シチズンの腕時計と言えば光発電のエコ・ドライブが有名です。店頭で時計を選んでいれば、店員さんから、エコ・ドライブは電池交換がいらないのでおすすめですよ、と案内されることでしょう。でも、本当に電池交換は不要なのでしょうか。この記事では、エコ・ドライブの概要と、二次電池の寿命、オーバーホールの頻度と費用について、詳しく解説しています。
ポイント
- エコ・ドライブとは
- 光発電と二次電池
- エコ・ドライブの寿命
- エコ・ドライブのオーバーホールについて
シチズンのエコドライブに寿命はある?
シチズンのエコ・ドライブの概要と歴史、光発電の歴史と環境問題、エコ・ドライブで使用している二次電池について解説します。
シチズンのエコドライブとは
「エコ・ドライブ(Eco-Drive)」とは、シチズンが開発した、光発電の技術です。
わずかな光でも発電できることが特徴で、暗闇でも6ヶ月以上時計を動かすことができるとされています。これにより、電池交換をする必要がなく、時計が止まる心配がなくなります。
ちなみに「6ヶ月以上」としているのには理由があり、冬場に長袖を着て隠れてしまっても止まることがないようにという意味を込めて、半年という基準を設けているとのことです。
また単に電池交換が不要というだけではなく、環境に配慮した取り組みから、1996年には腕時計として初めて「エコマーク商品」に認定され、2014年には「エコマークアワード金賞」を受賞しました。
エコドライブの歴史
1969年に、セイコーが世界初のクォーツ式腕時計を発売すると、ゼンマイを動力とする機械式時計に変わり、電池を動力とするクォーツ式時計が一気に普及しました。
しかしこれには問題もありました。クォーツ式の時計は、定期的に電池交換が必要となるのですが、あまりにも急速に普及したため、電池交換できる環境が整っていなかったのです。
そこでシチズンは、電池交換が不要な時計を目指し、1976年に世界初のアナログ式光発電時計を発売しました。
その後改良を続け、1995年以降は「エコ・ドライブ」という名称で統一されるようになりました。
太陽電池の歴史と「エコ」
単に電池交換が不要な時計を目指したのであれば、なぜ「エコ」という言葉がついているのかと、疑問に思ったかも知れません。これには、太陽電池に関する歴史的背景があります。
太陽電池の原理は、1839年に、フランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレル(Alexandre Edmont Becquerel)によって発見されました。
1884年に、アメリカの発明家チャールズ・フリッツ(Charles Fritts)が、世界で初めてセレンを用いた光発電に成功します。これは変換効率が極端に悪かったのですが、カメラの露出計など一部の用途に使用されました。
1954年に、ベル研究所がシリコンを用いた太陽電池を発明すると、セレン型に取って代わりました。しかしまだ、宇宙開発などの研究用途に留まっていました。
1973年と1979年に石油ショックが起きると、エネルギーの多様化が急務となり、太陽光発電や風力発電などの、再生可能エネルギーへの注目が集まります。商用利用としての太陽光発電の研究が本格的に始められたのもこの頃です。
また石油ショックとは直接関係がありませんが、1970年代に世界的に環境汚染が問題となり、環境保護活動への関心が高まりました。
そういう状況下でエコ・ドライブの開発も進められたので、光発電と環境保護というのは、セットになっているのです。
シチズンのエコドライブに電池はない?
エコ・ドライブは、電池交換が不要な時計を目指して開発されたという話をしました。では、エコ・ドライブに電池は入っていないのでしょうか?
実はエコ・ドライブでも電池は使用しています。ただし、「一次電池」ではなく「二次電池」です。
二次電池とは
「二次電池」とは、いわゆる「充電池」「蓄電池」のことです。充電をすることで、繰り返し使用することができます。
それに対して、使い捨ての電池を「一次電池」と言います。
つまりそれまでの腕時計は、「一次電池」を使用していたので定期的な電池交換が必要だったが、エコ・ドライブは「二次電池」を使用しているので電池交換が不要になったということです。
電池を動力源としている点は同じです。
エコドライブの電池交換は必要?
一般的に、二次電池は充電と放電を繰り返すことにより、徐々に劣化していき、電池の容量が減っていきます。
また、極端な高温や低温環境も劣化を速める要因となります。
それはエコ・ドライブで使用されている二次電池にとっても同じことで、少しずつ劣化はしていきます。また、時計ならではの要因として、歯車の油切れなどによって、消費電力が大きくなっていくという問題もあります。
つまり、エコ・ドライブであっても永久に使用できるということはありません。ただしそれは、電池の寿命というより、故障に近いと言えるでしょう。
単純に電池交換をするだけでなく、歯車を含めたオーバーホールが推奨されます。
シチズン・エコドライブの寿命は10年?オーバーホールの頻度は?
エコ・ドライブで使用している二次電池の寿命、オーバーホールの頻度、料金について解説します。
エコドライブの二次電池は何年で交換が必要?
理論上、二次電池には寿命があるとは言うものの、実際のところエコ・ドライブの電池が何年で交換が必要かということは分かりません。
通常使用の範囲であれば、10年程度は持つでしょう。しかし10年も使っていれば、何かしら別の問題が出てくるものです。
つまり、電池より先に別のところに問題が出るので、それを直すと同時に電池交換もされることが多いです。ですから、二次電池の寿命まで使い切るということは、稀なことではないかと思われます。
シチズンとしては、5年に1度程度のオーバーホールを推奨しています。そこまででなくとも、10年に1度はメンテナンスに出したほうがいいというか、おそらくそうする必要が出てくるでしょう。
エコドライブが止まったら?
エコ・ドライブが完全に動かなくなってしまった場合、二次電池の寿命ではなく、充電不足のことが多いです。
まずは、屋外の強い光に2日程度当てましょう。それでも動かなければ、故障の可能性がありますので、修理に出しましょう。
光の強さというのは体感以上に違っており、充電速度の違いに直結しています。充電に必要な時間はモデルによって異なりますが、「AQ4091-56A」を例にご紹介します。
明るさ(ルクス)
- 快晴の屋外:100,000
- 曇天の屋外:10,000
- 蛍光灯直下:3,000
- 屋内照明下:500
動いている状態で1日保つのに必要な充電時間
- 快晴の屋外:4分
- 曇天の屋外:12分
- 蛍光灯直下:40分
- 屋内照明下:240分
停止状態から動き出すまでに必要な充電時間
- 快晴の屋外:1.5時間
- 曇天の屋外:2時間
- 蛍光灯直下:3.5時間
- 屋内照明下:19時間
停止状態から充電完了までに必要な充電時間
- 快晴の屋外:30時間
- 曇天の屋外:45時間
- 蛍光灯直下:150時間
- 屋内照明下:―
充電が切れた状態からだと、晴天時の屋外でも、満充電まで30時間かかることが分かります。つまり丸2日以上です。
ですから、動かなくなったと思ったら、屋内照明でがんばるのではなく、屋外で充電を試みる必要があります。
エコドライブのオーバーホール料金は?
シチズン公式の修理メニューは、以下の4つです。
- 内装修理(分解掃除)
- 外装修理
- 指定箇所修理
- 電池交換
いわゆるオーバーホールに相当するのは「内装修理(分解掃除)」です。これには「電池交換」と「外装修理」も含まれます。つまり、全部やってくれるということです。
注意が必要なのは「電池交換」はエコ・ドライブの二次電池には対応していません。つまりエコ・ドライブの電池を交換したければ「内装修理」を依頼する必要があるということです。
シチズン公式に修理を依頼した場合の費用は、モデルにもよりますが、内装修理として17,000円、プラス部品代が基本となります。納期は1ヶ月弱です。
シチズンオーナーズクラブ対象のモデル「ザ・シチズン」「エコ・ドライブ ワン」「カンパノラ」は、修理費が高くなります。例えば、上で例に出した「ザ・シチズン」の「AQ4091-56A」の内装修理は38,000円~です。
ただしオーナーズクラブに登録していれば、定められた時期に無償点検を受けることができます。「ザ・シチズン」であれば10年間で2~3回の無償点検が受けられ、自然故障があった場合の修理費は無料です。
シチズン以外の時計修理店に依頼した場合の費用は10,000円~、納期は2~3週間であることが多いです。
ヨドバシとかでも電池交換できるの?
エコ・ドライブの電池交換は、一般的な電池交換ではなく「内装修理」が必要となります。
おそらくヨドバシカメラ等の修理窓口でも受付けてもらえるとは思いますが、預かったものをそのままメーカーに送るだけなので、自分でメーカーに直接依頼することと変わらないと思われます。
詳細は店舗にご確認ください。
まとめ シチズンのエコドライブに寿命はあるか
記事の内容をまとめます。
- エコ・ドライブとは、シチズンが開発した光発電の技術
- シチズンは1976年に世界初のアナログ式光発電時計を発表し、1995年以降はエコ・ドライブという名称に統一した
- 二次電池は充電と放電を繰り返すことにより劣化するので、エコ・ドライブも例外ではなく、永遠に使えるということはない
- エコ・ドライブの二次電池の寿命は不明だが、10年以内には他の箇所がダメになることが多く、合わせて電池交換も実施される
- エコ・ドライブを搭載した時計は5年に1度のオーバーホール(内装修理)が推奨される
- オーナーズクラブ対象ブランドの「ザ・シチズン」「エコ・ドライブ ワン」「カンパノラ」は、保証期間内に、無償点検を受けることができる
- エコ・ドライブのオーバーホールの費用は、17,000円が基本。オーナーズクラブ対象ブランドは高くなる