「てぇてぇ」とは「尊い」という意味のスラングで、主にVTuber界隈で広く使われています。もともと「尊い」というスラングはありましたが、それが「てぇてぇ」として広まりました。ここではその元ネタや、どのように広まったのか、そしてなぜ気持ち悪いと感じる人がいるのかについて、分かりやすく簡単にご説明します。
「てぇてぇ」の元ネタは?何が気持ち悪いの?
「てぇてぇ」とは
「てぇてぇ」とは、VTuberファン・VTuber同士の間でよく使われる言葉で、「あの二人のVTuberは、仲良くて微笑ましい」くらいの意味です。最近はVTuber人気と一緒に海外にも広まり「TeTe」「TT」「贴贴」などと使われています。
「てぇてぇ」は「尊い(とうとい)」をわざと訛らせた言い方です。「尊い」は本来「崇高である」というような意味ですが、「オタク用語」としては「二人の関係性が素晴らしい」という意味で使われます。
「てぇてぇ」もその意味は引き継いでいますが、もっとカジュアルに「仲いいな」程度の感覚で使われています。
「尊い」とは
「尊い」とは、「素晴らしい」という意味の「オタク用語」です。「あまりの素晴らしさに、神々しさすら感じる」ということです。ですから、「尊い」は「自分が素晴らしい」という意味では使いません。「自分が応援している人が素晴らしい」という意味で、相手に対して使います。典型的な例は「推しが尊い」です。
「かわちい」の記事で書きましたが、「かわいい」の語源は「相手がまばゆいほど輝いていて、顔向けできない」という意味です。「尊い」もそれに近い感覚と言えます。自分は遠く離れた存在の第三者である、という意味が含まれています。
「かわちい」とは、どういう意味?
2024/3/25 用語
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このような「尊い」の使われ方の発祥は、2008年頃のmixiの書き込みのようですが、2010年頃から漫画やアニメファンの間で使われ始め、2015年頃には女性アイドルやジャニーズファンの間にも広まりました。
そして2018年には「尊い」が「てぇてぇ」として、VTuberファンの間に広まりました。
カップリングが尊い
漫画やアニメなどのフィクション作品で、自分が好きな異性のキャラクター(A)がいたとします。そしてそのキャラクターには、作品内で恋人(B)がいたとします。ここで作品を楽しむ方法として、いくつかのパターンがでてきます。
- Bになりきり、Aと付き合う
- 自分とBを置き換え、Aと付き合う
- 第三者として作品内に登場し、Aと付き合う
- 第三者として作品内に登場し、AとBのカップルを遠くから見守る
- 作品外から、AとBのカップルを遠くから見守る
「尊い」という言葉は、「相手が高貴過ぎて自分はとても近づけない」という意味が含まれているので、「4」か「5」の場合に使われます。
特に、自分が異性として関わることができないという理由から、「百合(女性同士)」「BL(男性同士)」のカップリングに対して、より使われる傾向にあります。
また、肉体的ではなく、よりプラトニック・純粋であり、精神的に高貴なものであるという意味が含まれることもあります。
VTuberとビジネスカップリング
「VTuber(ぶいちゅーばー)」とは、「Virtual YouTuber(ばーちゃる ゆーちゅーばー)」の略で、キャラクターのアバターを用いて、動画投稿や生放送を行う配信者のことです。
VTuberにもいろんなタイプがありますが、大手事務所に所属している人気VTuberは、半分アイドルとして活躍していることが多いです。つまり、ファンは異性が多いということです。ここで、上記の漫画やアニメのカップリングに対するスタンスと、同じようなことが起きてきます。
そもそもアバターを演じているわけなので、そのキャラクターが実在している訳ではありません。演者とキャラクターは別ということになります。そのキャラクターと付き合いたいと思っても、現実には存在しないので、叶わぬ夢なわけです。
またアイドルとして活躍しているので、恋人の存在が明らかになると、ファンから激しい攻撃にあいます。そのため、同性のキャラクターとだけで絡みがちになり、ファンもそれを求めているところがあります。結果、同性のカップリングが多数できます。もちろん、異性のカップリングの場合もあります。
VTuberはカップリングの仲の良さをアピールしたり、それをネタにジョークにしたりということをよくします。これは、演者もファンも、ショーの一部であると分かってやっていることです。「VTuberはプロレスと一緒」とはよく言われることです。カップリングは一大コンテンツであり、みんなフィクションとしてそれを楽しんでいるのです。
しかしキャラクター設定として演じている一方で、実際は演者同士も仲が良かったりして、キャラクターと演者の二面性を楽しむというのもVTuberならではと言えます。
このようにVTuber業界で「尊い」「てぇてぇ」という言葉が流行した理由は、カップリングが一大コンテンツであるということと、自分が仲良くなれる訳では無い、そもそもアバターだから現実に存在しない、ただキャラクターを演じているだけ、という若干の儚さが合わさった結果ではないかと思われます。
「てぇてぇ」の元ネタ・発祥
「てぇてぇ」の発祥は、漫画家・中音ナタさんが2018年にTwitterに投稿した4コマだとされています。ここでは「てぇてぇ」ではなく「てぇてえ」になっています。
これは、VTuber事務所「にじさんじ」に所属する月ノ美兎さんと樋口楓さんが仲良くしている様を、『ドラゴンボール』の「孫悟空」こと「尊悟空」が「尊い」を訛って「てぇてぇ」と言ったというものです。
ちなみに悟空の方言は、実際には存在しない、架空のものです。作者の鳥山明さんは名古屋在住ですが、原作の漫画ではそんなに訛っていません。アニメ声優の野沢雅子さんが、東北・江戸・名古屋あたりの方言を混ぜてアレンジし、独自に出来上がってきたもののようです。
「尊い」という言葉はVTuber業界でも使われていましたが、このツイート以降「てぇてぇ」に置き換わったと思われます。
BS日テレ『月イチのてぇてぇTV』
BS日テレで2019年4月26日~2019年の9月27日に『月イチのてぇてぇTV(てぇてぇてぇべぇ)』が、同じくBS日テレで2019年10月18日~2020年9月25日に『てぇてぇTV』が放送されました。VTuberのキズナアイさんが登場するバラエティ番組です。
てぇてぇ発祥は2018年ですが、2019年にはVTuber業界に広まっていたことが分かります。
VTuberと切り抜き動画
VTuberの人気を支えるものの一つに、切り抜き動画があります。VTuberは生放送をメインコンテンツとしている人が多く、毎日何時間も配信をしています。ファンがそれを全て視聴することは不可能に近いです。そこで、見どころだけを数分にまとめた切り抜き動画が大量にアップされています。切り抜き師(動画作成者)とVTuberは収益が折半される仕組みとなっています。切り抜き動画によって、新たなファンも増えるので、VTuber、VTuberファン、切り抜き師の間で、よい環境が回っていると言えます。
そして「てぇてぇ」瞬間というのは、切り抜きにちょうどよいのです。ファンにとっては、推しのいいところを見ることができますし、切り抜き師としては、センスの見せ所です。VTuber本人にとっても、需要の把握につながります。これが、著作権に問題のある、漫画・アニメ、アイドルなどとの違いです。VTuberの切り抜き動画は、半公式なので、堂々と作成することができます。切り抜き動画によって、より「てぇてぇ」が広まったと考えられます。演者やVtuber事務所も、需要があるので、積極的に「てぇてぇ」を展開してくことになります。
「てぇてぇ」が気持ち悪い理由
内輪ノリ
「てぇてぇ」は、VTuber業界には広まっていますが、一般的な認知度は高くありません。それをVTuberコミュニティの外で使ってしまうと、相手には伝わりません。
またVTuber業界には「てぇてぇ」以外にも「きちゃ」「してもろて」「たすかる」など、独自用語がたくさんあります。おそらく「てぇてぇ」を使う人は、そういう言葉も自然と使っており、全体として気持ち悪い口調になっていると思われます。
VTuber
VTuberは、編集済みの動画勢もいますが、生放送をメイン活動としている方が多いです。VTuberファンは、生放送を見て、だんだんとそのキャラクター全体を好きになるものです。また、VTuber同士の関係性を理解するためには、長くいろんなコンテンツに触れている必要があります。つまり、キャラクターの見た目だけではないということです。外部からすると、「てぇてぇ」と言われても、連続ドラマの途中の一場面を見せられるようなものなので、理解できません。それが気持ち悪さにつながっている可能性があります。
こちらは、約40分の切り抜き動画で、たくさんの人物が登場しますが、それぞれのキャラクターの関係性が分かっていないと、何も面白くないでしょう。全部わかるという方は、相当なホロライブファンです。
また、VTuberはキャラクターと演者の二面性があり、それも外部からすると理解しにくいところです。
アイドル
VTuber以前として、アイドル文化に嫌悪感を持つ人もいます。元々「アイドル」とは「偶像」という意味で、手が届かない存在です。それをわざわざ好きになるという理由が分からないというのです。
また極度に処女性を求めたり、異性との接触を極端に嫌うことも多く、フィクションと現実を混同しすぎと言われてしまいます。
百合・BL
LGBTを嫌うという訳ではなく、それをコンテンツとして消費するということに嫌悪感があります。
またアイドルやVTuberはキャラクター設定として、わざと演じることがあり、「営業」「ビジネス」などと言われます。多くの方はそれもショーの一部として楽しみますが、それも含めて気持ち悪いと感じる人もいます。
まとめ 「てぇてぇ」の意味と、気持ち悪いと感じる理由
「てぇてぇ」とは「尊い」をわざと訛らせたオタク用語・スラングです。特にVTuber業界で使われており、「VTuber同士が仲良くしている」のを見た時に「てぇてぇな」という風に使われます。
オタク用語としての「尊い」は、カップルの関係性がとても崇高で高貴である、という意味です。そこには、自分は近づくことのできない遠くにあるという意味が含まれています。その触れることができないという感覚が、バーチャルな存在であるVTuberと相性がよかったのではないかと思います。
また、VTuberはVTuber同士の掛け合い・関係性をコンテンツとしています。その「てぇてぇ」瞬間が、切り抜き動画により拡散され、流行語になったものと思われます。