コラヴァンとは、ワインディスペンサーの一種で、コルクを抜くことなくワインを注ぐことができるというシステムです。これにより、飲みかけのワインであっても数ヶ月・数年に渡って保存ができるとされています。ワインを気軽に楽しむことができるようになる、とても便利なアイテムですが、ランニングコストが高いなどのデメリットも指摘されています。この記事では、コラヴァンの特徴と、どんなデメリットがあるのかについて、詳しく解説しています。
ポイント
- コラヴァンとは
- コラヴァンのモデルごとの違い
- コラヴァンのメリット・デメリット
- コラヴァンのランニングコスト
コラヴァンとは?どんなデメリットがあるの?
コラヴァンとは
「コラヴァン(Coravin)」とは、ワインの栓を抜かずにワインを抽出して注ぐことができる、ワインディスペンサーです。アメリカのコラヴァン社が設計し、販売しています。栓を抜かないため、ワインが空気に触れて酸化することを防ぎ、飲みかけであっても長期保存することができるようになっています。
コラヴァンは、細いニードル(針)をコルクに刺すことで、コルクを抜くことなくワインを注ぐことを可能にしています。ボトル内にアルゴンガスを注入することで、ガス圧でワインを抽出します。また、ボトル内がアルゴンガスで満たされることで、ワインが酸化することを防ぎます。使用後にはニードルを抜きますが、コルクの特性により穴は自然に塞がれるため、ほぼ未開封と変わらない状態となります。
ワイン愛好家にとっては大変便利な代物ですが、ランニングコストが高いというデメリットがあります。基本的には、レストラン等での業務用となります。
コラヴァンの使い方
コラヴァンの使い方は簡単です。モデルにもよりますが、基本的には以下のような流れとなります。
- コラヴァン本体に、アルゴンガスカプセルをセットする
- ワインボトルのタイプを確認し、コルク周りを清掃する
- ニードル(針)を、コルクに刺す
- トリガーを押してアルゴンガスを注入し、ワインを注ぐ
- ニードルをコルクから抜く
- 本体を清掃し、保管する
公式サイトに分かりやすい動画があります。
コラヴァンのモデルごとの違い
コラヴァンには、いくつかの異なるモデルが存在します。2023年の情報をもとに、モデルごとの違いを簡単にご説明します。
タイムレス3 SL
一番基本的なコラヴァンです。本体と、いくつかのアクセサリーがセットになっています。
タイムレス3+
タイムレス3 SLに、よく使うアクセサリーが追加されています。
本体の色は異なりますが、性能は同じです。
タイムレス6+
タイムレス3はプラスチック素材ですが、タイムレス6はメタリックとなっています。
基本的な保存性能は変わりません。
タイムレス11
スマホアプリと連動した、自動制御機能が付いています。
タイムレス3・タイムレス6は、ワインを注ぐときに手動でトリガーを押す必要がありますが、タイムレス11は傾けるだけで、自動的に予め設定した量のワインが抽出されます。その他、カプセル交換時期の管理機能などがついています。
ピボット
コルクにニードルを刺すのではなく、専用ストッパーに置き換えて使用します。
保存期間はタイムレスに比べると短くなりますが、4週間程度は保てるとされています。
値段はピボットの方が安くなっています。
スパークリング
スパークリングワイン用の保存システムです。
最長4週間まで保存できるとされています。
コラヴァンで使用するアルゴンガスとは
コラヴァンでは、通常「アルゴンガス(Argon gas)」という気体を使用します。その特徴についてご紹介します。
アルゴンガスは、周期表では「Ar」と表記します。貴ガスの一つであり、反応性が極めて低く、他の物質と化学反応を起こすことがほとんどありません。大気中にも0.93%程度存在しています。
アルゴンはとても安定しており、化学反応をほとんど起こしません。また無色無臭で、無毒です。空気より重いという特徴もあります。
そのため、ワインのボトル内にアルゴンガスを注入することで、ワインが酸化することを防ぐことができます。
食品保存の他、金属の溶接や、化学や医学の分析装置に用いられています。
実は日本では、アルゴンガスを食品に使用することは禁止されていましたが、2019年の食品衛生法の改正により、アルゴンが食品添加物として認められました。これにより、コラヴァンのアルゴンガスも使用可能となりました。それまでは窒素ガスが使用されていたようです。
コラヴァンのメリット・デメリット
コラヴァンのメリット
ワインは開栓すると、急激に酸化するため、あまり長く持ちません。せいぜい数日といったところでしょう。
コラヴァンを使えば長期保存することができるようになります。それに派生するメリットを、詳しくご紹介します。
飲み過ぎを防ぐ
ワインは開栓したら、すぐに飲まなければいけないため、無理して飲む干すことがよくあります。そのため、アルコール摂取量の適量を超えて、飲み過ぎとなってしまいます。
コラヴァンを使えば、少しずつ飲めるので、飲酒量を適量に抑えることができます。
高いワインを飲める
すぐに飲まないといけないとなると、高級ワインを開栓するタイミングは難しくなりますし、個人用に買うのも躊躇してしまいます。
コラヴァンがあれば、自分の好きなタイミングで長期間に渡って飲めるので、高級ワインであっても気軽に購入することができるようになります。
いろいろ試し飲みできる
ワインは、料理とのペアリングを考えるのも、楽しみの一つです。この料理には赤ワイン、こっちは白ワインといきたいところですが、全部飲まないといけないとなると、家庭では選択肢が限られてしまいます。
コラヴァンがあれば、いろんなボトルを少量ずつ飲むことができるので、楽しみの幅も広がります。
熟成中のワインを試し飲みできる
ワインは、長期熟成による風味の変化も、楽しみの一つです。しかしながら、開栓したら終わりなので、途中経過を知ることはできません。
コラヴァンがあれば、熟成途中でも試し飲みすることができます。
高級ワインをグラスで提供できる
店舗においては、高級ワインをグラスで提供できるようになるというメリットがあります。
これにより、顧客に気軽にワインを楽しんでもらうことができるようになります。
破棄をなくす
中途半端にボトルに残ったワインは、何にも使えずに破棄するしかありませんが、コラヴァンがあれば無駄ななく最後まで使うことができるようになります。
小型で持ち運びができる
コラヴァンのような、ワイン保管システムは他にもありますが、備え付けの大きな設備であったりして、なかなか扱いが難しいものです。
コラヴァンは300~500g程度の重さで、幅・高さ・長さが5cm・20cm・10cm程度と小型なので、気軽に持ち運ぶことができます。イベント会場での運用もできるでしょう。
専用システムに比べると安価
コラヴァンは3万~10万円程度と高価なものですが、それでも専用システムが100万円以上することと比較すれば、かなり安価であり、気軽に導入することができます。
コラヴァンのデメリット
コラヴァンはとても便利ですが、デメリットも存在します。代表的なデメリットをご紹介します。
高い
一番のデメリットは、やはり高いということです。ワインを大量に提供する、ワイン専門バーや高級フランスレストランであればいいかもしれませんが、個人であったり、そこまでワインが出ないレストランであったりすると、導入のコストが見合わないかもしれません。
ランニングコストについては、後述します。
見栄えが良くない
デザインについては主観的な問題となりますが、注いでいる姿が、あまり良くないと感じる方もいます。
ワインは雰囲気を含めて楽しむものなので、機械的なデザインのコラヴァンは、その場の空気を壊してしまうかもしれません。
注ぐのに時間がかかる
普通にワインをグラスに注ぐだけならば、1~2秒といったところでしょう。
ところがコラヴァンは、20~30秒かかります。これは忙しいレストランでは、なかなかの負担となります。お客様の眼の前でで注ぐには時間がかかりすぎるので、裏で注いで配膳することになるでしょう。
ニードルの洗浄が手間
コラヴァンは、毎回ニードルの洗浄が必要となります。1回あたりの手間は大したことはありませんが、レストランで何十回も繰り返すとなると、面倒な作業となります。
ボトルの中にコルクが落ちる
コラヴァンは、ニードルをコルクに貫通させます。コルクの下の方が劣化していると、砕けて破片がワインの中に落ちることがあります。
ワインはニードルを通って抽出されるので、コルクが混じるわけではありませんが、場合によっては破棄しないといけなくなるかもしれません。
この問題についてはコラヴァンでも対策されていて、コルクが壊れにくい「ヴィンテージニードル」も発売されています。
ワインの中にコルクが入った!そのまま飲める?
ワインのボトルを開ける際、コルクが中に入ってしまったことはありませんか?この記事では、ワインのコルクが中に入った際の対処法、そのまま飲むことの安全性について解説します。また、コルクの素材や歴史、ワイン ...
天然コルクしか使えない
最近のワインは、天然コルク以外にも、プラスチックやスクリューキャップのものが増えています。これらにコラヴァンを使用することはできません。
保存期間は短くなりますが、コラヴァン専用の代替スクリューキャップも販売されています。
やっぱり劣化する
そして、残念なことに、やはり劣化は避けられないようです。
コラヴァンの公式サイトでは数年は持つと書かれていますが、実際の口コミでは、数ヶ月から劣化し始め、半年もすると明確に差を感じられるという意見が多いです。これは特にボトル内のワイン量が少なくなると顕著になるようです。
原因として、毎回コルクに穴を開けることと、ニードルを使い回すことによる影響が指摘されています。
逆に言えば、数カ月間はそんなに変わらないということなので、それを前提に導入を検討するのが良いでしょう。
コラヴァンのランニングコスト
コラヴァンを使用する上で、一番気になるのがランニングコストでしょう。
消耗品としては、ニードル(針)とアルゴンガスがあります。
ニードルのランニングコスト
コラヴァンのニードルは、公式サイトでは何百回でも使用できると書かれていますが、コルクが詰まったり、折れたりすることがありますので、予備のニードルは必要となります。交換の目安は使用頻度によります。
ニードルにはいくつかの種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
- スタンダード: 基本となるニードル。7,000円ほど。
- ヴィンテージ:壊れやすいコルク向け。7,000円ほど。
- ファースト: 速く注ぐことができる。7,000円ほど。
- プレミアム: ヴィンテージ+ファースト。14,000円ほど。
アルゴンガス
コラヴァンでは、注入するアルゴンガスのことを「カプセル」と呼んでいます。スパークリングワイン用のCO2カプセルもあります。
1カプセルで1,500円ほどです。そして1カプセルで150mlのワインを、15杯程度注ぐことができます。グラスワインを150mlとすると、カプセルのランニングコストは、以下のようになります。
グラス(150ml): 100円
ボトル(750ml): 500円
ワイングラス1杯で100円、ボトル1本で500円という計算となります。
例えば、グラスワインを500円で提供していたとすると600円、5,000円のボトルワインは5,5000円に値上げする必要があるということになります。それぞれ20%と10%の値上げなので、なかなかの値段となります。
ですからコラヴァンは、低価格帯のワインには少しコスト高となり、不向きとなります。一方、超高級ワインについては、やはり劣化の可能性もありますので、使用するのが躊躇われるところです。結論としてコラヴァンは、中~高価格帯のワインに向いているシステムと言えます。
低価格帯のワインの場合は、コラヴァンを導入することで、どの程度ロスを削減できるのかを考慮して判断すると良いでしょう。
コラヴァンのメリット・デメリットのまとめ
記事の内容をまとめます。
- コラヴァンとは、ワインのコルクを抜くことなく、ワインを注ぐことができるディスペンサー
- コラヴァンは、コルクにニードルを刺し、アルゴンガスを注入することで、ワインを注ぐ
- コラヴァンを使用することで、飲みかけのワインであっても、長期間保存することができる
- 個人であれば、いろいろなワインを少しずつ飲む、飲酒量を制限する、高額なワインでも気軽に買える、などのメリットがある
- 店舗であれば、高級ワインをグラスで提供できる、ロスを少なくできる、イベント会場で使用できる、などのメリットがある
- コラヴァンは長期間の保存が可能ではあるが、それでも数ヶ月経つと劣化する傾向にある
- コラヴァンはアルゴンガスのランニングコストが高くつく
- コラヴァンの初期費用は3万~10万円ほど
- コラヴァンのランニングコストは、グラス1杯で約100円
- コラヴァンは高価ではあるが、業務用ワインサーバーと比べれば安価
- コラヴァンは店舗の雰囲気やオペレーションに合わないことがある