近年、「気功」に興味をもつ方が増えています。
実際に気功を始めようという方も多いと思いますが、すぐに飛びつく前に、まずは概要を理解しておきましょう。気功は幅が広いので、自分が思っていなかった方向に進んでしまうかもしれません。
気功を簡単に独学するには
気功とは
気功とは、「気」を操る技術のことですが、決まった定義はありません。一説には数千の流派があると言われています。
健康を目的としたもの、武術を目的としたものなど、願望実現を目的としたものなど、様々な流派があります。長い歴史の中で、いろいろな宗教とも結びついています。
やり方も、じっと動かずに瞑想するものだったり、お年寄りでもできるような簡単な運動だったり、武術的な激しいトレーニングだったりと様々です。
このような違いがあるために、本やDVDなどを見ても、統一的な知識が得られなかったりします。そこが独学の難しいところでもあります。
気功の独学は危険?
一般的に、気功の独学は難しいというより、危険と言われています。気功は主に健康を目指すものですが、間違ったやり方をすると逆効果になることがあるためです。
どんなことが起きることがあるのかということを、あらかじめ知っておきましょう。
偏差が起きる
気功の練習をしていると、めまい、頭痛、動悸、疲労感などが起きることがあります。
これらのことを「偏差(へんさ)」と言います。
偏差が起きる理由は、気が頭に上ってしまった、気が一箇所に滞留している、気が外に流れ続けている、などがあります。
偏差が起きた時に適切な対処ができるように、独学ではなく、経験のある指導者から習ったほうがいいと言われています。
気を使いすぎる
「気」が何かということは、よく分かっていませんが、生命エネルギーのようなものだと考えられています。
気功はこの生命エネルギーを高めることを目的としているのですが、正しい使い方をしないと、逆に使いすぎてしまうことがあります。そうすと全身の倦怠感、無力感へとつながります。
武術家や整体師、セラピストなどが、知らないうちに「気」を使いすぎてしまうこともよくあります。
多くの気功の流派では、どうやって気を減らさないようにするかを技術として持っていますが、秘伝として外部に公開していません。それはケチでやっているのではなく、本や動画では正しく伝わらないからという理由でもあります。気功教室に通って、正しいやり方を学ぶことが推奨されています。
偏差の治し方
偏差が起きたら、気功の練習を中断し、ゆっくりと休みましょう。
気功の先生にすぐに相談するのがいいのですが、独学で行っていて先生がいないという時のために、簡単にできる対処法をご紹介します。
それはお相撲さんのやる「四股踏み」です。
四股踏みは、気を下に降ろす効果があると言われています。多くの場合、偏差は気が頭に上がっている状態ですので、それを下げてあげるのです。地面を踏み込むように四股踏みをし、頭から足に、足の裏から地面に気が流れていくことをイメージすると、気持ちが落ち着いてくるのではないかと思います。文字通り「気が落ちる」ということですね。
本や動画で独学は可能か
気功というのは、ただでさえよく分からないものなので、ゼロから本で学ぶというのは難しいと思います。ある程度、気功の経験を積んだあとに、本で知識を得るようにするとよいでしょう。
一方、動画サイトやDVDのようなものであれば、独学も可能なのではないかと思います。問題は、実際にできているのかどうか分からないという点ですね。結局のところ、思い込みのようなところもありますので、自分はできていると確信が持てるかどうかだと思います。
確信が持てなければ、独学ではなく、気功教室に通うことをおすすめします。本や動画は、自分にあった教室を見つけるための入口と考えるとよいでしょう。
気功教室の探し方
気功教室には、カルチャーセンターのようなカジュアルなところから、本格的なところまで、様々なものががあります。最近は、オンラインの教室も増えています。
体操、武術、瞑想など、教室によって方針が様々ですので、いくつか見学をしてみるのがいいでしょう。
気をマスターするには数年から数十年かかるという流派、練習時間は関係なくて「伝授」をすればすぐに使えるようになるという流派など、時間に関する考え方も様々です。どれが正しいということは言えませんので、自分の感性に合う教室を選びましょう。
また可能であれば、遠くの教室よりも、近くて通いやすい教室の方がおすすめです。移動時間は、モチベーションに大きく影響します。
簡単な気功のやり方
独学は難しいということをご説明しましたが、比較的簡単にできる方法をご紹介します。多くの流派で基礎とされているやり方です。
スワイショウのやり方
スワイショウは、誰にでも簡単にできる体操です。気功の基本動作として、多くの流派に取り入れられています。
気功と考えずとも、単に血行のよくなる運動としても優れていますので、ぜひお試しください。
大きく分けて、手を前後に振るタイプと、左右に回転させるタイプがあります。それぞれ、そのやり方を見てみましょう。
手を前後に振るスワイショウ
まず、両足を肩幅くらいに開いて立ちます。
膝を軽く曲げて腰を落としましょう。この時に、重心は後ろよりにします。
このまま、両手を前後にぶらぶらさせます。片方が前、片方が後ろと交互にならないように、両手を一緒に、前、後、前、後と振っていきます。力入れずに、振り子のように手が揺られているようにしていきましょう。
視線はぼーっと前の方を見ます。
これを30~40分ほど続けます。最初は10分程度から慣れていくのがいいでしょう。
以上です。簡単ですね。
手を左右に回転させるスワイショウ
立ち方は同じです。足を肩幅くらいに開いて、膝を軽く曲げて腰を落としましょう。武術的な気功では、腰を膝のあたりまで落としたりするのですが、最初は少し曲げる程度で構いません。
体の中心を軸にして、両手を体に巻き付けるように、左右に振っていきます。でんでん太鼓のようなイメージです。両手を回転させると、脇腹と腰のあたりに手がパンッと当たります。その刺激を楽しんでください。
頭は左右に振らずに、まっすぐ遠くの方を見るようにします。
これも30~40分ほど続けるようにします。慣れるまでは10分程度から始めましょう。
タントウコウのやり方
スワイショウと異なり、タントウコウはじっと動かない気功です。立って行なう瞑想、立禅とも呼ばれています。
タントウコウはとても地味ですが、もっとも効果的な気功であると考えている流派も多いです。
やり方をご説明します。
まず、両足を肩幅くらいに開きます。
膝を少し曲げて、腰を軽く落とします。前のめりにならないように、重心は後ろにかけましょう。
足の指先は、平行にするか、少し内向きにします。極端な内股や、ガニ股にならないようにしましょう。
両手を、軽く体の前に伸ばします。肩の高さからは少し下げて構いません。
手のひらを内側に向けます。両腕で、体の前に円を作るイメージです。両手の指先は触れずに、空いた状態としておきます。
目を閉じてゆっくり呼吸をします。
以上です。
タントウコウは、長く続ければ続けるほど良いとされています。できれば30分以上は続けたいところですが、最初はなかなか集中できずに難しいと思います。まさに「気が散る」という状態ですね。無理をせずに5分程度から初めて、徐々に時間を伸ばしていきましょう。
手のひらから気を出すやり方
気は全身を巡りますが、手が一番敏感なので、手のひらや指先から気を出すのが一番簡単です。
特に手のひらには「労宮(ろうきゅう)」というツボがあり、気が一番出入りしやすい場所と言われています。労宮は、手の指を曲げた時に、手のひらが一番凹む場所にあります。指で軽くなでると、ゾワッとした感じがして、すぐに分かるのではないかと思います。
では、この労宮から気を出す方法をご紹介します。
手のひらを合わせて、こすってください。だんだん手のひらが熱くなってきて、じんわりした感じがしてくると思います。
そうしたら、手のひらを向かい合わせたまま、5cmほど離してください。手のひらの間に、じんわりした感じが残っていますね。それを感じたら、また手を合わせてこすります。また開いて、こすってを、じんわりした感覚が強くなるまで続けてください。
感覚が強くなってきたら、手のひらを逆に少し遠ざけます。最初はほんの1cmくらい遠ざけます。この時に、じんわりした感覚が少し弱まると思います。そうしたら、また近づけます。感覚が強くなるはずです。手のひらで、目に見えない風船を押さえつけているかのように、近づけたり、遠ざけたりしましょう。
しばらく続けていると、最初は1cmくらいの前後だったものが、5cm、10cmと大きくしていくことができます。だんだん、見えない風船が大きくなっていきます。この見えない風船が「気」だと考えてください。本当にそうなのかと疑問に思わず、そうなんだと思いこむことが重要です。
ある程度大きくなったら、ぎゅーっと小さくしたり、バッと大きくしたりしても、感覚は消えずにむしろ強まっていくと思います。そうしてできた「気の玉」は、自分で吸収したり、相手に与えたりすることができるようになります。
まとめ:気功はまだやるな、その理由
気功の独学の難しさと、簡単な気功のやり方についてご説明しました。
独学が難しいのは、
- 流派が多く、目的も練習方法も様々なので、統一的な知識を得にくい
- 間違ったやり方をすると、逆効果になることがある
- 正しいやり方は、秘伝であり、公開されていない
というのが主な理由です。
気功の基本であり、簡単にできるやり方として、
- スワイショウ
- タントウコウ
- 手のひらから気を出す
やり方をご紹介しました。
お役に立ちましたら幸いです。