隅田川は東京を代表する川として知られていますが、たびたびSNSでクラゲがいたという報告が上がってきます。あれ、クラゲって海の生物では……? この記事では、隅田川にクラゲがいる理由と、発生するクラゲの種類について、詳しく解説しています。また隅田川は、釣りスポットとしても人気です。生息している魚や、よく釣れる魚、釣った魚は食べられるかについても解説します。
隅田川にクラゲや海水魚がいる理由
隅田川でクラゲが大量発生する理由と、クラゲの種類、発生する時期について解説します。
隅田川でクラゲが大量発生?
東京にある隅田川では、度々クラゲの大量発生が目撃されています。
なにかゴミが浮いてるな―と近づいてみたら、クラゲだったということがよくあります。
でもちょっと待ってください。クラゲって川にいるんでしたっけ?
クラゲって川にいるものなの?
クラゲは漢字で「海月」と書くことからも、海の生物として知られています。
しかし極わずかですが、淡水に生息するクラゲもいます。
世界には3,000種類以上のクラゲがいて、日本近辺には200種類いると言われていますが、日本の淡水で確認されているのは、下記の3種のみです。
- マミズクラゲ:神出鬼没で日本各地の池や水槽に突如現れる。体長2cmほど。
- ユメノクラゲ:数十年に一度レベルでしか発見されない激レア。体長2mm以下?
- イセマミズクラゲ:1923年以降発見されていない。絶滅したと見られる。
生息地は、湖や貯水池ような流れが穏やかな水域に限られます。流れの速い川のような場所にはいません。それは当然です。クラゲは泳ぐ力が弱く、ほとんど浮いているだけなので、川であれば流れていって終わりです。
しかもちっちゃいです! 川にいたとしても、簡単に確認できるようなものではありません。
ですから、隅田川で目撃されているクラゲは、淡水に生息するクラゲではありません。
隅田川にクラゲが大量発生した原因
では、なぜ隅田川にクラゲがいたのでしょうか。
それは、隅田川が(ほぼ)海だからです!
隅田川は、岩淵水門から東京湾までの約23.5kmの川です。
河口付近はもともと海で、海抜も0mに近いです。
満潮になると海水が逆流し、水門辺りまで上がってきます。その海水に乗ってクラゲも流れてくるのでしょう。
干潮時には海水も引いていきますが、取り残されたクラゲは死滅してしまうようです。
隅田川のクラゲの種類は?毒はある?
隅田川のクラゲで目撃報告が多いのは、ミズクラゲとアカクラゲです。
強い毒を持ったクラゲではありませんが、触れないほうがいいでしょう。
ミズクラゲ
「ミズクラゲ(Aurelia aurita)」は、日本で一番よく見られるクラゲで、クローバーのような模様(口腕)が特徴です。
直径30cmほどになります。
強い毒はありませんが、針に触れるとかゆみがあるかもしれません。
アカクラゲ
「アカクラゲ(Chrysaora pacifica)」は、放射線状に広がる褐色の縞模様が特徴です。
傘部分の直径が10cm、触手は2mにもなります。
触手に触れると、炎症やかぶれを引き起こすことがあります。多くの場合たいしたことにはなりませんが、人によってはアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、注意が必要です。
乾燥した粉を吸い込むと、くしゃみを引き起こすことから「ハクションクラゲ」とも呼ばれます。
隅田川でクラゲが発生する時期は?
クラゲは、各地で決まった時期に多くなるという傾向がありますが、予測不能で大量発生することもよくあります。
東京湾では、毎年4月~5月に、ミズクラゲやアカクラゲが多くなるようです。
この時期には、隅田川の河口から浅草辺りまでの間でクラゲが見つかることは、珍しいことではありません。
それ以外の時期に大量発生することもありますが、たいてい数日の内に消えてしまうので、見つかるかどうかは運次第です。
クラゲだけじゃない!隅田川にいる主な魚
隅田川に生息する魚の種類と、よく釣れる魚、釣った魚を食べてよいかについて解説します。
隅田川にいる魚の種類
隅田川は、淡水と海水が混じった汽水域のため、淡水魚と海水魚の両方が確認できます。
地点によって塩分濃度が変わるので、魚の種類も変わってきます。
以下に、魚以外の生物も含めて、代表的なものをご紹介します。
淡水魚
- ニゴイ
- ギンブナ
- ウグイ
- ブラックバス
- ウナギ
- テナガエビ
- アメリカナマズ
- スッポン
- アカミミガメ
海水魚
- スズキ(シーバス)
- ハゼ
- クロダイ
- キビレ(キチヌ)
- メバル
- ボラ
- エイ
隅田川で一番釣れる魚は?
何が釣れるかはエリアによりますが、割とどこでも釣れるのがシーバスです。
次点で、クロダイとなっています。
潮の干満によっても変わってきます。
隅田川は釣り禁止?
隅田川には漁業権のようなものは設定されていませんが、一部のエリアは、投げ釣り・ルアー釣りが禁止されているので注意しましょう。
隅田川には、全域にわたり「隅田川テラス」と呼ばれる遊歩道が整備されており、散歩をしたりランニングをしたりと、多くの人が楽しんでいます。
シーバス狙いの釣り人にとっても人気エリアですが、通行者の安全を考えて、投げ釣りが禁止されているものと思われます。
ルアー以外の仕掛けは特に禁止されていません。
隅田川で釣った魚は食べられる?
隅田川で釣った魚を食べることは、あまりおすすめできません。
「江戸前」に代表されるように、かつて東京湾は海産物の宝庫でした。
しかし現在の東京湾に綺麗なイメージを持っている方は少ないと思われます。実際に2021年の東京オリンピックでは、お台場のトライアスロン会場の水質が大問題になったことは、記憶に新しいと思います。
隅田川も昔は美しい川でしたが、変わったのは、第二次世界大戦後の工業化です。生活排水や工業排水が直接流れ込み、1950年代にはひどい悪臭がして、窓が開けれないほどだったそうです。
1960年代から70年代にかけて、公害が社会問題になると、隅田川でも水質改善策が取られるようになります。結果、ずいぶんとマシな状態になりましたが、まだ問題は残っています。
東京23区の8割の地域では、家庭や工場からの排水と雨水を一緒の管で流す「合流式下水」という下水管が使われています。集められた水は、下水処理場できれいにしてから川に放流されるのですが、大雨が降ると処理施設のキャパをオーバーしてしまうので、未処理のまま川に流されます。つまり、トイレからの汚水もそのまま川に流れます。
また、隅田川は勾配が緩いので、流れが遅く、川底にはドロが溜まりやすくなっています。
ですから、隅田川で釣った魚を食べられるかと言われれば、実際に食べている人もいるけど、そんなに勧められるものではない、ということになります。
墨田川で魚が大量死している?
隅田川では、魚の大量死(へい死)も度々報告されています。
- 2019年7月:約3,000匹。酸素不足。
- 2022年7月:約1,000匹。原因不明。
水質汚染や温暖化、地震との関係を心配する声もありますが、それは否定されています。ただ、根本的な原因は不明となっています。
クラゲの大量発生と一緒で、自然のプロセスを予測することは難しいです。
隅田川で跳ねる魚は何?
隅田川を眺めていたら、ぴょんぴょん跳ねている大きめの魚を見た、ということがあるかもしれません。
おそらくそれはボラです。
ボラが跳ねる理由は、分かっていません。
よく言われるのは、体に付いた寄生虫を叩き落しているということです。しかし寄生虫が邪魔なのは、他の魚にとっても同じことでしょう。なぜボラだけが跳ねるのかという疑問は残ります。
水中の酸素濃度が低い時に跳ねることが多いので呼吸と関係している、という研究もあります。
結局のところは、ボラのみぞ知るというところです。
ちなみに、釣り人の間では「ボラが跳ねると釣れない」という言い伝えがありますが、この真偽や理由も不明です。
まとめ 隅田川にいるクラゲや魚について
記事の内容をまとめます。
- 隅田川は淡水と海水が混じる汽水域のため、クラゲや海水魚が確認できる
- 隅田川で確認できるクラゲはミズクラゲやアカクラゲ
- アカクラゲに触れると炎症することがあるので注意
- 隅田川では4月~5月にクラゲが見られることが多い
- 隅田川でよく釣れる魚はシーバスとクロダイ
- 隅田川での釣りは禁止されていないが、投げ釣りが禁止されているエリアはある
- 隅田川の水質はきれいとは言えないので、食べる際は注意する