Gショックと言えば、壊れない時計というイメージ―があるかと思います。その最高クラスの「MR-G」であれば、それはもう絶対に壊れることはなく、一生ものの時計として使えると考えるかもしれません。この記事では、Gショックとは何か、それぞれのシリーズの特徴と、MR-Gの位置づけについて解説した後、MR-Gを一生使うことは難しい理由についてご説明します。
ポイント
- Gショックとは
- Gショックのシリーズと、その特徴
- クォーツ式時計・機械式時計の寿命と、その理由
- GショックMR-Gの寿命と、その理由
GショックのMRGは一生もの?
Gショックの概要と、代表的なシリーズとその特徴、一般的な時計の寿命についてご紹介します。
Gショックとは
「G-SHOCK(ジーショック)」とは、カシオ計算機が発売する時計ブランドの一つです。
Gショックは、落としても壊れない時計を目指して、1981年から開発が始められました。逆に言えば、当時の時計は落としたら壊れるのが当たり前だったと言えます。
落としても壊れないという目標は、「トリプル10」(落下強度10m、防水性能10気圧、電池寿命10年)という、具体的な数値目標に置き換えられました。
また、「Gショック」という名前は、3階の窓から落とす実験の様子から、つけられたそうです。
最初のモデル「DW-5000C」は、1983年に発表されました。発売してすぐはなかなか売れませんでしたが、アメリカで「ホッケーのパックの代わりに使っても壊れない」というTV CMが放映されると、過大広告ではないかという検証番組が作成され、それが逆にGショックの強さを証明することになり、一気に人気となりました。
Gショックのシリーズ
Gショックには、以下のように、多くのシリーズがあります。「MR-G」はその中でも、最高級のフラッグシップモデルという位置づけです。
MR-G
「MR-G」は、Gショックの全ての技術を詰め込んだ、フルメタルのフラッグシップモデルです。
Mは「Majesty(威厳)」、Rは「Reality(現実)」を意味します。
Gショックと言えば樹脂(レジン)製で、アウトドアシーンで使われることが特徴でした。MR-Gは、フルメタルにすることで、ビジネスシーンでも着用できるような、大人のための最高級モデルとなっています。
MT-G
「MT-G」は、メタルと樹脂を融合させたハイブリッドモデルです。
MTは「Metal Twisted(編み込んだ金属)」を意味します。
MT-Gは、従来とは異なる耐衝撃構造を開発するというコンセプトから、次々と新技術が生み出されています。
MASTER OF G - AIR
「MASTER OF G」とは、過酷な環境で活動するプロのためのシリーズです。その中でも「AIR」はパイロットのニーズに答える仕様となっています。
「GRAVITYMASTER(グラビティマスター)」の名を持つこのシリーズは、一瞬で時刻を確認できる視認性と、操作しやすい大きなボタンが特徴です。その他、方位センサーやワールドタイムなど、目的ごとの機能が備わっています。
基本的に「MASTER OF G」シリーズは、「MASTER(マスター)」と名のつくものはアナログで、「MAN(マン)」と名のつくものはデジタル時計です。(一部例外あり)
「AIR」は「GRAVITYMASTER」のみなので、全てアナログ時計となっています。
MASTER OF G - LAND
「MASTER OF G - LAND」は、瓦礫・土砂・熱帯雨林など、陸上の過酷な環境で活動するためのシリーズです。
耐衝撃性に加え、防塵・防泥(マッドレジスト)性能を高めていることが特徴です。
アナログの「MUDMASTER(マッドマスター)」、デジタルの「MUDMAN(マッドマン)」、ジャングルや山岳などでの冒険を想定した「RANGEMAN(レンジマン)」があります。
MASTER OF G - SEA
「MASTER OF G - SEA」は、水がある環境での作業を想定したダイバーズウォッチです。
「FLOGMAN(フロッグマン)」は潜水、「GULFMAN(ガルフマン)」は船上や湾岸での使用を想定しています。「GULFMASTER(ガルフマスター」は、海上で任務を遂行するプロフェッショナルのための機能が備わっています。
FULL METAL
「FULL METAL」は、初代Gショックのコンセプトを継承しつつ、フルメタル化を実現したシリーズです。
G-STEEL
「G-STEEL」は、ステンレスボディを中心としつつも、カーボンなどの素材を組み合わせたシリーズです。
G-SQUAD
「G-SQUAD」は、フィットネスやスポーツトレーニングのための機能を備えたシリーズです。
G-LIDE
「G-LIDE」は、サーフィンに特化したシリーズです。
ORIGIN
「ORIGIN」は、初代モデル「DW-5000C」のコンセプトとデザインを引き継ぐシリーズです。
その他
その他、スペシャルモデルやペアモデル、女性用モデルなどがあります。
デジタル、アナログ、アナログ+デジタルなどの区分けもあります。
高級時計は一生もの? 時計の寿命とは
「時計は一生もの」と言われることもありますが、実際に何年使えれば「一生もの」と言えるでしょうか。いろんな意見はありますが、「50年」使えれば一生ものの製品として言っても差し支えないのではないかと思います。
では腕時計が50年使えるかと言われると、何のメンテナンスもしなければ、不可能です。10年持てばいい方でしょう。適切なメンテナンスを続ければ、50年以上使える可能性もあります。
一般的に腕時計は「クォーツ式」と「機械式」に分けられますが、動力源として考えると「電池式」「ゼンマイ式」「太陽光発電式」と分けた方が適切かもしれません。しかし太陽光発電式も電池を使用しますし、ハイブリッド式などもありますので、ここでは「クォーツ式」と「機械式」とさせていただきます。
クォーツ式時計の寿命
クォーツ式時計は、基本的に電池を動力源としていますので、電池交換は必要となります。電池の寿命は、モデルにもよりますが、2~5年となります。
また、日常的に使用していれば、ベルトはどうしても痛みます。歯車の潤滑油もだんだん劣化してくるので、負荷がかかり、最終的には動かなくなってしまいます。そのため、7~8年ごとにはオーバーホールが必要となります。
問題は電子部品です。歯車やベルトは、第三者が作り直すこともできますが、電子部品が壊れたとなると難しくなります。電子部品の寿命は長くて30年と言われています。後はメーカーがいつまで交換部品を保持しているかとなりますが、一般的には5~10年です。
世界初のクォーツ式時計が発売されたのが1969年です。2024年現在で、55年経ったことになります。1970年代のクォーツ式時計を修理することは、極めて難しいでしょう。
全ては部品が手に入るかどうかによりますが、一般的にクォーツ式時計の寿命は、10~20年と言えるでしょう。つまり、一生ものと言うのは難しいと思われます。
機械式時計の寿命
機械式時計には電子部品が使われていないので、その寿命は永遠と思われるかもしれませんが、実際には難しいです。
まずオーバーホールは、3~5年に一回必要となるので、クォーツ式よりも頻度は高くなります。
劣化した部品は交換が必要となりますが、メーカーが交換部品を保持している期間は10~30年です。メーカー純正部品が手に入らない場合は、第三者が作成することになります。それで一応動くようにはなりますが、果たしてオリジナルと言えるのかというところが問題となってきます。
高級機械式時計と言えど、50年以上前のものを修理して使用することは、極めて稀です。一般的に機械式時計の寿命は、30~50年と言えるでしょう。しかし30~50年使えるのであれば、一生ものと言っても差し支えないと思われます。
GショックMRGが「一生もの」でない理由
MR-Gが一生ものとは言えない理由として、Gショックのコンセプトと、部品の劣化、修理部品の所有期間について解説します。
Gショックはガンガン使うから
そもそもGショックという時計は、通常では壊れてしまうような過酷な環境でも壊れずに使える、ということを目指した時計です。
一般的な高級時計であれば、壊れないように、傷がつかないように大切に使うということもあるでしょうが、それはGショックのコンセプトに反しています。
「MR-G」はGショックの中で一番高価なシリーズではありますが、やはりガンガン使って、そのタフさを証明していきたいところです。
ただしそういう使い方をすると、やはり寿命は短くなってしまうことでしょう。
電子部品が劣化するから
クォーツ式時計の内部には、多くの電子部品が入っています。
電子部品には、ICやコンデンサー、LEDなど様々な種類があり、それぞれ寿命は異なりますが、まとめると10~20年が寿命と言えます。
その理由は、温度変化、湿度変化、化学的・機械的ストレスなどで、防ぐことはできません。
技術の進歩は速いですが、逆に言えば、昔の部品を手に入れることは難しいという面もあります。
樹脂が劣化するから
「MR-G」はフルメタルですが、一般的にGショックというと、樹脂をイメージする方も多いと思います。
そして樹脂は劣化が避けられません。少しずつ分解が進み、ひび割れたり、折れたりしてしまいます。特に汗や海水で濡れると、劣化が早まります。紫外線や空気中の水分でも劣化するので、防ぎようはありません。
使用環境にもよりますが、10年を超すと、厳しくなってきます。20年もすると、バラバラに砕け散る可能性があります。
フルメタルなら一生もの? でも部品が・・・
樹脂に寿命があるのは仕方がありません。だからこそカシオも、より丈夫なフルメタルのモデルを出しているわけです。
しかし上記に書いたように、内部の電子部品はいつかは壊れます。そして壊れたときに、修理できない可能性が高いのです。
カシオでは、修理のための「補修用性能部品の最低保有期間」を以下のように定めています。
- GSW-H1000(スマートウォッチ): 5年
- プレミアムブランド専用修理対象製品:10年
- それ以外:7年
「プレミアムブランド専用修理対象製品」とは、「OCEANUS」「PRO TREK MANASLU」「MR-G」「MT-G」が該当します。
つまり一般的なGショックで7年、「MR-G」「MT-G」で10年までしか修理が保証されません。それ以降は、修理の受付けがされない可能性があります。
GショックMRGの寿命は?
「MR-G」の最初のモデル「MRG-100-1」は、1996年に発売されました。28年前ということになりますが、現役で動いているものは、ほとんどないと思われます。メーカーでの修理受付も終了しています。
上記の通り、カシオでは10年間は補修部品を保有していますが、それ以降は未定です。部品がなくなり次第、修理受付終了になっていると思われます。
ですからMR-Gの寿命が何年かと言われれば、10年はメーカーが保証してくれるということになります。大切に使っていれば20年程度は動く可能性がありますが、30年となると難しいのではないかと思われます。初代モデルが発売されてまだ30年経っていないので、実例がないのですが、やはり電子部品の寿命がMR-Gの寿命となるでしょう。
したがってGショックMR-Gの寿命は、10~20年というところではないかと思います。
一生ものと言うよりは、日常的にガンガン使い倒すことをおすすめします。
まとめ GショックMRGは一生もの?
記事の内容をまとめます。
- Gショックは、カシオ計算機が発売する時計ブランドの一つで、落としても壊れない時計を目指して開発された
- Gショックは、落下強度10m、防水性能10気圧、電池寿命10年という「トリプル10」を目指して開発された
- Gショックは、陸・海・空の様々な環境で使用できるように、多くのシリーズがある
- Gショックの初代モデルは、衝撃を吸収できるように、樹脂素材が採用された
- Gショックの「MR-G」シリーズは、最高峰の技術が詰め込まれた、フルメタル素材の、フラッグシップモデル
- 一般的に、クォーツ式時計の寿命は10~20年、機械式時計の寿命は30~50年
- Gショック「MR-G」の寿命は、10~20年
- クォーツ式時計は、電子部品が壊れると、メーカー以外での修理が難しくなる
- カシオは、時計の修理用部品を5~10年しか保有していないので、それ以降の修理は難しい
- GショックMR-Gを一生ものとすることはできないので、割り切ってガンガン使った方がよい