最近何かと話題のZ世代は、「わがまま」と言われがちです。この記事では、そもそもZ世代とは何か、特徴、価値観から、なぜわがままと言われるのかを分析します。
ポイント
- Z世代の定義
- Z世代の特徴
- 不安定な社会と承認欲求
- わがままなZ世代と付き合う方法
わがままと言われる「Z世代」って何?
Z世代の概要と由来について、詳しく解説します。
Z世代とは
「Z世代」とは、正確な定義があるわけではありませんが、おおよそ1995年~2010年生まれの人を指します。
2023年現在、13歳~28歳までが相当します。つまりちょうど、中学生・高校生・大学生・新社会人あたりが該当します。それで、SNS、アルバイト・パートタイム、就職などで、他の世代と絡む機会が増え、いろいろ言われているわけです。
また日本は少子化が進んでいますが、世界的にはZ世代が人口の25%を占め、今後の消費の主役となっています。
そのため多くの企業がZ世代の関心をひこうと躍起になっているわけです。高齢者向けビジネスが盛んな日本とは対照的です。
Z世代の由来
日本でも「ゆとり世代」「さとり世代」など、「○○世代」という表現はありますが、「Z世代」はアメリカを中心とした話です。
この「○○世代」がどこから始まっているかというと、第二次世界大戦と言ってよいでしょう。
ベビーブーマー世代
1945年に第二次世界大戦が終わると、世界中でベビーブームが起きました。日本で言えば「団塊の世代」です。アメリカでは「ベビーブーマー」と呼ばれ、1946年~1964年生まれが該当します。
これらの世代の特徴は「反戦」「反体制」です。
「仕事中心」「女性解放運動」「環境問題」などの共通意識があります。
X世代
そして「ベビーブーマーの次の世代」のことを「X世代」と言います。おおよそ1965年~1979年生まれを指します。時期は若干ズレますが、意味としては日本の「団塊ジュニア世代」と同じです。
「X世代」という言葉は以前からありましたが、世界的に広まったのは、カナダの作家・ダグラス・クープランドの著書『ジェネレーションX:加速された文化のための物語たち(Generation X: Tales for an Accelerated Culture)』によるものとされています。
「X世代」の「X」は「謎」という意味です。「ベビーブーマー世代と比べて何考えているのかよく分からん世代」ということです。
X世代の特徴は「現実主義」です。
理想主義のベビーブーマーを冷めた目で見ており、社会問題よりも自分のことを大切にし、仕事と家庭のバランスを保つことを重視します。また、アナログとデジタルの変革期を経験しています。
Y世代
X世代の次の世代のことを「Y世代」または「ミレニアル世代」と言います。おおよそ1980年~1996年生まれを指します。
「X」の次だから「Y」だろうということで「Y世代」となりました。
「ミレニアル」は「千年」という意味で、ちょうど2000年くらいに成人となり、新しい時代を生きる世代という意味で「ミレニアル世代」と言われます。
Y世代の特徴は「IT」です。
また個人主義に走ったX世代に対し、多様性・社会的責任・企業倫理などを重視する傾向があります。好景気の時期もありましたが、ITバブルの崩壊、世界金融危機などを経て、前の世代と比べて、経済的には厳しい状況になっています。
Z世代
Y世代の次の世代が「Z世代」です。だいたい1995年~2010年生まれを指します。
Z世代の特徴は「SNS」です。
不況やコロナ禍、ウクライナ情勢を経験しており、企業や国家に対する期待感が低く、組織に執着する意識がありません。またテレビや新聞といったマスメディアから離れ、自らの価値観を重視します。同時に、相手の価値観も許容する多様性に強い関心があります。Z世代にとって、情報は受け取るものである以上に、発信するものです。
TikTokの「09」とは?
TikTokなどのハッシュタグで「08」「09」といった数字が使われることがあります。これは基本的には生まれた年を意味していますが、なぜそれを書くのかという文化的な意味や、他の使われ方をすることはない ...
α世代
Z世代の次の世代、2010年以降に生まれた世代を「α世代」と言います。まだ小学生以下なので、そこまで話題にはなっていません。
人口ピラミッド的に、もうこのような分類はできないのではないかという意見は強くあります。特に少子化が進む日本の人口ピラミッドは、世界平均と大きくズレています。文化の中心がアメリカから移動してきているということもあります。
Z世代が「わがまま」と言われる理由
Z世代の特徴と、承認欲求、コミュニティとの関わり方、わがままと言われる理由について解説します。
Z世代の特徴
Z世代の特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
承認欲求が強い
Z世代が他の世代と一番違うと言われるのは、承認欲求の強さです。あまりの強さに「承認欲求モンスター」とさえ言われます。
お金や地位、権力といったものよりも、自分の価値をみんなに認めてもらうということが、一番重要なこととなります。
共感を重視する
承認欲求が強い一方で、他人のことも認めます。
お互いがお互いを認めることで共感が生まれます。
共感のサイクルが生まれる環境に身を置くということが重要となります。
多様性・自分らしさを重視する
自分を認めてもらうこと、他人を認めることは、多様性を認めるということです。
LGBT問題にも強い関心があります。
情報発信を重視する
人に認めてもらうためには、自分を知ってもらわなければなりません。そのために、情報発信をします。
情報は認めてもらうために発信しているので、認めてくれる人だけが受けとってくれればいいと考えます。
他人を批判することはありませんが、自分への批判も受け付けません。批判するくらいなら、情報を受け取らなければいいのにと思います。
マスメディアが流す情報に従うのではなく、個人がそれぞれ情報を発信し、自分の好きな情報だけ「フォロー」するという考えです。
時間を重視する
Z世代にとって一番価値があるものは「時間」です。「お金」や「モノ」にはあまり執着がありません。
限られた時間を、どれだけ有意義に使うか、「タイムパフォーマンス」「タイパ」を重視します。
自己評価が高い
簡単に言えば自信があるということですが、他の世代に比べて、現実以上に自分を高く評価する傾向にあります。
軽い万能感を持っています。
効率を重視する
自己評価が高いだけで実力が伴っていないのかというと、そうでもなく、基本的な能力は高いです。特にデジタル技術の扱いには相当長けています。
また、合理的でないことを嫌い、時間を重視しますので、効率の良い仕事をします。
結果、仕事のパフォーマンスはとても良いです。
言われたこと以上のことをしない
指示された範囲の中では最高の効率を出しますが、それ以上のことはしない、という特徴があります。
むしろ指示された以上のことを、勝手にやるのは間違っていると考えます。
争いを避ける
誰かと対立することを嫌います。
対立するならば、反発はせずに、その場を去る選択をします。
怒られることを嫌う
争いを避けると同じですが、特に、感情的に怒る人を嫌います。
反論はせずに黙って聞き流すか、その場を避るか、法的な手段に訴えます。
Z世代は誰から承認されたいのか
Z世代は承認欲求が強いことが特徴ですが、誰から承認されたいのか、ということを考える必要があります。
ペットの猫から承認されたい、という話もなくはないでしょうが、基本的には、他の人間からの承認される、つまりコミュニティからの承認ということになります。
人間は誰しも複数のコミュニティに所属しています。「家族」「学校」「仕事」「地域」「趣味」などたくさんのコミュニティがあります。
ここでZ世代にとって重要となるのが、インターネット上のコミュニティ、SNSです。具体的には「TikTok」「X(Twitter)」「Instagram」「LINEグループ」などです。
これらのSNSコミュニティ内で承認を得ることが、とても重要となるのです。
つまり、仕事で上司から褒められことよりも、インスタで「いいね」を貰うことの方が重要ということです。極端な話、仕事はいいねを貰うための手段です。
伝統的なコミュニティに対しての不信感
なぜZ世代は、「家庭」や「会社」といった伝統的なコミュニティよりも、SNSの方を重視するのでしょうか。これは、伝統的なコミュニティに対して不信感を持っており、期待値が低い、ということがあげられます。
日本の人口は減少しており、実質賃金もずっと下がっています。この先、明るい未来はあまり見えていません。リーマンショックやコロナ禍で振り回され、学校や企業、国に期待しても無駄という感覚があります。
そういった伝統的なコミュニティよりも、SNSの方にリアリティがあります。実世界より、ネット世界の方がリアルなのです。
ネットコミュニティの不安定さ
SNSの方にリアルがあるということは、戦いの場もそこにあります。会社で出世争いをするより、フォロー数やいいね数を競います。
ネット世界では、コミュニティの反応速度が、実世界の何倍どころではなく、何億倍レベルで作用することがあります。何でもないただの人が、突如世界的なスターになる一方、ほんの少しのことで大炎上し、人生を破壊されます。
Z世代にとってSNSは、そんなにお気楽なものでもなく、地雷が大量に埋まった金鉱脈のようなものです。大成功も大失敗も隣り合わせです。何がヒットして、何が炎上するか分かりません。それも何億倍レベルのハイリスク・ハイリターンです。
だからみんな感情的になることを避け、慎重に行動するのです。すぐ感情的になる人、不用意な発言をす人と一緒にいては、自分も爆発してしまいます。危険でしかありません。争うのではなく、ただ離れるのが吉です。
そんなにSNSが危険ならば、使わなければ言いというかもしれませんが、そういう訳にはいきません。なぜならリアルはそこにあるからです。
SNS内での地位の安定が、生活の安定です。SNSを使わないということは、家出する、学校に行かない、無職になる、国を捨てて難民になることと同じです。
だからLINEグループを外されたことが、とんでもない事件にまで発展するのです。インスタでいいねを稼ぐのは、生きるためです。その必死さが行き過ぎた結果が「承認欲求モンスター」です。
SNSはコミュニティ限界を壊す?
Z世代にとってSNSは重要なコミュニティですが、ここに生物学的な大きな問題点があります。
人間にとってのコミュニティの最大人数は50人程度という説があります。これは、狩猟や農業の生産量によって、自然に決められたものとされています。
人間は50人以上のつながりを管理できる能力を持っていません。
アイドルグループの最大人数は50人ですし、学校のクラスでも50人を超えるならば分割されるでしょう。会社の部署もそうです。
ところがSNSでは、100万人、1,000万人というグループができてしまいます。
これは人間の処理能力をはるかに超えており、結果的に本能を暴走させ、「モンスター」を誕生させてしまうとされています。
Z世代のわがままは不安の裏返し
Z世代がわがままと言われるのは、不安感の裏返しと言えます。
前の世代までは、組織・コミュニティに貢献することが、生活や身分の安定につながっていました。しかしその現実はどんどん崩れていっています。「会社」や「国」に貢献してもいいことはない、「自分」がなんとかしなければいけない、という感覚が強くあります。
組織の利益のために、自分を犠牲にするということはありません。それが、前の世代からすると「わがまま」に見えるのです。
Z世代に上手く活躍してもらうためには、「組織に貢献することが、あなたの利益につながる」と説くことは、逆効果になりがちです。なぜなら、そうやって前の世代は騙されてきたと思っているからです。
ただ「こうすることが、あなたの利益につながる」と言いましょう。個人の利益の話だけです。結果的に組織の利益になるかどうかは、伝える必要がありません。それはそれ、と察してくれるでしょう。
また、時間の価値を何よりも重視しますので、割り当てられた時間を尊重する必要があります。
まとめ Z世代がわかままと言われる理由
記事の内容をまとめます。
- Z世代とは、1995年~2010年生まれのこと
- Z世代の特徴は、SNSの利用、承認欲求の強さ、時間を重視すること
- Z世代の承認欲求が強いのは、不安定な時代であり、多様性が重視される一方で価値観を見失いやすく、自身の安全と正当性を確認する必要があるため
- Z世代は、家族・学校・会社・国といった伝統的な組織から裏切られたと感じており、信頼していない
- Z世代は、伝統的な組織よりも、インターネット上の組織への帰属感が強い
- Z世代は、伝統的な組織への帰属感が低いため、その中においては、わがままと受け取られることが多い
- Z世代に対しては、組織への忠誠は求めず、時間と役割の範囲を定めるとよい