お土産の定番「三角の旗」って何だったの?

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お土産の定番「三角の旗」って何だったの?

2023年9月20日

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かつて観光地にあるお土産屋さんには、必ず三角の旗がありました。そしてなぜか、誰もがそれを買って帰ったのです。たかが数百円の旗ですが、元をたどれば中世ヨーロッパの騎士、海軍、アメリカのスポーツ文化、そして高度経済成長の日本へとつながる、歴史ある代物です。この記事では、昭和の象徴とも言える、三角の旗の謎について、詳しく解説しています。

お土産屋でよく見た三角の旗とは?

昭和の時代、観光地のお土産といえば三角の旗でした。特に修学旅行生はみんな買っていました。最近は見ないけれど、あの三角の旗は一体何だったのか。知っているようで知らない、あの三角の旗の名前から、起源、似ているけど違う旗について、詳しく解説します。

ペノン

三角の旗の名前は?

最近は見なくなりましたが、昭和の時代、観光地のお土産といえば、三角の旗でした。

この三角形の旗を「ペナント(Pennant)」と言います。

ペナントとは?

「ペナント(Pennant)」とは、小さな旗のことです。三角形のことが多いですが、長方形や台形、その他の形をしていることもあります。

「ペナント(Pennant)」は、「ペノン(Pennon)」と「ペンダント(Pendant)」が合わさってできた言葉と考えられています。

ペノンとは

「ペノン(Pennon)」とは、中性ヨーロッパで、騎士が槍の先につけていた、小さな旗のことです。形は、細長い三角形か、長方形をしていました。

ペノンには、自身の家系や、所属する軍隊の紋章が描かれていました。

これにより、誇りとアイデンティティを誇示するとともに、戦場での識別という意味もありました。

「Pennon」の語源は、ラテン語の「Penna」や「Pinna]に由来し、「羽」「翼」を意味します。これが古フランス語の「Penon」となり、英語の「Pennon」となりました。

騎士の槍についたペノン
By Charles-Philippe Larivière - Château de Versailles enligne, Public Domain, Link

ペンダントとは

「ペンダント(Pendant)」とは、「垂れ下がるもの」という意味で、一般的にはネックレスの一種として使われています。

一方、海軍では信号旗という意味で使われることがあります。細長い旗で、他の船や港に対して、所属や任務内容を伝えるために使われます。

ただし、必ずペンダントと呼ばれる訳ではなく、ペノンやペナントと混同しています。

ペナントとは

「ペナント(Pennant)」とは、船舶に掲げられる細長い旗のことです。現在においては、ペノンやペンダントとの明確な区別はありません。

二等辺三角形をしていることが多いですが、長方形、台形、二股に別れた型など、様々なタイプがあります。小さなものから、ものすごく細長いものまであります。

優勝旗としてのペナント

19世紀後半、アメリカで大学スポーツが盛んになると、リーグ戦が行われるようになりました。

そしてその優勝チームには、記念として優勝旗が贈られました。この旗は、海軍を真似て三角形をしており、ペナントと呼ばれました。

そして、そのリーグ戦のことも「ペナントレース」と呼ばれるようになりました。主にメージャーリーグベースボール(MLB)で使われる言葉ですが、他のスポーツにも広まっています。

そして日本にもアメリカの野球文化が伝わり、同じく「ペナントレース」と呼ばれれています。

スポーツの優勝旗としてのペナント
By Unknown author - State Library of Victoria, Public Domain, Link

いろいろなペナントまとめ

ペナントは様々な分野で使われています。代表的なものを以下にご紹介します。

紋章

元々は、中性ヨーロッパの貴族や軍隊が、旗に紋章を描いたのがペナントの始まりです。

船舶の信号旗

海軍が、船の上に細長い旗をつけて、信号旗として使用していました。

スポーツの優勝旗

アメリカのスポーツ界が、優勝旗を海軍にならって三角にしたことから、優勝旗のこと、または優勝することをペナントと呼ぶようになりました。

また、優勝をかけて試合をすることを、ペナントレースと言います。

スポーツチームのペナント

かつてヨーロッパの貴族が紋章を描いていたように、各スポーツチームが、チームのロゴを描いたペナントを作成しています。

学校のペナント

高校や大学が、学校の名前の入ったペナントを作成していることがあります。

しかしこれも、スポーツの応援と関連していることが多いです。

お土産としてのペナント

日本の観光地で、観光名所を描いたペナントが、お土産として大流行しました。

トレーディングチャート

株やFXなどのトレーディングチャートで、上昇と下降を繰り返しつつも、だんだんと幅が小さくなっていき、三角形が形成されるパターンを「ペナント」と言います。

トレーディングチャートのペナントパターン

ペナントと似ているけど違うもの

ペナントと間違えやすいけれども、実は違うものについてご紹介します。

バナー

ペナントとよく似たものに「バナー(Banner)」があります。

バナーは、「象徴」や「宣言」と言った意味で、貴族や王族の紋章が描かれた旗のことです。正方形が多いですが、横長や縦長の場合もあります。

バナーは戦場や宗教的な場で使われてきましたが、19世紀の産業革命以降、商業広告としても使われるようになりました。

インターネットが普及すると、ウェブサイト上のデジタル広告もバナーと呼ばれるようになりました。

Banners of Knights of the Thistle displayed in St. Giles' Cathedral
By Philip Allfrey - Taken by the author, CC BY-SA 2.5, Link

タペストリー

「タペストリー(Tapestry)」は装飾用の織物のことです。

「Tapestry」の語源は、古フランス語の「Tapisserie」で、敷物を意味します。ですから元々は敷物だったのかもしれませんが、現在では一般的に、壁掛けのことを指します。

壁に飾るということで、ペナントと似ていますが、目的が異なります。

タペストリーは、美術・装飾品です。宗教や歴史をテーマとした描かれることが多いです。持ち運びができ、室内に飾ることもできるということが重宝されたようです。

一方ペナントは、紋章がテーマであるという点が異なります。

タペストリー

ガーランド

「ガーランド(Garland)」は、花・葉・布・紙などを、紐でつないで作った装飾品です。イベントや宗教的な儀式の飾り付けとして使われています。

また、キャンプ場で、カラフルな三角の旗が並んで飾られていることがあります。これは装飾目的と、遠くからでも目立つ目印という意味があります。

「Garland」の語源は、古フランス語の「Garlande」に由来し、「花輪」「冠」といった意味があります。

ペナントとガーランドは、英語圏でも混同して使われているようです。

ガーランド

タルチョ

ペナントからは話がズレますが、ガーランドによく似たものとして、「タルチョ(Darchong)」があります。

タルチョは、チベット文化にみられる「祈りの旗」です。青・白・赤・緑・黃の色が、それぞれ天・風・火・水・地を表しています。

伝統的に、チベットやヒマラヤの山岳地帯で使われていたことから、キャンプ文化に取り込まれたものと思われます。現在では、キャンプサイトの装飾やお守りとして使われています。

タルチョ

ペナン島

「ペナン島(ペナンとう)」は、マレーシアにある島です。

旗とは何の関係もありませんが、ペナン島は観光地としても人気で、お土産の話をしていると「ペナント」と間違えることがあります。

三角の旗がお土産になった理由

三角の旗ことペナントは、元々はヨーロッパの紋章を描いた旗でした。それがなぜ、日本の観光地でお土産になったのでしょうか。そこには、高度経済成長に揺れる、日本の姿がありました。

お土産ペナントはこうして生まれた!

かつてお土産屋さんに必ずあった三角の旗、つまりペナントは、神奈川県鎌倉市にあるタオル会社、間タオル(はざまタオル)が手掛けたヒット商品です。1956年(昭和31年)創業の老舗のタオルメーカーです。

その歴史を見てみましょう。

日本のプロ野球の設立

日本で最初に野球のペナントレースが始まったのは1936年(昭和11年)です。現在とは違い、1リーグ(日本職業野球連盟)しかありませんでした。

戦後まもなくの1949年(昭和24年)に、現在のセントラル・リーグとパシフィック・リーグに分裂し、日本野球機構(NPB)が誕生しました。

長嶋茂雄と優勝旗

1958年(昭和33年)、終戦から10年以上経った日本は、高度経済成長期に突入し、活気づきます。

そしてこの年、巨人に入団し、新人賞を獲得したのが長嶋茂雄です。

巨人ファンだった間タオルの創業者、間勇氏が、球場に足を運ぶと、あるものが目に入ります。それは、バックスクリーンにはためくペナントです。

ここで間勇氏に、観光地の絵柄をペナントにすれば売れるのではないか、というアイデアが閃きます。

戦後の復興と東京タワー

最初の絵柄として選んだのは、復興のシンボルであり、間もなく完工予定だった東京タワー。

そしてこれが大ヒットします。

1960年代に入ると、社会インフラの整備が急速に進み、国内旅行ブームが起きます。それに合わせて各地のペナントを作ると、次々に売れていきます。

こうして、全国のお土産屋さんにペナントが並ぶようになりました。

ペナントがこんなにヒットした理由として、当時はカメラが一般的ではなかったので、観光地の絵柄が描かれたペナントが、お土産として人気だったのではないか、と言われています。

また200円という低価格で販売していたので、学生でも購入することができ、修学旅行の定番のお土産ともなりました。

山岳ペナント

上記の観光地ペナントとは別に、登山記念のペナントや、山小屋・スキー場のペナントが存在しています。形が微妙に異なっているので、別の歴史を辿っていた可能性があります。

今はお土産としてのペナントは消えた?

間タオルは、日本で初めてお土産用のペナントを作った会社ですが、2012年の東京スカイツリーを最後に、現在は製作していないそうです。

全盛期には全国に多くのペナント製造会社がありましたが、現在はほとんど残っていません。

カメラの普及とともに、ペナントも消えていったとされています。また、お土産アイテムとしては、ご当地携帯電話ストラップが人気となり、それに押されたという面もあります。

現在は、新しいペナントはほぼ作成されていませんが、一方で昭和の思い出として、コレクターズアイテムともなっています。全国に幅広く存在し、値段も安いので、コレクションしやすいようです。

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お土産の定番、三角の旗のまとめ

記事の内容をまとめます。

  • お土産屋でよく見る三角の旗はペナントと言う
  • ペナントの起源は、ペノンで、中性ヨーロッパの騎士がやりの先につけていた小さな旗
  • ペナントは、海軍において、船に付ける信号旗としても使われた
  • ペナントは、バナー・タペストリー・ガーランドとは起源や意味合いが異なる
  • アメリカのスポーツ界が、リーグ戦の優勝旗としてペナントを作成した
  • リーグ戦のこともペナントレースと言うようになった
  • 日本の野球界にもペナントが伝わった
  • 鎌倉市のタオル業者が、観光名所のペナントを作ることを思いつき、大ヒットした
  • 最初のペナントの絵柄は東京タワー
  • 現在は、お土産としてのペナントは、ほとんど製作されていない

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