ジャガー・ルクルトとカルティエは、どちらも高級ブランドとして知られていますが、その方向性は大きく異なります。一方、それぞれ補完する関係性でもあります。この記事では、ジャガー・ルクルトとカルティエの、それぞれの特徴を紹介しつつ、どのような違いがあるかの比較をおこないます。
ポイント
- ジャガー・ルクルトとカルティエの概要と歴史
- ジャガー・ルクルトとカルティエは何がすごいのか
- ジャガー・ルクルトとカルティエのイメージの比較
- ジャガー・ルクルトとカルティエの価格の比較
ジャガー・ルクルトとカルティエはどっちがすごい?
ジャガー・ルクルトとカルティエの概要と、それぞれの強み、関係性について解説いたします。
ジャガー・ルクルトとは
「ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)」は、スイスの高級時計メーカーです。1833年にアントワーヌ・ルクルト(Antoine LeCoultre)によって創業されました。
スイスの時計産業は、分業制が進んでおり、ムーブメントを別メーカーが製造していることが多くあります。ジャガー・ルクルトは、ムーブメントから全て自社製造している、完全マニュファクチュールです。
ジャガー・ルクルトは、精密な時計製造と、多くの技術革新で高く評価され、「時計業界の技術屋」と称されています。
カルティエとは
「カルティエ(Cartier)」は、フランスの高級ジュエリー・高級時計ブランドです。1847年にルイ=フランソワ・カルティエ(Louis-François Cartier)によって、パリで創業されました。
カルティエは、独特のデザインと高品質で知られ、ジュエリー・時計・アクセサリーなど、幅広い製品を提供しています。
また、世界中の王室とつながりが深く、セレブリティの代名詞として知られています。
ジャガー・ルクルトとカルティエの関係
ジャガー・ルクルトとカルティエには深い関係があります。
ジャガー・ルクルトは元々、時計メーカーではなく、時計メーカーにムーブメントを提供する「部品メーカー」でした。パテック・フィリップ(Patek Philippe)やオーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)を始め、名だたる高級時計ブランドが、ルクルト社にムーブメント制作を依頼していました。
1903年、フランスの時計職人エドモンド・ジャガー(Edmond Jaeger)は、自身が開発した薄型キャリバーを制作できる会社を探していました。この難しい依頼を受けたのが、ルクルト社の責任者だった、アントワーヌ・ルクルトの孫にあたるジャック・ダヴィド・ルクルト(Jacques-David LeCoultre)です。
1907年、世界で最も薄い懐中時計ムーブメント「キャリバー145」が完成します。これは厚さ1.38ミリメートルという極薄ムーブメントで、現在においても、懐中時計としては世界で最も薄いムーブメントとなっています。
一方、宝石商であったカルティエ社は、自社で時計のムーブメントは開発しておらず、ジャガー社に依頼をしていました。そして、1907年から1922年まで、ジャガーのムーブメントはカルティエ専用とする契約を結びます。ジャガーのムーブメントを制作していたのはルクルトなので、カルティエのムーブメントはルクルトであったということになります。
1937年には、ジャガーとルクルトが協力し、ジャガー・ルクルトを立ち上げ、部品メーカーではなく時計ブランドとしての地位を確立します。
カルティエは1993年、ジャガー・ルクルトは2000年に、スイスのラグジュアリーグループ「リシュモン(Richemont)」の傘下に入っています。
ジャガー・ルクルトは何がすごい?
ジャガー・ルクルトは、その技術力で知られています。
200年近い歴史の中で、1,300以上のキャリバーを作り、数百の発明をし、430もの特許を取得しています。
以下に、代表的な発明やモデルをご紹介します。
1830年 カナ切削機
「カナ(pinion)」とは、歯車の軸についた小さな歯車のことです。カナが他の歯車と噛み合って動力が伝わります。
1800年代、カナはヤスリを使って手作業で作られていました。
アントワーヌ・ルクルトは、カナを切り出す機械を開発し、時計の精度を飛躍的に高めました。
1844年 ミリオノメーター
アントワーヌ・ルクルトは、1ミクロン(0.001ミリメートル)の精度で長さを測定できる「ミリオノメーター」を開発し、さらに部品の精度を高めます。
1847年 切り替え式リューズ巻き機構
アントワーヌ・ルクルトは、ボタンを押すだけで、「時刻合わせ」と「巻き上げ」機能が切り替わるリューズシステムを開発します。
これにより、巻き上げのための鍵が不要となりました。
1907年 ルクルト製キャリバー145
ジャガーの依頼を受け、厚さ1.38ミリメートルという、極薄のムーブメントを完成させます。
1929年 キャリバー101
当時、世界最小の機械式ムーブメント「キャリバー101」を開発しました。
1931年 レベルソ
馬に乗ってボールをゴールまで運ぶ「ポロ(polo)」競技者より、壊れない腕時計が欲しいという依頼を受け、ケースを反転することで表面のガラスを保護できる仕組みを作りました。
このクラシカルなデザインは、現在でも愛用されています。
1946年 アトモス
1928年に発明された「アトモス」は、温度や気圧の変化を利用することで、半永久的に動き続ける置き時計です。
ジャガー・ルクルトはその特許を購入し、実際の製品として仕上げ、1946年より販売開始しました。
1946年 キャリバー170 トゥールビヨン
1946年に発表された、トゥールビヨンを搭載した「キャリバー170」は、当時最高精度を持つムーブメントでした。
当初は懐中時計用でしたが、1993年以降は腕時計にも取り入れられています。
1950年 メモボックス
「メモボックス」は、アラーム機構を持つ腕時計です。
1950年に発表された最初のモデルは手巻きでしたが、1956年には自動巻きとなりました。
2004年 ジャイロトゥールビヨン
トゥールビヨンは、回転することで重力の影響を軽減する機構ですが、その回転は1方向のみでした。
ジャガー・ルクルトは多軸で、立体的に回転する機構を完成させ、より精度を高めました。
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2009年 ハイブリス・メカニカ・グラン・ソヌリ
26もの機構を搭載した、世界で最も複雑は機械式腕時計を発表します。
カルティエは何がすごい?
カルティエは、独創的で時代を超越したデザインと、マーケティングセンスで知られています。
時代の先を読む力
1847年にパリのモントルグイユ通り(現在のパリ1区)に工房を構えると、1853年にはヌーヴ・デ・プティ・シャン通り(現在のパリ2区)にブティックをオープンします。
付近にはオルレアン公を始め、多くの貴族の邸宅があり、社交界での存在感を高めていきました。
1859年、パリはナポレオン3世の改革により、華やかな街へと生まれ変わります。この空気を読み、カルティエはオペラ座近くのイタリアン大踊りに店舗を移転します。
ここでも上流階級の間で話題になると、ナポレオン3世の皇后ウジェニーから、直接注文を受けるまでになります。これにより「フランス王室御用達ブランド」の地位を確立し、他国の王族にも急速に広まっていきました。
1902年にはロンドン、1909年にはニューヨーク、1974年には原宿に支店をオープンするなど、カルティエは常に時代の最先端の場所にいました。
型破りなデザイン
カルティエは、時代の流行に乗る一方、デザインにおいては型破りでした。
19世紀末、ヨーロッパでは「アール・ヌーヴォー」という、花や植物などを組み合わせた曲線的なデザインが大流行していました。
そんな中カルティエは、金属であるプラチナを花冠のように編み込んだ「ガーランド様式」を確立します。プラチナをジュエリーとして用いたのはカルティエが最初とされています。
20世紀になると、直線的で幾何学的な「アールデコ様式」で、時代の最先端となります。
1930年代に入ると、女性の社会進出や自然回帰を彷彿させる、豹(パンサー)をモチーフとした「パンテール」コレクションで、時代を先取りしました。
このように、時代の一歩先を行くデザインで、王族や貴族をも虜にし、流行を作り出してきたのがカルティエです。
ジャガー・ルクルトとカルティエは買うならどっちがいい?
ジャガー・ルクルトとカルティエの、それぞれのイメージ、支持している年齢層、性別、価格、リセールバリューについて解説します。
ジャガー・ルクルトをつけている人はどんなイメージ?
ジャガー・ルクルトを着用している人の、一般的なイメージをご紹介します。
時計愛好家
ジャガー・ルクルトは、複雑なムーブメントと、優れた職人技で知られています。
着用している人は、時計に深い知識と興味を持っていると見なされるでしょう。
洗練された趣味
ジャガー・ルクルトは、伝統的な高級ブランドとして認知されています。
着用している人は、クラシックで上質なものを好む、洗練された趣味を持っていると見なされるでしょう。
控えめな豪華さ
ジャガー・ルクルトの時計は、控えめながらも高品質なデザインであることが特徴です。
着用している人は、目立つことは好まないが、質の高い製品を評価するというイメージがあります。
カルティエをつけている人はどんなイメージ?
カルティエを着用している人の、一般的なイメージをご紹介します。
トレンドに敏感
カルティエは、洗練されたデザインとファッション性で知られています。
着用している人は、最新のトレンドに敏感で、スタイリッシュな外観を重視すると見なされるでしょう。
上品な高級感
カルティエのコレクションは、エレガンスと高級感を象徴しています。
着用している人は、上品で洗練されたライフスタイルを持っていると見なされるでしょう。
社会的成功者
カルティエは、ジュエリーと時計の分野で、高級ブランドとして広く知られています。
着用している人は、社会的に成功しているというイメージがあります。
ジャガー・ルクルトとカルティエの年齢層
ジャガー・ルクルトとカルティエの時計を支持する人の、代表的な年齢層と性別をご紹介します。
ジャガー・ルクルト
40代から50代の男性に特に支持されています。まさに紳士に選ばれる時計と言えるでしょう。
女性向けコレクションもあり、近年はさらに人気が高まっています。
カルティエ
30代から40代の女性に特に支持されています。
洗練されたデザインは男性からも好まれていますし、そもそも世界初の男性向け腕時計は、カルティエの「サントス」とされています。
ジャガー・ルクルトの値段とリセールバリュー
ジャガー・ルクルトの時計は、一般的に高級時計に位置づけされており、全体的に値段が高めになっています。
- エントリーモデル:50万円~
- 中間モデル:100万~300万円
- 高級モデル:500万円~
- 限定モデル:700万円~
リセールバリューは、45~50%程度で、安定した価値を保っています。
カルティエの値段とリセールバリュー
カルティエの時計は、値段の幅が広く、特に高級モデルは、どれだけ宝石を使用しているかで大きく変わってきます。ダイヤモンドを使用したものなどは1,000万円を超えるものもあります。
- エントリーモデル:25万円~
- 中間モデル:60万円~200万円
- 高級モデル:300万円~
リセールバリューは、40~60%程度と、モデルによって幅があります。特に「タンク」や「サントス」は高めになることがあります。
まとめ ジャガー・ルクルトとカルティエのどっちがいいか
ジャガー・ルクルトとカルティエの比較を表にまとめます。判断の参考にしていただければ幸いです。
項目 | ジャガー・ルクルト | カルティエ |
---|---|---|
拠点 | スイス | フランス |
創業 | 1833年 | 1847年 |
グループ | リシュモン | リシュモン |
イメージ | 時計の技術屋 控えめな高品質 | 最先端デザイン 王室御用達 |
年齢層 | 40代から50代 | 30代から40代 |
性別 | 男性が多い | 女性が多い |
値段 | 50万~800万円 | 25万~2,000万円 |
リセールバリュー | 45~50% | 40~60% |