その七味唐辛子は、日本三大七味の一つに数えられています。
創業は1655年(承応5年、明暦1年)で、360年以上の歴史があります。最初は「河内屋」という茶店でした。
七味家本舗の七味唐辛子とは
茶店である河内屋の「からし湯」が起源とされています。「からし湯」とは、「カラシナ」から作られる「和がらし」や「ねりからし」のことではなく、白湯に唐辛子の粉を振りかけたものです。清水寺の参拝客に、体が温まるようにと無償で提供されていました。
その後、唐辛子以外の香辛料が加えられるようになり、今の形の七味唐辛子へと変わっていきました。
特徴
七味家本舗の七味唐辛子は、香りが強い素材が使われていることが特徴です。特に山椒の香りが強いため、「鰻(うなぎ)」や「牛丼」などの丼物にかけたくなる七味です。
使われている素材は、以下のとおりです。
- 唐辛子
- 山椒
- 麻の実
- 白胡麻
- 黒胡麻
- 青のり
- 青紫蘇
七味家本舗の店舗
七味家本舗 本店
住所 | 京都府京都市東山区清水2-221 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
取扱店
全国の百貨店を中心に、多数の取扱店があります。
公式オンラインショップ
七味家本舗公式サイトが、オンラインショップになっています。
Amazon
七味家本舗の商品
七味唐辛子には、通常のものと、辛口があります。一味唐辛子や山椒も取り扱っています。
また、京都のお惣菜である「おばんざい」を作るための、京だしパック「おばんざいのもと」も人気です。
まとめ 日本三大七味について
日本三大七味とは、東京の「やげん堀」、長野の「八幡屋礒五郎」、京都の「七味家本舗」が販売する七味唐辛子のことです。それぞれ浅草寺、善光寺、清水寺と関わりがあります。七味唐辛子はもともと漢方薬として開発されたこともあり、お寺の近くで販売されることが多かったようです。また持ち運びが容易なことから、お土産として重宝されました。
やげん堀の特徴は、二種類の唐辛子が使われている辛さです。八幡屋礒五郎の特徴は、生姜の香りです。七味家本舗の特徴は、山椒の香りです。
以上、お役に立ちましたら幸いです。