日本三大焼き物は「美濃焼」「瀬戸焼」「有田焼(伊万里焼)」と言われています。ここでは、それぞれの概要と特徴について、簡単にご説明します。
日本三大焼き物の「焼き物」って何?
「焼き物(やきもの)」とは陶磁器のことです。陶磁器は、土を練り、形を整えて固め、焼いたものです。食器・花瓶・タイルなど、様々な用途に利用されています。
料理の種類として、「煮物」「揚げ物」などと同じように「焼き物」と言われることもありますが、ここでは陶磁器の話に限定させていただきます。
焼き物の種類
焼き物の分類には様々な考え方がありますが、製法の違いから「土器」「陶器」「炻器」「磁器」の4つに分ける方法が一般的です。
土器
「土器(どき)」は、粘土を、700~900℃で焼いたものです。これは窯を使用せずに、野焼きした温度となります。歴史上、最も原始的な陶磁器です。表面に塗る「釉薬(うわぐすり、ゆうやく)」は使用しません。色はつけられていないことが多いです。吸水性が高く、脆いです。
植木鉢や屋根瓦に使用されます。
陶器
「陶器(とうき)」は、粘土に、釉薬をかけ、窯を使い1,000~1,300℃で焼いたものです。土器ほどではありませんが、吸水性があります。
食器などに使用されます。
炻器
「炻器(せっき)」は、アルカリや鉄分を含む粘土を、窯を使い1,100~1,300℃で焼いたものです。釉薬は基本的に使用しません。土器と陶器の中間的な特徴があり、吸水性はありません。
茶器や壺などに使用されます。
磁器
「磁器(じき)」は、粘土・長石・石英などを混ぜたものを原料とし、釉薬をかけ、窯を使い1,300~1,400℃で焼いたものです。吸水性がなく、叩くと金属音がします。陶磁器の中では一番硬いです。
食器やタイルなどに使用されます。
焼き物の産地
焼き物の産地は全国にあります。以下の表は、代表的な産地をまとめたものです。
「経済産業大臣指定伝統的工芸品」は、伝統的であること、手工業的であること、などの条件を満たした工芸品に対して、経済産業大臣が指定したものです。陶磁器は32点選ばれています。
「遠州七窯」は、江戸時代の茶人・小堀遠州(1579-1647)が選んだとされる、茶道具の窯です。
「日本六古窯」は、陶磁器研究家の小山富士夫(1900-1975)が選んだ、伝統的な窯です。美濃焼以外の窯を紹介する目的で選ばれたため、美濃焼は含まれていません。
「日本三大焼き物」は、現在においても、特に影響力の強い窯です。
都道府県 | 焼き物 | 読み方 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品 | 遠州七窯 | 日本六古窯 | 日本三大焼き物 |
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北海道 | 北の嵐山 | きたのあらしやま | ||||
北海道 | 札幌焼 | さっぽろやき | ||||
青森 | 津軽焼 | つがるやき | ||||
岩手 | 小久慈焼 | こくじやき | ||||
岩手 | 鍛冶丁焼 | かじちょうやき | ||||
岩手 | 台焼 | だいやき | ||||
宮城 | 堤焼 | つつみやき | ||||
宮城 | 切込焼 | きりごめやき | ||||
宮城 | 台ヶ森焼 | だいがもりやき | ||||
秋田 | 楢岡焼 | ならおかやき | ||||
秋田 | 白岩焼 | しらいわやき | ||||
山形 | 平清水焼 | ひらしみずやき | ||||
山形 | 成島焼 | なるしまやき | ||||
福島 | 大堀相馬焼 | おおぼりそうまやき | ○ | |||
福島 | 会津本郷焼 | あいづほんごうやき | ○ | |||
福島 | 会津慶山焼 | あいづけいざんやき | ||||
福島 | 相馬駒焼 | そうまこまやき | ||||
福島 | 二本松万古焼 | にほんまつばんこやき | ||||
福島 | 田島万古焼 | たじまばんこやき | ||||
茨城 | 笠間焼 | かさまやき | ||||
栃木 | 益子焼 | ましこやき | ○ | |||
栃木 | 小砂焼 | こいさごやき | ||||
埼玉 | 飯能焼 | はんのうやき | ||||
東京 | 今戸焼 | いまどやき | ||||
新潟 | 無名異焼 | むみょういやき | ||||
新潟 | 庵地焼 | あんちやき | ||||
新潟 | 村松焼 | むらまつやき | ||||
富山 | 越中瀬戸焼 | えっちゅうせとやき | ||||
富山 | 小杉焼 | こすぎやき | ||||
石川 | 九谷焼 | くたにやき | ○ | |||
石川 | 大樋焼 | おおひやき | ||||
石川 | 珠洲焼 | すずやき | ||||
福井 | 越前焼 | えちぜんやき | ○ | ○ | ||
長野 | 高遠焼 | たかとおやき | ||||
長野 | 松代焼 | まつしろやき | ||||
岐阜 | 美濃焼 | みのやき | ○ | ○ | ||
岐阜 | 渋草焼 | しぶくさやき | ||||
岐阜 | 小糸焼 | こいとやき | ||||
岐阜 | 山田焼 | やまだやき | ||||
静岡 | 志戸呂焼 | しとろやき | ○ | |||
静岡 | 森山焼 | もりやまやき | ||||
静岡 | 賤機焼 | しずはたやき | ||||
愛知 | 瀬戸焼 | せとやき | ○ | ○ | ○ | |
愛知 | 赤津焼 | あかづやき | ○ | |||
愛知 | 常滑焼 | とこなめやき | ○ | ○ | ||
愛知 | 御深井焼 | おふけいやき | ○ | |||
三重 | 萬古焼 | ばんこやき | ○ | |||
三重 | 伊賀焼 | いがやき | ○ | (○) | ||
三重 | 阿漕焼 | あこぎやき | ||||
滋賀 | 信楽焼 | しがらきやき | ○ | ○ | ||
滋賀 | 湖南焼 | こなんやき | ||||
滋賀 | 膳所焼 | ぜぜやき | ○ | |||
滋賀 | 湖東焼 | ことうやき | ||||
京都 | 京焼 | きょうやき | ○ | |||
京都 | 清水焼 | きよみずやき | ○ | |||
京都 | 楽焼 | らくやき | ||||
京都 | 朝日焼 | あさひやき | ○ | |||
大阪 | 古曽部焼 | こそべやき | (○) | |||
兵庫 | 丹波立杭焼 | たんばたちくいやき | ○ | ○ | ||
兵庫 | 出石焼 | いずしやき | ○ | |||
兵庫 | 明石焼 | あかしやき | ||||
兵庫 | 赤穂雲火焼 | あこううんかやき | ||||
奈良 | 赤膚焼 | あかはだやき | ○ | |||
和歌山 | 瑞芝焼 | ずいしやき | ||||
鳥取 | 因久山焼 | いんきゅうざんやき | ||||
鳥取 | 牛ノ戸焼 | うしのとやき | ||||
島根 | 石見焼 | いわみやき | ○ | |||
島根 | 布志名焼 | ふじなやき | ||||
島根 | 出西窯 | しゅっさいがま | ||||
島根 | 温泉津焼 | ゆのつやき | ||||
岡山 | 備前焼 | びぜんやき | ○ | ○ | ||
岡山 | 虫明焼 | むしあけやき | ||||
岡山 | 酒津焼 | さかづやき | ||||
岡山 | 羽島焼 | はしまやき | ||||
広島 | 宮島焼 | みやじまやき | ||||
広島 | 姫谷焼 | ひめたにやき | ||||
山口 | 萩焼 | はぎやき | ○ | |||
徳島 | 大谷焼 | おおたにやき | ○ | |||
香川 | 理平焼 | りへいやき | ||||
愛媛 | 砥部焼 | とべやき | ○ | |||
愛媛 | 楽山焼 | らくざんやき | ||||
高知 | 内原野焼 | うちはらのやき | ||||
高知 | 尾戸焼 | おどやき | ||||
福岡 | 小石原焼 | こいしわらやき | ○ | |||
福岡 | 上野焼 | あがのやき | ○ | ○ | ||
福岡 | 高取焼 | たかとりやき | ○ | |||
福岡 | 蒲池焼 | かまちやき | ||||
福岡 | 一の瀬焼 | いちのせやき | ||||
福岡 | 二川窯 | ふたがわかま | ||||
佐賀 | 有田焼 | ありたやき | ○ | ○ | ||
佐賀 | 唐津焼 | からつやき | ○ | |||
佐賀 | 白石焼 | しらいしやき | ||||
佐賀 | 肥前吉田焼 | ひぜんよしだやき | ||||
佐賀 | 肥前尾崎焼 | ひぜんおざきやき | ||||
長崎 | 三川内焼 | みかわちやき | ○ | |||
長崎 | 波佐見焼 | はさみやき | ○ | |||
長崎 | 現川焼 | うつつがわや | ||||
熊本 | 小代焼 | しょうだいやき | ○ | |||
熊本 | 天草陶磁器 | あまくさとうじき | ○ | |||
熊本 | 高田焼 | こうだやき | ||||
大分 | 小鹿田焼 | おんたやき | ||||
鹿児島 | 薩摩焼 | さつまやき | ○ | |||
沖縄 | 壺屋焼 | つぼややき | ○ |
焼き物散歩道とは
「やきもの散歩道」は、日本六古窯にも選ばれている愛知県常滑市にある、焼き物をテーマにした散歩コースです。窯や工場に囲まれた、迷路のような小道を散策することができます。
1970年頃から自然発生的に観光スポットとなりました。
日本三大焼き物 美濃焼
「美濃焼(みのやき)」とは、岐阜県(美濃国)の東濃地方で作られる陶磁器のことです。土岐市、多治見市、瑞浪市、可児市あたりが該当します。日本の陶磁器のシェア50%以上という、日本最大の生産量をほこります。日本三大焼き物の一つに挙げられています。
起源は奈良時代まで遡り、ゆるやかな丘陵が多く、穴をほって窯を作りやすかったことと、土が適していたことが発展した理由と言われています。
美濃焼の特徴
シェア50%以上という圧倒的生産量があり、多種多様の製品がありますので、特徴らしい特徴はないと言われています。伝統的なものから、日常的なもの、キャラクターグッズまで、その自由さが特徴とも言われています。その自由な発想は、近代以降の大量生産への移行にもつながっており、結果として日本を支える焼き物の産地となりました。
伝統的には、下記の4つの様式があります。
黄瀬戸
「黄瀬戸(きせと)」は、淡黄色の焼き物です。焼き物はあえて形を歪ませることがありますが、黄瀬戸はシンプルな形のことが多いです。
瀬戸黒
「瀬戸黒(せとぐろ)」は、黒色の焼き物です。当時としては新しい色だったと考えられています。
志野
「志野(しの)」は、乳白色の焼き物です。白色も新しく、直接絵が描かれたことが画期的でした。
織部
「織部(おりべ)」は、茶人の古田織部の指示で作られたと言われており、独創的で大胆な形が特徴です。その自由さは、美濃焼を象徴していると言われています。
日本三大焼き物 瀬戸焼
「瀬戸焼(せとやき)」は、愛知県瀬戸市のあたりで作られる陶磁器のことです。場所としては美濃焼の土岐市・多治見市の隣です。
瀬戸焼は、日本で最初に「釉薬」の製法を完成させたと言われています。鎌倉時代には、日本で最大の生産量となり、特に東日本に広まりました。陶磁器一般のことを「せともの」と言われるほど、陶磁器の代名詞となりました。日本三大焼き物の一つに数えられています。
瀬戸焼の特徴
瀬戸焼で使われる粘土は、鉄分が少なく、白く焼き上がる特徴があります。その上に様々な釉薬・色・模様が使われ、カラフルでデザイン性に優れた製品が多いです。
日本三大焼き物 有田焼(伊万里焼)
「有田焼(ありたやき)」は、佐賀県西松浦郡有田町周辺で作られる磁器のことです。美濃焼や瀬戸焼は陶器と磁器の両方がありますが、有田焼は磁器のみです。日本三大焼き物の一つにあげられています。
歴史は比較的新しく、江戸時代に入ってからです。日本で最初の磁器と言われています。豊臣秀吉が朝鮮出兵した際、日本に連れてこられた陶工の李参平が、有田周辺で、磁器の原料となる白磁石を発見します。これにより、それまで輸入するしかなかった磁器の国内生産が可能となりました。17世紀後半には、中国で磁器の輸出が停止されたこともあり、逆に日本からの輸出が始まりました。磁器の人気を受け、国内の他の陶器の産地は衰退していきました。
有田焼と伊万里焼の違い
有田町と伊万里市は隣り合っていますが、江戸時代にはどちらも伊万里港から出荷されていたため、「伊万里焼(いまりやき)」と呼ばれていました。
明治以降は、有田町で製造されたものは「有田焼」、伊万里市で製造されたものは「伊万里焼」と呼ばれていますが、区別されないこともあります。現在の有田では様々な磁器が作られていますが、伊万里は高級品に限られています。
これに対して、江戸時代の作品を「古伊万里」と呼ぶこともあります。
有田焼の特徴
有田焼は、白磁に藍色の顔料を基本とし、それに赤・黃・緑など様々な色で絵付けされています。
代表的な様式として、次の3つがあります。
古伊万里様式
金襴手という、金や赤をふんだんに使って表面を埋め尽くした、豪華絢爛な様式です。
柿右衛門様式
乳白色の白地を残し、赤・緑・黃・青で、左右非対称に日本的な絵を描いた様式です。ヨーロッパでも大変人気となりました。
鍋島藩窯様式
幕府や大名への献上品として作成された最高級品で、青みがかった地肌が特徴です。
まとめ 日本三大焼き物について
日本三大焼き物とは、日本を代表する陶磁器の産地のことで、「美濃焼(岐阜)」「瀬戸焼(愛知)」「有田焼・伊万里焼(佐賀)」とされています。
美濃焼は、日本の焼き物のシェア50%以上を誇ります。
瀬戸焼は、特に東日本で広まり、「せともの」として焼き物の代名詞となりました。
有田焼(伊万里焼)は、日本で最初の磁器の産地となりました。
以上、お役に立ちましたら幸いです。