サファイアと言えば青色の宝石というイメージを持つ方も多いと思いますが、実際には、ピンクやイエロー、グリーンなど、様々な色を持ちます。また色によって価格が大きく異なるだけでなく、同じ色でも価格に違いが出てきます。この記事では、サファイアの値段が何によって決まるのかについて、詳しく解説しています。
ポイント
- サファイアとは
- サファイアの値段
- 天然サファイアと人工サファイア
- サファイアと色の関係
なぜ高いサファイアと安いサファイアがあるのか
サファイアの定義と、値段を決める要素、天然サファイアと人工サファイアの違い、加熱サファイアと非加熱サファイアの違いについて解説します。
サファイアとは
サファイアの定義はややこしく、かつ曖昧なので、順を追って説明します。
「酸化アルミニウム(Al2O3)」の結晶からなる鉱物のことを「コランダム(Corundum)」と言います。日本語で鋼玉こうぎょくとも言います。
純粋な酸化アルミニウムは無色透明ですが、不純物により色がつくことがあり、呈色コランダムと言われます。
呈色コランダムのうち、赤色のものを「ルビー(Ruby)」、赤以外の色のものを「サファイア(Sapphire)」と言います。
一般的にサファイアは青色というイメージが強いですが、黄色やピンクなどのものもサファイアに含まれます。
サファイアの価格を決める要素
サファイアの価格に影響を与える主な要素について解説します。
色
サファイアの価格に最も影響を与えるのが色です。
色の違いもありますが、より鮮明で、色が濃く、透明度が高く、均一であるものが高価になります。
透明度
透明度が高いとは、内包物が少ないということを意味します。
天然サファイアには何かしらの内包物があることが一般的なので、ほぼ無傷なものはとても希少となります。
カット
サファイアの美しさと輝きを最大限に引き出すのがカットです。
カットの質や形状によって価格が変わってきます。
カラット
カラットとは宝石の重さの単位ですが、一般的には大きさとして捉えられています。
単純に大きい方が価格が高くなりますが、それが希少な色だったり、透明度が高かったりする場合は、さらに跳ね上がります。
産地
サファイアの産地も価格に影響を与えます。
特に、カシミール、ミャンマー、スリランカのサファイアは高価となります。
処理
多くのサファイアは、色や透明度を改善するために加熱処理がされています。
非加熱のサファイアはとても希少なため、価値が高くなります。
さらに最近は、拡散処理やベリリウム拡散処理などの新技術が開発され、宝石の見た目を劇的に変化させることができるようになったため、価格の混乱を引き起こしています。
それらが逆に、天然の価値を高めているという面もあります。
天然サファイアと人工サファイア
天然サファイアは、地球の内部で何百万年もかけて形成された鉱石を採掘し、カットして研磨したものです。
人工サファイアは、天然サファイアと同じ化学組成の物質を、施設内で人工的に製造したものです。フレームフュージョン法、キュリー法、ハイドロサマール法など、様々な製法があります。
人工サファイアの方が安価で、品質が安定しているため、主に工業用途に使用されます。
天然サファイアと人工サファイアを判別することは困難ですが、一つの指標として、人工サファイアの方が内包物が少なく、透明度が高いという点が挙げられます。
一般的に宝石類は、内包物が少ない方が高価値となりますが、内包物があることが天然の証明となるため、価値が逆転しています。
この辺りは個人の価値観にもよるので、あえて人工サファイアをジュエリーとして選ぶ人もいます。
加熱サファイアと非加熱サファイア
不純物が含まれていることが天然サファイアの証ということでしたが、一般的に市場に宝石として出回るサファイアは、数百~2,000℃以上に加熱することで、内部の不純物を減少させる処理がなされています。
一方で、非加熱サファイアは、自然な美しさと希少性から、とても高い価値を持ちます。
非加熱であれば何でもいいということではなく、非加熱なのに美しい、という点が重要です。
市場に宝石として出回るサファイアのほとんどは加熱処理がされており、非加熱サファイアは2~3%ほどとされています。
単純に見た目の美しさを求めるのであれば、加熱処理をしたり、最初から人工サファイアにしたりすればいいのですが、天然であることにロマンを感じるのが、人間の微妙な心理となっています。
なぜサファイアは色によって高い安いがあるのか
サファイアの値段を決める一番の要素である色について、どのような色があるか、色に込められた意味、色による価格の違い、色によって価格が異なる理由について解説します。
色の違い
サファイアの色の違いは、不純物をどの程度の割合含むかによって変わってきます。
代表的なカラーをご紹介します。
ブルーサファイア
酸化アルミニウムの結晶内に、「鉄(Fe)」と「チタン(Ti)」が微量に含まれると、美しい青色となります。
青色の濃度は、鉄やチタンがどの程度含まれるかによって変わってきまが、鉄1%、チタン0.1%程度のものが特に美しいとされています。
ピンクサファイア
酸化アルミニウムの結晶内に、「クロム(Cr)」が含まれると、赤色となります。
クロムが1%程度含まれると、鮮やかな赤色となり、「ルビー」と呼ばれます。
クロムが0.1%程度だと、淡いピンク色となり、「ピンクサファイア」と呼ばれます。
ルビーとピンクサファイアの違いに明確なラインはなく、感覚的なものです。
イエローサファイア
酸化アルミニウムの結晶内に、「鉄」が含まれると、黄色や金色となります。
「ゴールドサファイア」と呼ばれることもあります。
パパラチアサファイア
「パパラチア(Padparadscha)」とは、サンスクリット語で「蓮の花」という意味で、オレンジとピンクの中間色です。
「クロム」「鉄」「チタン」の割合によって色が決まりますが、自然環境下で美しい「パパラチア」となることは希少なため、一般的に高価となります。
パープルサファイア
「鉄」と「クロム」の割合によっては、紫色となることがあります。
グリーンサファイア
「鉄」と「チタン」の割合によっては、緑色となることがあります。
ブラックサファイア
さらに「鉄」と「チタン」の割合によっては、黒色となることもあります。
光の大部分を吸収してしまうため、ほぼ不透明となります。
他の色に比べると価格は低くなりますが、その独特の輝きから、ジュエリーとしても人気があります。
ホワイトサファイア
不純物を含まない、純粋な酸化アルミニウムの結晶です。
無色透明のため、ダイヤモンドの代替品として使用されることもあります。
純粋であるのに高価ということはなく、宝石としての価値は低めです。
カラーチェンジサファイア
光源によって色が変わって見えるサファイアです。
元素の組み合わせにより、光の吸収のされ方が変わります。
色に込められた意味
古くから、特定の色の宝石には、特別な意味があるとされ、装飾品だけでなく、呪術やお守りとして使用されてきました。
ブルーサファイア
意味:忠実、誠実、天の恩寵
ブルーサファイアは、忠誠心や誠実さを象徴し、古くから王族や司祭から愛されてきました。
青色は天の象徴であり、心の平和や精神の成長を促す力があるとされています。
ピンクサファイア
意味:優しさ、調和、愛情
ピンクサファイアは、愛と優しさの象徴です。
穏やかなピンク色は、人間関係に調和をもたらすとされています。
パパラチアサファイア
意味:創造性、成長、調和
蓮の花のようなユニークな色は、内面のバランスや創造性を高めるとされています。
また、人生における新たな始まりや成長を象徴することもあります。
イエローサファイア
意味:知恵、繁栄、喜び
黄色は太陽の色で、明るさ、希望、活力の象徴です。
知恵や繁栄を象徴する石として、成功を願う人々に好まれています。
パープルサファイア
意味:覚醒、変革、守護
パープルサファイアは、精神的な覚醒や変革を促す力があるとされています。
また、守護の力もあるとされ、内面の平和を求める人々にとって特別な意味を持ちます。
グリーンサファイア
意味:自然、再生、調和
グリーンサファイアは、成長と再生の象徴であり、新しいアイデアやプロジェクトにポジティブなエネルギーを呼び込むとされています。
また、物質的な豊かさだけでなく、精神的、感情的な安定感をもたらすとされています。
ホワイトサファイア
意味:純潔、誠実、明晰さ
ホワイトサファイアは、純潔さと誠実さの象徴であり、その爪いで清潔な輝きは、持ち主に真実をもたらすとされています。
新しい始まりや、可能性の象徴とされることもあります。
しばしばダイヤモンドの代替品として選ばれることから、永遠の愛の象徴とされることもあります。
ブラックサファイア
意味:強さ、深淵、守護
ブラックサファイアは、深淵な知識と強さを象徴し、悪から身を守り、正しい判断力をもたらすとされています。
困難を乗り越える力を求める人にって、特別な意味を持つ石となります。
色の違いによるランク
サファイアの価格は、色だけでなく、透明度、カット、カラット、産地などの要因に大きく左右されます。また産地特有の色というのもあります。
それらを考慮すると、だいたい以下のような順となっています。
カシミール産ブルーサファイア
「カシミール」とは、インド北部とパキスタン北東部の国境に広がる山岳地帯のことです。インド・パキスタン・中国が、それぞれ領域を主張しています。
深く鮮やかな青色と、絹のような光沢が、サファイアの最高峰として評価されています。
ミャンマー産ブルーサファイア
濃厚で鮮やかな青色が特徴で、カシミールに次ぐ価値があるとされています。
スリランカ産ブルーサファイア
明るい青から濃い青まで、幅広い色合いがあります。
色が薄くても、高い透明度があれば高価となります。
パパラチアサファイア
独特な色合いのパパラチアは、希少性が高く、高価となります。
ピンクサファイア
ルビーとピンクサファイアの違いは、色の濃さでしかありませんが、赤色になるのは希少なため、ルビーの方が高価となります。
ピンクサファイアの中でも、発色が鮮やかな方が高価となります。
イエローサファイア
黄色は成功をもたらす色として人気がありますが、青やピンクに比べると価格は低めです。
パープルサファイア
パープルも宝石として人気が高いですが、青やピンクに比べると価格は低めです。
グリーンサファイア
グリーンサファイアは、青が上手く発色していないとみなされ、価格は低めです。
ホワイトサファイア
ダイヤモンドの代替品として使われることもありますが、カラーサファイアに比べて価格は低めです。
ブラックサファイア
ブラックサファイアは最も手頃な価格となりますが、独特な色合いから、一定の需要があります。
色の違いによる価格差
サファイアの価格は、様々な要素によって決まるため、単純な比較は難しいですが、カシミール産ブルーサファイアを100とした場合の、だいたいの傾向をまとめると、以下のような表となります。
種類 | 価格 |
---|---|
カシミール産ブルーサファイア | 100 |
ミャンマー産ブルーサファイア | 80~90 |
スリランカ産ブルーサファイア | 50~75 |
パパラチアサファイア | 70~90 |
ピンクサファイア | 40~70 |
イエローサファイア | 30~60 |
パープルサファイア | 20~50 |
グリーンサファイア | 20~40 |
ホワイトサファイア | 10~30 |
ブラックサファイア | 5~20 |
色以外にも、非加熱サファイアや、特定の産地のサファイアが高く評価されることがあります。
また、パパラチアサファイアやピンクサファイアの中の特に美しいものが、ブルーサファイアを上回ることもあります。
あくまでも参考程度としてください。
サファイアの価格が色によって異なる理由
このようにサファイアは、色によって値段が変わってきますが、その理由を説明しようとすると、かなり困難なものとなります。
例えば、カシミール産のサファイアが最高峰とされるのは、その美しさもありますが、直接的な理由は希少性によるものです。
カシミールでは、1881年から1887年のわずかな期間でしか採掘されていないとされ、流通量がとても少ないのです。国境が曖昧な地域であるという点も採掘の難易度を高めています。今後、採掘が再開されるという話もあり、そうなると価格も変わってくる可能性があります。
ですから、色の違いによって価格に違いがあるというよりは、産地によって価格に違いがあるという方が正確で、その産地特有の色があるということなのです。
また、色が濃い方が価格が高く(黒を除く)、色が淡いほど価格が安くなるというのも、基本的には希少性によるものです。
伝統的に、サファイアと言えばブルー、という固定観念も価格に影響を与えている可能性があります。
以上のように、希少性と市場需要の動向により、総合的に価格が決められています。
まとめ 極端に安いサファイアがあるのはなぜか
記事の内容をまとめます。
- サファイアとは、酸化アルミニウムの結晶であるコランダムのうち、赤色以外のもの
- 赤色のコランダムをルビーという
- 一般的にサファイアはブルーのイメージが強いが、赤色以外のコランダムをまとめてサファイアという
- サファイアの価格は、色、透明度、カット、カラット、産地、処理の有無によって決まる
- サファイアの色は、値段が高い方から、ブルー、パパラチア、ピンク、イエロー、パープル、グリーン、ホワイト、ブラックの順となる
- サファイアの産地は、値段が高い方から、カシミール、ミャンマー、スリランカ、その他の順となる
- サファイアの値段は基本的に希少性によるもので、希少な産地特有の色のサファイアが高くなっている
- 天然サファイアと人工サファイア、熱処理・拡散処理をしたサファイアと未処理のサファイアとの区別は曖昧となってきており、価格の混乱もみられる