近年、海の底でワインを熟成させる方法が各国で研究されおり、市場にも出回るようになってきました。大変ロマンがある話ですが、その効果に疑問を持つ声も多いです。しかし結局のところ、ワインはロマンが一番重要であるとも言えます。この記事では、海底熟成ワインとは何か、その効果と評価、そして日本初の海底熟成ワインである「サブリナ」について、詳しく解説しています。
ポイント
- 海底熟成ワインとは
- ワインを海底熟成させるメリット・デメリット
- 海底熟成ワインの評価
- 日本初の海底熟成ワイン「サブリナ」について
最近評判の海底熟成ワインってどんなの?
海底熟成ワインの概要と歴史、メリット・デメリット、ワイン以外の海底熟成飲食品と、海底以外の変わった熟成方法について解説します。
海底熟成ワインとは
「海底熟成ワイン」とは、ワインの熟成方法の一つで、ボトルを海底に沈めて熟成させたワインのことです。「海底ワイン」と言われることもあります。
英語では「Underwater Aged Wine」「Submarine Aged Wine」、または単に「Underwater Wine」などと呼ばれています。
この方法は、日光が当たらず、一定の温度を保つ海底の環境が、ワインの熟成に適しているという考えに基づいています。波や水圧が影響を及ぼすという説もあります。
海底熟成ワインは、まだ一般的ではありませんが、ワイン生産者やワイン愛好家から注目を集めています。
海底熟成ワインの歴史
海底熟成ワインのアイデアは、沈没船から回収された古いワインボトルが、驚くほど良好な状態を保っていたことに由来します。
沈没船からワインボトルが発見されることは度々ありますが、有名なのは下記の2つです。
1998年 ジョンコピング号
「ジョンコピング号(Jönköping)」は、1916年に沈没したスウェーデンの船です。
ジョンコピング号は、スウェーデンの港を出向し、当時ロシア領だったフィンランドへ向かっていました。貨物には、多くの高級ワインやシャンパンが積まれていました。
しかし航海の途中で、ドイツの潜水艦Uボートによって撃沈されてしまいます。
1998年、沈んでいたジョンコピング号が発見され、引き上げられます。
ほとんどのボトルは駄目になっていましたが、1907年ヴィンテージの「エドシック・モノポール(HEIDSIECK&MONOPOLE)」だけは、いい状態で発見されました。味も、80年以上眠っていたとは思えないほどの若々しさを保っていました。
これは、水深・水圧・水温などが、偶然、長期熟成に適した環境であったためと考えられています。
2010年 詳細不明の沈没船
2010年、ダイバーが、バルト海の水深50メートルに沈んでいる沈没船を発見します。
そしてその船から、168本の未開封のボトルが引き上げられました。
この船の詳細は不明ですが、ボトルの中身は「シャルル・エドシック(Charles Heidsieck)」「ジュグラー(Juglar、後のJacquesson)」「ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)」などの、シャンパンであることが分かりました。特にヴーヴ・クリコは、1830年代のノンヴィンテージであると推定されました。
とすると、180年近く海の底に沈んでいたことになります。それにもかかわらず、非常に良好な状態を保っていました。
試飲では、絶品というわけでは無いが、非常に独特で複雑な風味を持っていると評されました。
世界中で研究
これらを受けて、フランス・イタリア・スペイン・アメリカなど、様々な地域で海底でワインを熟成させる実験が始められました。
日本では、南伊豆の海底で熟成しているSUBRINAが有名です。
海底熟成ワインの効果
ワインを海底で熟成させるメリットは、ワインの理想的な保存環境であるということです。
一般的に、ワインの熟成には以下のような条件が適切とされています。
- 一定の温度(13度前後)
- 一定の湿度(70%前後)
- 振動がない
- 紫外線が当たらない
海中の水温はほとんど変わらないので、適切な深度に沈めることにより、一定の温度を維持することができます。空調管理なども必要ありません。
湿度については、水中はもちろん100%なので、理想とされる環境とは異なります。
振動については、水中は振動がなくて安定しているという意見と、波の振動が逆に良い影響を与えるという、正反対の意見があります。
水は紫外線をそんなに吸収する訳ではありませんが、海の場合、海面で反射したり、塩分などの不純物によって吸収されたりして、水深10メートル以上になるとほとんど影響がなくなると言われています。
その他、水圧や、ミネラル等の成分が、ワインの風味に影響を与えるという意見もあります。もちろんボトルは密閉されているので、そのような影響は考えにくいのですが、未解明の分野です。
熟成が速く進むという説もありますが、根拠に乏しいです。
しかし、何よりも最大のメリットは、海中で熟成させたというロマン・ストーリーでしょう。
ワインの風味は複雑なので、味や香りという事実よりも、雰囲気で楽しむという側面があります。海中で熟成させたという事実は、食事をより楽しく、豊かなものにしてくれるでしょう。
海底熟成ワインのデメリット
海底熟成ワインのデメリットをご紹介します。
値段が高い
海底での熟成は、通常の熟成に比べて手間がかかります。
そのため、そのコストは最終的な価格にも反映されます。
生産数が少ない
海底熟成は、一度に処理できる数が限られているので、市場に大量に出回るということがありません。
そのため、購入しようと思ってもすぐに手に入らないという問題が出てきます。
品質が安定しない
そもそも海底で熟成させるのは、環境が安定しているからというのが理由ではありますが、まだ未解明な点も多いです。
そのため品質にムラが生じて、購入の際のリスクとなる可能性があります。
生態系への影響
ボトルやケージを海底に沈めることが、海洋生態系にどのような影響を与えるかは、完全には解明されていません。
生物に隠れ家を与えることになり良い影響を与えるという意見がある一方、不測の事態を懸念する声もあります。
海底熟成ワインは意味ない?
ワインを海底で熟成させることに、意味はないという意見もあります。
実際のところ、海底で熟成させることでどのような変化があるのか、科学的な検証はできていません。
飲み比べてみて、風味が変わったと感じる人もいますが、ほとんどの場合、明確な差を感じることはできないでしょう。
したがって、海底で熟成させることは、無駄に値段が高くなるだけで無意味だという声は、正しいのかもしれません。
海底熟成ワインはプレゼントにおすすめ
結局のところ、海底熟成ワインのポイントは、ロマンと希少性です。
自分で飲むよりも、プレゼントに向いているワインと言えるでしょう。
フジツボや藻の跡がついたままのボトルは、海を感じさせてくれます。そのロマンこそが、最大のフレーバーとなります。物珍しさからも、必ず喜んでもらえるプレゼントとなるでしょう。
ワイン以外に海底熟成するものはある?
ワインやスパークリングワイン(シャンパン)以外にも、海底で熟成される飲食物がいくつかあります。その一部をご紹介します。
ウイスキー・スピリッツ
ウイスキーや、ブランデー、ラム、焼酎なども、海底での熟成が試みられています。
海底の環境が、独特の風味や特性を与えることが期待されています。
ビール
海底で熟成されるビールもあります。
クラフトビールブームの影響もあり、その地域性をアピールする、という側面もあるようです。
チーズ
一部のチーズ業者で、海水の中でチーズを熟成させる実験が行われています。
海底の安定した環境が、チーズの熟成に良い影響を与えると考えられています。
ソーセージ・ハム
ソーセージやハムなどの肉製品も、海底での熟成が試みられています。
これにより、肉の風味や食感に変化をもたらすことが期待されています。
海底以外の変わった熟成方法
海底熟成以外の、少し変わったユニークな熟成方法をご紹介します。
音楽
ワインに音楽を聞かせることで、その振動が、熟成に良い影響を与えるとされています。
海底の微振動が良い影響を与えるというのも、ここから来ています。
宇宙
国際宇宙ステーションにワインやウイスキーなどを持ち込んで、熟成させる実験が行われています。
無重力空間が熟成プロセスにどのような影響を与えるかが研究されています。
特殊な容器
伝統的にワインの熟成にはオーク樽が用いられてきました。
オーク以外の木材や、スチール、ステンレス、セラミックなど、様々な容器を使った熟成が試みられています。
極端な気候
砂漠、極寒、高地、洞窟など、極端な気候条件下で熟成させる実験が行われています。
動物
羊や馬などの動物の近くでワインを熟成させることで、自然な酵母やバクテリアがワインに影響を与えるという試みもあります。
日本で最初の海底熟成ワイン「サブリナ」の評判は?
日本初の海底熟成ワインとされる「サブリナ」について、概要と評価をご紹介します。
サブリナとは
「サブリナ(SUBRINA)」とは、神奈川県横浜市にある株式会社コモンセンスが手掛ける海底熟成ワインのブランドのことです。
ダイビングが趣味の青樹氏が、初めて口にした海底熟成ワインに感動し、2011年に事業開始しました。日本で最初に事業化された海底熟成ワインとされています。
サブリナの赤ワイン
サブリナでは、南アフリカのステレンボッシュで収穫されるシラー種の赤ワインが使用されています。
南アフリカのワインは高品質で低価格であることに加え、自然環境保護に注力していることが知られています。
海洋環境の保護にも務めるサブリナにとっては最適な選択となります。
南アフリカワインについては、下記の記事で詳しく説明しています。
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サブリナの海底貯蔵庫
サブリナの海底貯蔵庫は、南伊豆の奥石廊中木沖にあります。ダイビングスポットとして知られるヒリゾ浜の側です。
冷たい海水と、冬は荒れる海の振動が、熟成に良い影響を与えるとされています。
サブリナの評判
サブリナの海底熟成ワインは、Amazonで★4.6(243個)と、圧倒的に高評価を得ています。
その意見を分析して、まとめてみました。
良い評価
- プレゼントとして喜ばれた
- ラッピング・パッケージがきれい
- 味がまろやか
- 味に深みがあって美味しい
悪い評価
- (水圧に耐える特殊なシーリングのため)開けにくい
- ボトルにフジツボがついているので、開封した時に汚れる
- 味は普通。海底熟成とは…?
- 値段が高い
まとめ
まとめると、南アフリカのシラーの味を知っているワイン通にとっては、「海底熟成しても何も変わらないのでは…?」という評価です。もともと南アフリカのワインは低価格なので、単純に値段だけ高くなったという印象があります。
一方、プレゼントとしては大絶賛されています。パッケージの美しさ、海底熟成というロマン、そして飲みやすい味が、誰にとっても喜ばれるアイテムとなっています。
こんなにハズレがないプレゼントも珍しいと思いますので、ぜひ記念日や、大切な方への贈り物にご検討ください。
サブリナの海底熟成ワインはどこで買える?
サブリナのワインは、公式オンラインストアから購入できます。
Amazonや楽天でも購入できます。
まとめ 海底熟成ワインの評判とは
記事の内容をまとめます。
- 海底熟成ワインとは、海の中で熟成を進行させるワインのこと
- 海底熟成ワインの製造は、沈没船から引き上げたワインの状態が良かったことから始まった
- ワインを海底で熟成させることのメリットは、温度が一定で、紫外線が当たらず、振動がないこと
- 波の振動があることが良い、熟成が速く進む、海の成分が影響するなどの意見もあるが、科学的根拠はない
- 地上で熟成させたワインと、海底で熟成させたワインで、大きな変化は感じられないという意見が多い
- 海底熟成ワインは、ロマンとストーリーから、プレゼントとして最適
- 「サブリナ」は、日本で最初に海底熟成ワインを事業化したブランド
- サブリナは、南アフリカのシラー種のワインを、南伊豆に海底で熟成させている
- パッケージとボトルの美しさから、プレゼントとして大好評を得ている