高級時計として知られるオメガですが、20~30年前は、そこまで高い時計とは、みなされていませんでした。それが、近年どんどん価格が上昇し、特にここ2~3年は、値上がりが続いています。この記事では、オメガとその代表モデルであるスピードマスター、そしてスピードマスターがなぜ高くなったのか、またどのくらい高くなったのかについて、詳しく解説しています。
ポイント
- オメガとスピードマスターについて
- 世界的に時計が値上がりしている理由
- オメガのスピードマスターが特に値上がりしている理由
- スピードマスターはどれくらい値上がりしたか
昔は安かったオメガのスピードマスターが値上がりした理由
オメガとスピードマスターの概要、そしてそれがなぜ値上がりしているのかについて、世界的な傾向も含めて解説します。
オメガとは
「オメガ(OMEGA)」は、スイスの高級腕時計メーカーです。1848年に、ルイ・ブランがスイスで設立した「ラ・ジェネラル・ウォッチ・カンパニー」が前身です。
創業と名前の由来
1848年、ルイ・ブランがスイスのラ・ショー・ド・フォンにて、懐中時計の組立作業を行う「ラ・ジェネラル・ウォッチ・カンパニー」を設立しました。
部品の標準化をすることで業務を効率化し、高品質の懐中時計を作る会社として評判となりました。
1894年、時計のムーブメントである「オメガ」を発表すると、その高精度さ、メンテナンスの容易さから、業界で大変評判となりました。「オメガ(Ω)」とは、ギリシャ文字の並びで最後であり、「究極」という意味があります。
この成功により、1903年に、会社名を「オメガ」に改名しました。
代表的なモデル
オメガの代表的なモデルをご紹介します。
- スピードマスター:1957年に発売された、オメガを代表するモデルです。1969年に月面着陸した、アポロ11号の宇宙飛行士が着用していたことで有名です。そのため、「ムーンウォッチ」とも称されます。
- シーマスター:1948年に発表された、ダイバーズウォッチです。映画「007」でジェームズ・ボンドが身につけていることでも知られています。
- コンステレーション:1952年に発表された、洗練されたデザインのモデルです。
- デ・ヴィル:1967年に発表された、エレガントなデザインが特徴の、ドレスウォッチです。
スポーツ・宇宙との関係
オメガはその品質から、スポーツ分野との関わりが深いです。
- オリンピック:オメガは、1932年のロサンゼルスオリンピックの時から、公式のタイムキーパーを努めています。
- プロスポーツ:ゴルフ、セーリング、陸上競技でも、公式タイムキーパーとなっています。
- 宇宙飛行:NASAは、1960年代に様々な時計の耐久テストを行いました。これに唯一合格したのがスピードマスターです。NASAはオメガを公式パートナーに選定し、現在でもその関係は続いています。
スピードマスターとは
スピードマスターは、オメガを代表する時計コレクションです。特に、航空宇宙とモータースポーツとの関連で知られています。
スピードマスターは、1957年に発表されました。モータースポーツのタイム測定のために開発され、クロノグラフ(ストップウォッチ)とタキメータースケール(平均速度を測るための目盛り)が特徴です。
1960年代に、スピードマスターはNASAの過酷なテストを唯一クリアし、有人宇宙ミッションの公式時計として選ばれました。
1965年のジェミニ4号のミッションで、エド・ホワイトが宇宙遊泳を行った際、スピードマスターを着用していました。
1969年のアポロ11号のミッションで、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面着陸をした際にも装着していました。
初めて月面に降り立った時計ということから、「ムーンウォッチ」の愛称がつけられました。
オメガの新品の定価が値上がりしている理由
近年、オメガの新品の時計の定価は、値上がりし続けています。
この価格改定の理由は、人件費や原材料費の高騰、世界情勢の不安定化があるとされています。
また、スイスの物価は上昇していますが、日本はデフレで、円安です。
2022年2月には、ほぼ全モデルを約7%値上げしました。さらに7月には、一部のモデルを約6~7%値上げしています。
2023年2月には、またもや、ほぼ全モデルが約6~8%値上げしました。6月にも、一部のモデルが約7%値上げしています。
これにより、中古市場でも値上がり傾向にあります。
中古の高級時計が値上がりしている理由
オメガに限らず、高級腕時計全般が値上がりしている理由について解説します。
富裕層の増加と、社会の不安定化
日本では不況が続いていますが、世界的には経済成長により、富裕層が拡大しています。
一方、国際情勢は混乱を極め、先行きが不透明です。通貨のインフレリスクもあります。
富裕層はリスク分散のため、伝統的な金融商品以外の投資先を求めており、時計が注目されることになりました。
時計の特性
時計は小型なので、保管や輸送が容易です。
またガラスや金属で出来ているため、劣化が少ないと言えます。そのため、価値が下がりにくいです。
さらに、単なる金融商品ではなく、実用性もあり、ファンションセンスや社会的ステータスを表すという面もあり、趣味として楽しいものです。
インターネットとSNS
コレクションが価値を持つためには、同じ価値観を共有できる人が存在するということが前提となります。
例えば、時計の一部の塗料が変わったとします。多くの人にとってはどうでもいい話ではありますが、マニアにとっては重要な意味を持つことになり、価格の違いに繋がります。
現在は、インターネットやSNSの発達により、時計に関する様々な情報が整理され、リアルタイムに共有されるようになりました。
それにより、価値観と相場も共有されるようになり、マーケットの下地が出来上がってきました。
時計メーカーのマーケティング戦略
時計メーカーも、限定商品やコラボレーション商品で希少性を煽り、マーケットのニーズに応えるような戦略を取ります。
時計のオークションサイトや、専門店が増加し、世界中どこからでも、気になる時計を購入できるようになりました。
これにより、投資としての時計マーケットが完成し、富裕層の資金が流入し、全体的な値上がりへと繋がっているのです。
オメガのスピードマスターが特に値上がりしている理由
時計全般が値上がりしている理由が分かったところで、その中でもオメガ、特にスピードマスターが注目されているのかについて解説します。
ロレックスが値上がりしすぎた
投資目的の時計として、最初に注目されたのはロレックスでした。
そのロレックスが値上がりしすぎたため、次の優秀な投資先として、オメガが注目されるようになりました。
ロレックスのアンティークはなぜ安いの?
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東京オリンピックの影響
2021年、東京オリンピック2020が開催されました。
オメガはオリンピック公式タイムキーパーなので、当然注目が集まることになりました。
知名度があり、情報が整理されている
オメガはスピードマスターを、1957年から作り続けています。60年以上に渡り、同じシリーズの商品を作り続けることは、時計に限らずとも、極めて稀なことです。
しかもその製品に関する細かな情報が、きれいに整理され公開されています。この情報の精度は、ロレックス以上です。これにより、誰もがコレクションの価値を、適切に評価できるようになりました。
さらに、人類史上初めて月面着陸した時計として、十分な知名度とロマンがあり、マニア心をくすぐります。
希少性
オメガは同じスピードマスターを作っている訳ではなく、限定モデルも多く出しています。
これらの希少性が高い商品は、市場価格を押し上げる要因となっています。
高品質と耐久性
オメガのスピードマスターは、元々、高い品質と耐久性で知られています。だからこそ、オリンピックやNASAの公式パートナーとして選ばれたのです。
このため、購入時よりも価値が下がることが少なく、優秀な投資先として見ることができます。
オメガのスピードマスターは、昔はどれくらい安かった?
中古のスピードマスターが、実際にどのくらい高くなったかについて、具体例を用いて解説します。
オメガは中古が特に安かった
2000年頃、まだ中古市場でオメガは注目されていませんでした。そのため、中古のスピードマスターは、新品の半額以下で買えることが普通でした。物によっては新品の2~3割の価格ということもありました。
新品のオメガの定価が50万円だった場合、中古は10万円程度で買うこともできたということです。
ロレックスの中古は、新品に対して8割くらいの値段になることがあるので、それに比べれば割安感があると言えます。
新品自体が値上がりした
2000年頃は、スピードマスターの新品を30~40万円ほどで購入できました。
現在は100万円以上するのが当たり前となっています。
これには、スイスの物価高と、円安の両方の影響があります。
投資先として注目された
ロレックスは優秀な投資先としてみなされると、どんどん価格が高騰していきました。それにより、なかなか簡単には手に入れることができない時計となりました。
そして、ロレックスの次に注目されたのがオメガです。
オメガの中古市場も高騰し、新品価格の7割近くになることも珍しくなくなりました。
スピードマスターはどのくらい高くなったの?
ものすごく簡単にまとめると、スピードマスターは20~30年前に比べ、新品価格が2倍になり、中古価格が20%から70%に上昇した、という感じです。モデルにもよりますが、中古価格は2~7倍になっています。
- 新品:50万円 → 100万円(2倍)
- 中古:10万円 → 70万円(7倍)
上記は極端な例ですが、実際の中古の価格例を以下にご紹介します。モデルによって、価格の上昇率に違いがあることが分かります。
モデル | 2000年頃 | 2020年頃 | 2023年現在 |
---|---|---|---|
スピードマスター プロフェッショナル 3570.50 | 15万円 | 35万円 | 60万円 |
スピードマスター オートマチック 3510.50 | 8万円 | 15万円 | 25万円 |
スピードマスター デイト 3513.30 | 10万円 | 15万円 | 20万円 |
まとめ 昔は安かったオメガのスピードマスターが値上がりした理由
記事の内容をまとめます。
- オメガとは、1848年に創業した、スイスの高級腕時計メーカー
- オメガの代表的なモデルは、スピードマスター、シーマスター、コンステレーション、デ・ヴィルがある
- スピードマスターは、オリンピックの公式タイムキーパーであり、アポロ11号と共に月面着陸をしたことから、「ムーンウォッチ」のニックネームがある
- 20~30年前は、オメガは高級時計としてはそこまで高くなく、中古も割安だった
- 人件費や材料費の高騰により、新品価格が2倍近くなった
- 富裕層の投資先として、時計が注目されるようになった
- 最初はロレックスが投資先として人気だったが、高くなりすぎたので、オメガに注目が集まった
- スピードマスターが注目された理由は、高品質、長い歴史とロマンがある、コレクション性がある、情報が整理されている、ということが挙げられる
- 新品が高くなったことに加え、中古も高くなったことにより、20~30年前に比べ、2~7倍くらいの値がつけられるようになった